2009年の政治・経済に関する思索/批評のページ


 2009年の政治・経済に関連する記事を掲載しています。

プロトコルの違い
【行政】
 久しぶりに役場に行った。退職したので国民年金に加入するため。あと、国民健康保険とこれまでの健康保険の任意継続とどちらがお得かを確認するため。

 彼らは「お客さま」という用語を使うようになったけれど、それは形だけ。決して、お客さまを納得させようなどということは、さらさら考えていない。
 通常のサービス業であれば、なぜお客さまが納得しないのかを突き詰め、その問題点を把握して、それを解きほぐすためのロジックを提示することだろう。しかし、彼らは元々、自分たちのやり方を(間違っていたとしても)押し通すのを当たり前に生きてきたし、仮にお客さまが納得しなかったとしても、彼ら自身にとっての不利益はないので、納得してもらうために努力する、という考え方が存在するのを理解できないのだと思う。
 やっぱり公務員は(まずい方向に)一味違うのだなあ、と思いました。
事業仕分けに思うこと 2/2
【政治】
 さて、「世界一を目指す必要があるのか?」という村田蓮舫参議院議員の質問に対して、文部科学官僚はどう答弁するのが正解だったのだろうか。
 正解は分からないが、ボクが事前に想定問答を考えていたら、どう答えただろう。

 第1点には、スパコンが何に使われるか、代替技術としてどんなものが考えられ、どういう理由でそれよりもスパコンが優れているか、あたりの話だろうか。この辺はよく知らないけれど、専門家なら当然答えられることだろうし、鳩山内閣で話題の環境問題に絡めて、地球シミュレーターの話にもっていっても良いだろう。
 第2点には、技術は1位総取りの世界であり、トップを走り続けることが重要だということだろう。ハードではインテルやサムソン、ソフトではマイクロソフトなどの例を挙げれば分かりやすいのではないか。一度トップを取っただけではダメで、継続することが必要なのである。
 第3点には、自然資源のない国としては、世界トップクラスの人材を輩出し、その人たちに日本のために働いてもらえる環境を作ることが重要であり、この計画はその場を提供するものだ、ということだろう。プロリーグを作ると競技人口が増えてスポーツのレベルが上がるように、科学者だって生きるにはお金がいるわけで、科学でメシが食っていけると分かれば、優秀な人材も集めやすく、人材の裾野が広がって、全体の科学レベルも上がり、様々な分野での開発力も上昇するだろう。

 ボクが適当に考えただけでも色々と理屈のつけようはあるわけで、頭の良い高級官僚ならばもっと説得力のある理屈をつけることができるはずなのだ。しかし、それが出来ないのが官僚機構というものなのかもしれない。
 先に述べた第1点でいうと、環境問題に絡めれば環境省の所管になるのだろうし、第2点で企業経営と絡めると経済産業省の所管になるのだろう。第3点はまさに文部科学省の所管なのだが、これは旧科学技術庁と旧文部省、それぞれが絡み合ったものだ。
 全ての事象は省庁毎に識別できるわけではないのに、省庁別でしか対応しなければ、当然取りこぼしが発生するだろう。この取りこぼしを拾えるのは各省庁には存在しないので、政府が拾っていかなければならないのだと思う。
事業仕分けに思うこと 1/2
【政治】
 行政刷新会議の事業仕分けが世の注目を集めている。特に村田蓮舫参議院議員の発言は、ワイドショーの注目の的にもなっている。これほど注目され始めたきっかけは、文部科学省所管の次世代スーパーコンピューターの技術開発(概算要求額約270億円)の事業仕分けにおける、「世界一を目指す必要があるのか?」という質問だろう。

 彼女の議論の仕方は、話術的な側面に偏っていて本質的な議論になじまない気がするため、あまり好きではない。それに、費用対効果など予算の必要性に議論を絞っている割には事業の意義を問う質問であるため、自分たちが官公庁側に課した枠組みから逸脱していてアンフェアである気もする。しかし、これは予算請求側の重要な課題を浮き彫りにした質問でもあった。それは、特に課長・局長級の官僚は、(1)いかに自分たちの仕事の意義を問わずにこなしているか、ということと、(2)誰かに自分たちの必要性を説明することの必要性を感じていないか、ということである。

 数学や物理の教師は、「なぜ数学や物理を勉強する必要があるの?」「大人になったら数学も物理も使わないじゃん!」「勉強しなくたってヘキサゴン(注:テレビのクイズ番組)に出てお金儲けができる」などの様な、生徒からの質問に直面することを一度は考えたことがあるのではなかろうか。(実際のところは知らない)ボク自身のことで言えば、教育実習に行く前などはこの手の質問にどう答えるべきかを考えた。
 この手の質問に正解などはないので、各自が脳に汗をかいて考えれば良いだけのことなのだが、先ほどの事業仕分けの答弁側は、この手のことを考えたことはないのだろう。そもそも、「次世代スーパーコンピューターで一番を目指す理由は?」なんていう質問は、予算請求の際に一番最初に挙がる質問なのではないだろうか?(いや、あまりに当然過ぎて共通認識が形成されており、逆に質問に挙がらないかも知れない。)それなのに、答えられないのは、何も考えていないから、と断じられても仕方がない。

 この理由を考えるに、彼らは各事業ごとに予算の必要性を説明しなければならない局面に立たされたことがないのだろう。これまでも、財務省の主計官に対して説明をすることはあったのだろうが、シーリングの枠内に収まりさえすれば、個別の予算額はどうでも良かったのではないかと推察する。
 大体、最初の説明時間は8分と区切られているのに、平気で10分をオーバーする説明をしてくる。それも分かりにくい稚拙な説明をする人が多い。時間枠に収まる範囲で、何を説明すればよいのか、その要領が分からないのだろう。
 ビジネスマンなら当たり前に習得する技術なのに。彼らの様な説明を取締役会で行ったら、きっと昇進の目はなくなることだろう。

 悪いことばかり書いたが、若手官僚の中には気合の入った説明をしている人もいた。しかし、彼らが前面に出てくることはほとんどない。本当に内容を理解している人が説明できない構造にも、改善の余地はあろう。
新政権について考える
【政治】
 アメリカでは新政権発足後100日間は批判を控えるという、ハネムーン期間なるものがあるらしい。それに習って民主党政権についてもあまり論評しない様にしてきたのだが、もういいだろう。懐かしき用語だが、成田離婚の危機である。

 今回の政権交代で最も強く感じたのは、二院制の恐ろしさである。民主党は第45回衆議院総選挙で308議席の圧倒的多数を獲得した。しかし、参議院での議席数が過半数に満たないため、社民党および国民新党と連立を組み、政権運営にあたることになった。
 この結果起きたのが、国民新党の政権内における台頭である。民主党所属大臣が思うように動けていない一方で、国民新党の亀井静香氏は政策合意を盾にやりたい放題。総選挙で党代表が落選し、明らかに国民の信を得なかったと思われる政党の現代表が、である。

 民主党議員が政権の回し方を心得ていないため、掣肘することができないという問題があるのかもしれないが、やはり最大の問題は、参議院の存在である様な気がしてならない。長期的視野にたって政治を考えるという建前は良いが、変革期には意思決定のスピードを落とすだけの存在にしかなっていないように思える。
 とはいえ、即、参議院廃止の流れに傾くことはあり得ないので、現実的な対処法を検討せねばなるまい。つまり、来年の参議院選挙で、どのような選挙結果を目指すのか、である。
 ひとつの方法としては、民主党が単独過半数を取るのを目指す、というやり方もあるかも知れないが、現状を見るとそれは危険な香りがいっぱいなので除外する。むしろ、今の教訓を生かし、まともに見える少数政党を政権内に入れる方向で検討したい。つまり、みんなの党である。(ちなみに今回の総選挙でボクが投票したのはココ。)

 次回の改選数は民主系54議席、自民系48議席、公明党11議席、共産党4議席、社民系3議席、その他1議席。非改選数は民主系66議席、自民系37議席、公明党10議席、共産党3議席、社民系2議席、その他3議席。
 みんなの党がキャスティングボードを握るには、現政権を過半数割れさせることが前提。与党の非改選数は68議席で、改選数は57議席だから、これを達成するには、野党を現状維持にして、みんなの党が5議席獲得できれば良いわけだ。現政権が失点を重ねれば、なんかいけそうな気がする。

 というわけで、次の選挙ではこの目標の実現を目指します。
脳死は人の死かどうかは議論しても決まらんよ
【政治】
 臓器移植関連法案が衆議院で可決されました。これから参議院に送付されるので確定はしていないけれど、ドナーの年齢制限を撤廃し、事前に本人が拒否していない限りは、家族の同意のみで臓器の提供が可能になるという、これまでの法律と比べればかなり制限をゆるくした法案。
 ボクはこれは、臓器移植という助かる方法があるにもかかわらず、それを受けることが出来ずに座して死んでいかなければならない人たち、特に15歳未満の子供たちに希望を与える改正だと思うのだけれど、やはり反対運動が巻き起こってきたようです。

 家族がいない人が狙われるとか、人工呼吸器をつけている患者が延命されないとか、色々な理屈をつけて反対しているみたい。でも、事前に本人が拒否登録をしておけばドナーになることは無いルールなのだから、そういう危険を感じる人は拒否登録すれば良いだけの話。拒否登録しない人を前提に議論を進めるのはおかしいと思う。なぜなら日本は法治国家だから。
 法治国家では法律を知らないことは罪。もし、殺人が禁止されていることを知らない人があなたの身内を殺したとして、彼は殺人が罪だということを知らないから無罪にします、と裁判官が言ったら納得できますか?ボクは無理です。そして実際、彼は罪に問われます。それが法治国家のルールなのですから。
 というわけで、この法案に興味を持たない人を主にして議論を進めるのはおかしい。そして、本来なら真っ先に議論の中心にあるべき、レシピエント側が議論に参加しないのもおかしい。いま議論の中心にいるのは、長期療養患者の一部の家族とそれに寄生する議員達ですよね。ドナーを待望している人たちの意見が議題に上がることは表面上はない。
 これは、ドナーを待ち望んでいる人たちが、人の命を犠牲にして生き延びる輩だ、という考え方がまだ消えていないからだろう。でも、そこに生き残るすべがあるのに、それを使うななんて言える?ボクには言えません。だから、ドナーを待ち望んでいる人たちは、もっと大声をあげても良いのです。特に子供たち。だって彼らは、自分の不摂生とかの結果でそうなったわけではなく、生まれながらにしてそういう状況に置かれてしまったのだから。

 あと、脳死が人の死かどうか、何てことを議論のメインにしようとしている人たちがいますけれど、こんな概念を法律で決めることはできない。じゃあ、死ってどのタイミングで来ると思います?こん睡状態に陥って目覚めないとき?脳幹からの反射がなくなったとき?心臓が止まったとき?全細胞が機能停止したとき?体にウジがたかり始めたとき?そもそも、生きているってどんな状態?血液が全部他人のものと入れ替わっても同じ人?臓器は何パーセントまで入れ替えても同じ人といえる?あるいはこれを入れ替えたら別人というノックアウト条件がある?
 生きている人には絶対に正解が分からないことを、政治的問題にしても意味がないでしょう。ここで問題にすべきは、どっちの選択をするのが全体の幸福を高められるのか、ということ。もはやどれだけ金や人や資源を投入しても元気になれない人を犠牲にして未来の可能性を生み出せるというならば、それにかける判断をしても良いのでは?それが出来ないと言う人は、ドナーを待っている人たちに対して、お前はもう助からない病気なのだから黙って死ね、というべきだと思います。両方を助けようなんてきれいごとをいうやつは、ただ逃避をしているだけです。
女性の社会進出と都市集中の関係性
【経済】
 世界経済が一つにまとまったらどうなるのかとか、無痛分娩を推進すれば人口が増えるのかとか、つらつらと考えていたら一つ思いついたことがある。それは、女性の社会進出と、都市一極集中現象の相関関係(もしかしたら因果関係かもしれない)だ。
 日本では、1985年に男女雇用機会均等法が施行され、女性にも男性と同様の雇用のチャンスを与えるという方針が示された。これにより、女性電車運転手とか、女性校長先生とかが誕生するようになったのだと思う。
 しかし、よくよく考えてみると、これまで就業機会の少ない、もしくは就業人生の短い女性が男性と同様の機会を得ることができるのだとすると、単純に考えて労働人口が2倍になるに等しい効果をもたらすのではなかろうか。だが、1985年を境に、自動車が2倍売れるようになり雇用が2倍になった、ということが起きたとは考えにくい。では、労働供給量の増加は何により吸収されたのか?
 そもそも、それまで女性が労働をしてこなかったわけではない。給料こそもらっていなかったかもしれないが、家庭にあって、料理を作ったり、洗濯をしたり、掃除をしたり、いわゆる専業主婦という職業に従事していた。しかし、女性が働くようになれば、当然のことながら、こうした家事を行う時間は減少することになるが、生活をする上で家事を行う必要があることに変わりはなく、家事を代行してくれるシステムが必要になる。それが外食産業であり、クリーニング業であり、その他のサービス業である。
 このサービス業には、製造業などと違って一つの特徴がある。それは、いま流行の言葉で言うと、地産地消を基本とすることだ。半導体は山奥の水の綺麗な所で製造し出荷することができるが、デリバリーのピザをわざわざ山奥で作っていたら届く頃には冷め切ってしまう。よって、これらの業者は必然的に労働者がいる環境で商売をすることになるだろう。
 労働者の少ない場所ではこれらのコストが高くなる。高くなれば、女性が外で働いて給料をもらいサービスを購入するよりも、自分で家事をする方が機会損失を含めてもコストが安くなるため、ますますサービスは利用されなくなる。労働者の多い場所ではこれとは逆の現象が起き、サービスはより一層提供されるようになるだろう。こうなると、逆にサービスが多く提供される場所に労働者が集まるようになってくる。これが都市の一極集中だ。

 この前段階として、洗濯機の普及により家事負担が減り、女性の社会進出を助ける基盤が作られた、などの背景はあると思うが、これがボクの試論である。この教訓は何かというと、本来は社会規範に支えられてきた家事が市場規範、すなわちお金によって換算可能な存在となったということだろう。これは5分で思いついた論なのでまだまだ甘い所はたくさんあると思うけれど、深彫りすると色々と説をでっち上げられそうな気がする。
熟語の用例
【政治】
 鳩山邦夫総務大臣が、日本郵政社長の再任問題に絡み、辞職も辞さず、と言っているらしい。最大任期3ヶ月の泥舟内閣の国務大臣職と、一般庶民へのパフォーマンス&総選挙後の地位を秤にかければ、どう転んでも全く自分は損をしないやり口だね。
 結局、地元の利益を図りたいだけの旧来型の政治家に過ぎないのに、正義とか、政治家が口にしてはならない単語を連発するのはどうも好きになれない。SMAP草なぎ発言でも、復帰後はファンを敵にすることを嫌っておとなしいもんだし。
 ぜひ、厚顔無恥とか、二枚舌とかの用例として辞書に掲載して欲しいものだと思う。
思惑の外の効用
【政治】
 H1N1新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)に踊らされる数週間が続いている。厚生労働大臣としては、日本でようやく感染者が出て、ホッとしていることだろう。自分の対応が正しかったと言う根拠ができたのだから。しかし、皮肉なことに、世界保健機構は水際対策よりも感染後の治療対策にシフトすべきという見解に変わって来ている。毒性の低さを思えば当然のことだろう。なぜに今回、感染レベルがフェイズ5まで一気に上がったのかは謎のままだ。
 正直言って、何故に日本でこれほど検疫が強化され、人々がマスクをしたり対策に狂奔しているのかは全く理解できない。空港近くに足止めをくっている人達があまりにも哀れで仕方ない。彼らが感染しているウイルスは、国内に蔓延している季節性のインフルエンザウイルスよりも弱いものでしかないのは明らかになっているのだから。
 政治家が、選挙対策か知らないが、何を思ってここまで大げさに騒ぎ、既に毒性が低いことが明らかになった今でも対応を強化する方向にあるのかは分からないが、今回の騒動で予想外の成果があったことは確かだ。それは、風評被害を恐れる病院は、簡単に診療拒否をしてしまうということ。今回の騒動で明らかになった問題点を一つ一つ潰していけば、いずれ来るかも知れない鳥インフルエンザのパンデミック時にはスムーズに対応できるようなシステムが構築できるかもしれない。でも、きっとそんなことはしないんだろうなあ。
感度が良すぎ
【政治】
 昨今の豚インフルエンザ騒動には、根拠はないながらも、何か作為的なものを感じてしまう。現段階では、タミフルも効くし、普通のインフルエンザの流行と同等程度なのではないかと思うのだが、世間の反応はまるで違う。正直言って過敏に反応し過ぎて強い薬を使いまくり、その結果として耐性菌が登場する展開の方がはるかに怖い。
 あと、WHOの行動がやけに早いのも気になる。どこかから政治的圧力でも働いているのでは、と邪推したくなってしまう。鳥インフル対策で投資した金を回収しようとか、それに味をしめてもっと儲けようとか、そういうロビー活動の結果でなければ良いのだが。

 日本国内も、過日の北朝鮮ロケット騒動と同様に、敏感になりすぎ。厚生労働大臣は情報をダダ漏れの垂れ流しにすることが情報公開とか国民の立場に立った政治とか勘違いをしているのかも知れないが、対策も示さずただ不安をあおるだけならばパニックを誘発するだけだし、行政機関で情報を吟味し絞る機能がないならば、代議士制の意味がそもそもないし、情報を提供したのだから俺は知らんという責任放棄の姿勢にも見えてしまう。
 個人個人では対処しきれない危機に対処するために、政府というシステムができたのではないのかね?
紋切り型にしか考えられない思考停止状態
【政治】
 あんまりきちんと情報を収集していないのだが、麻生総理大臣が住宅消費を対象とした贈与税免除を検討しているようだ。テレビ朝日系のニュースステーションでは、金持ち優遇で格差解消に逆行するとか言う紋切り型の批判がされていたが、正気を疑う。消費されたお金はどこかに消えてしまうとでも思っているのだろうか。家を建てるのに金持ちが金を使えば、それは大工さんの収入になるし、大工さんのお昼ご飯を提供するサービサーの収入になるし、材料を売っている人の売上になる。消費の増大は、誰かの収入増につながるのだ。

 これは経済学の初歩で考えると明らかで、
総生産=消費+投資+政府購入+純輸出
という関係が成立するため、消費が増えれば、それが輸入で全てまかなわれるか、投資や政府支出が同じだけ減少しない限り、必ず総生産が増える。総生産は家計の収入に等しいので、消費が増えれば収入が増えるのだ。
 100万人が1円ずつ消費するより、金持ち一人が1,000万円消費した方が、貧乏人の収入は増える。なんでこんな単純なことが分からないのだろう。
覚え書き
【政治】
 2009年4月4日(土)、5日(日)は異常だった。もちろん原因は、北朝鮮のミサイル/ロケット打ち上げ問題。カメラは地方自治体の防災無線やPAC3などの防衛兵器に張り付いて、M-netで何かが流れれば緊急報道状態。幾つか気になった点があったので指摘しつつ検討してみたい。

(1) ミサイルなのか、ロケットなのか?
(2) なぜ北朝鮮は打ち上げを行ってはいけないのか?
(3) 誤探知報道はなぜ起こったのか?
(4) PAC3やSM3の防衛機密は守られているのか?

(1) ミサイルなのか、ロケットなのか?
 もっぱら報道は、北朝鮮が打ち上げを行うものはミサイルである、という見解で統一されていたように思う。これはおそらく政府見解を踏襲しているのだろう。しかし、打ち上げ直後の河村官房長官の会見では、ロケットと表現していた。

(2) なぜ北朝鮮は打ち上げを行ってはいけないのか?
 北朝鮮による打ち上げは国連安全保障理事会の決議1718号に反するというのが政府見解のようだ。同号では、強制力を規定した国連憲章第7章(平和に対する脅威)に基づき、(a)さらなる核実験や弾道ミサイル発射の停止を要求、(b)弾道ミサイルに関するあらゆる活動を停止しミサイル発射のモラトリアム(凍結)設定の決定を定めているらしい。
 要は、ミサイルでもロケットでも技術的には同じだから、どっちもダメよ、ということのようだ。

(3) 誤探知報道はなぜ起こったのか?
 原因は良く分からないが、複数のソースによるチェックを行っていれば容易に防げたミスの気がする。どんなに立派な装備を持っていても、解析能力がなければ意味が無いという好例。今回の件で日本の自衛隊は、海外の情報機関になめられた気がする。

(4) PAC3やSM3の防衛機密は守られているのか?
 リアルタイムでPAC3などの現状がテレビ報道されていたけれど、こういう情報は国防機密なのではないだろうか。独自に偵察をせずともテレビで情報を得られるなんて、何てサービス精神旺盛なのだろう、という気がする。
市場原理はどこまで効率的か
【経済】
 人界における謎は二種類に分けられる。それは、誰かが解いたことがある謎か、誰も解いたことのない謎か、だ。前者は謎に答えがあることが確かで解くための道筋も分かっているが、後者は謎を解くための道筋を探すところから始めなければならないし解があるかどうかも分からない。

 謎は課題と置き換えても良い。ビジネス上に存在する課題は、大概は前者である。いやいや、後者の問題も多い、と人は言うかも知れない。しかし、そう思える課題であっても、売り手と買い手の双方が理解できないものはビジネスになりえないので、ビジネス上の課題は必ず解法が存在する。あとに残るのは(コストなどの問題により)それが実行できるか否かだけだ。
 ビジネス上で最も利益を生み出すのは、既に効果が証明されている、課題の解法だ。(これは概念的なものだけでなく、例えばご飯を炊くには電気炊飯器が便利とか、夏に氷を食べるには冷凍庫が良いとか、物的な面にも応用される。)
 例えば、輸送コストが高いという事象があれば、輸送拠点が多すぎて搬入搬出の手間がかかるとか、福島で必要な物資を東京からではなく大阪から送っているとか、何がしかの問題があるわけである。こういった問題に対して、輸送拠点の最適配置がなされていない、という課題(=解くべき問題)を設定してやって、消費地ごとの需要なんかを分析して最適配置を見つけ出すわけである。
(実際は、問題の仮説を立て、それを検証するための実データを集めて立証してから課題設定をするというパターンになるかもしれない。)
 では、この課題設定を毎回初めからやらなければならないかというと、必ずしもそういうわけではない。世の中には輸送業者がいっぱいいるけれど、抱えている問題は大概同じなわけで、その課題と解法も大体似ているはずだ。このため、どこかに提供した解法の再利用ということが出来るわけである。そしてこれは輸送業者にとっても、他社で効果が実証されているので、受け入れやすい解なのである。
 こういった、ソリューションとか方法論とか呼ばれる、効果が証明済の解法は、それを持っている会社にとっては利益の源泉である。だから、それを無償で外部に開示することはない。でも、社会の利益を考えれば、そういうものは開放されていた方が良いはずである。
(サラリーマンにとっても、残業してがんばって作るものが減るからお得のはず。)
 しかし、経済の論理からすると、そこから利益を得られないのならば、ソリューションとか方法論とかを作るインセンティブが働かず、かえって社会の利益を損ねることになる。だから特許権などの知的財産権で、発明者の保護をしているわけだ。

 一方、研究の世界を考えてみると、研究課題は、解き方がある程度分かっている場合もあるけれど、真に評価されるのは、誰も解いたことのない課題を解くことだ。この際には、論文になるまでは秘匿されるかもしれないが、論文になってしまえば、その内容を引用しても、利用して発展研究をしても、問題になることはない。つまり、知的財産権の放棄がなされているわけだ。そして発見者に対しては名誉だけが贈られる。
 まあ、研究の世界での発見は、それだけでは利益が出ないから無償公開されるといえるかもしれない。もし利益が出る発見があるのならば、即、特許申請がなされるだろう。でも、研究者のモチベーションが儲けることにあるとは到底思えない。

 書いているうちに何が言いたいのか良く分からなくなってきたけれど、もし全ての発見が秘匿されるのであれば、社会が得る不利益は計り知れない。基礎的な研究データが無償で開示されるからこそ、発展的な研究が刺激され、利益を生む何かが生み出される。利益が出る段階まで来ると、その発見者の権利は保護され、発見を秘匿しない代わりに代償を得ることが出来る。
 儲けたいだけの人ばかりならば、儲けが出る段階まで研究に参入すべきではない。しかし、基礎研究がなければ発展研究が生まれないので、基礎研究に投資をする。逆に言えば、ある程度の期間内に利益を生まない研究には投資されない。そこで基礎研究には政府などによる補助金が与えられるのである。

 本当にまとまらないけれど、こうした方が社会のためになる、という考え方があったとしても、それがみんなちょっとずつ犠牲を払うやり方だと、誰かだけが大もうけ出来るやり方には適わないんだな、なんて。結局そういう結論なのか…はぁ。
標準化の罠
【経済】
 標準化、という言葉がある。これには色々な意味があるが、ここでは、SCM(サプライ・チェーン・マネージメント)などにおける標準化を意味して使用している。つまり、様々な異なる製品の部品・業務を共通化することによって、調達コストの削減などを図る手法のことだ。これを敷衍して、会計分野や販売分野でも業務の標準化ということがお題目にあげられたりする。
 この標準化というヤツ、上手くいけば色々なメリットがあるのだが、計画がまずいと余計に仕事が大変になったり無駄が出たりする。最近、日常生活の中で、もしかするとその例かも、と思える事例があったので紹介したい。

 現在、Amazon.co.jpでは、Amazonプライムの1ヶ月無料キャンペーンを行っている。Amazonプライムとは、年額3,900円を支払うと対象商品の送料およびお急ぎ便指定手数料が無料になるというプログラムのこと。小額での注文や、翌日配達を多く利用するには、最初に支払うコストよりも大きなメリットが得られると思われる。1カ月の無料お試し期間が設定されているので、登録を行ってみた。(期間終了前に解約するつもりだが…)
 で、早速注文。文庫本1冊だけを注文すると、翌日に届く。…40cmX20cmくらいのでっかい箱に入って。非常に嵩張るのだが、持ってみるととても軽く(当たり前だ!)、開いてみるとあまりにスカスカぶりにビックリするという代物。おそらくは、その箱が宅急便指定のAmazonの規格なのだと思われる。つまり、一種の標準化だ。宅急便指定の場合には、商品の大きさにより何パターンかしか選択肢がなく、そのうちの最小の物がこの箱だったのだろう。
 確かに、かつては宅急便指定には追加料金が取られたので、あまり小さな商品を宅急便で送ることはなかったのであろう。だから、小さな商品用の箱がない。しかし、今後はこのAmazonプライムを活用して、小額商品でも宅急便で配送しなければならないケースが増えるのではないだろうか。これは、標準化計画時と現時点で業務プロセスが変更になってしまったために起きた、標準化の弊害と言えるかも知れない。

 もう一つ事例を。ネット書店にビーケーワンという店がある。ボクが愛用するお店なのだが、ここはお得意様は送料無料であり、まとめて注文するとポイントがいっぱい貰えたりするので、月初に翌月の発売予定の本を一括注文する、なんてことをしたりする。
 送料が無料なので、予約商品は発売された瞬間に配送されるようなプランで注文するのだが、同じ出版社から発売される本は発売日が一緒だったりするので、ある日に何冊も童子発送されるということが良く起きる。この場合、同日配送分はまとめて配送すればコストを抑えることができると思うのだが、システムの仕様なのか、全て別パッケージで送ってくるのだ。
 こんなことをしても得をするのは配送業者だけだと思うのだが、改まる気配はない。これもおそらく、システム構築時と、その後変更になった業務プロセスのアンマッチが、非効率の原因ではないかと思われる。

 こんなわけで、一口に標準化といっても、頻繁に業務プロセスを変更しなきゃいけない場合には、どんなに上手く計画したとしても、あとで齟齬が発生する可能性があるわけで…
ここしかないタイミング
【政治】
 2009年3月3日、桃の節句のこの日、民主党の小沢一郎代表の公設第1秘書が政治規正法違反容疑で逮捕された。事実関係は良く知らないが、まさにここしかないというタイミングで逮捕の報が走ったと思う。
 奇しくも3月4日は衆議院本会議での第二次補正予算案の再議決の日。もし、小泉元首相に同調して自民党から造反が多数出て否決になっていたとしたら、今日の報道はどうなっていただろう。本来ならば、二次補正の否決は政権崩壊の引き金になりかねなかったと思うが、対する民主党の党首が汚されれば、その影響はかなり小さくなったのではないか。もしくは、小沢代表の汚職の真偽が判明する前に衆議院選挙となり、民主党の得票がかなり減らされる結果となったのではないか。
 小沢代表が主張するように国策捜査かどうかを判断するには、ボクには情報が少なすぎる。しかし、あまりにも絶妙なタイミングは、それを疑わせるに十分な気がする。

追記:
 世界中がヒイヒイ行っている今この時期に、正直言って、政治資金規正法みたいな小さなことで日本の政治機能を麻痺させるようなことをやって、検察は何が楽しいのだろうか。仮に小沢代表が有罪で、何億とか貰っていたとしても、今は損な小さな金より、何百兆円という金の問題を片付ける方が先決なのだ。
 どうしても立件したいならば、そういう問題を片付けてからやれば良い。潔癖すぎて死んでしまったら意味無いだろう?それとも、闇市を否定し、悪法なれども法は法といって餓死した山口良忠判事を目指しているのだろうか。まあ、検事は公務員だから、日本が倒産しない限り、食い扶持に困ることはないしね。
無利子国債の本当の姿
【経済】
 最近、無利子非課税国債というものが話題になっている。無利子で日本国債を購入してもらう代わりに、額面分の資産について相続税を免除しますよ、というもの。つまり、本来ならば国債でもらえる利息をあきらめる代わりに、相続税は払わなくて良いという制度です。大概は死ぬまで表に出てこないお金が、今すぐに市場に出てきて、かつ、政府の収入になるので、財政拡大や有利子国債の繰上償還の原資とすることが出来て大変お得な制度に思えます。
 しかし、この議論の際には、金持ち優遇という安直な批判が付き纏います。本当にそうなのでしょうか。相続税率をx、名目利子率をr、国債の償還期間をyとした場合、あとで相続税をもらうよりも今すぐ国債にして吐き出してもらった方がお得な条件は、
x < (1+r)^y
です。つまり、受け取れない相続税よりも、払わなくて良い利息の方が多ければ国が得するという関係式です。

 具体例を考えて見ます。まず受け取れない相続税ですが、現行の制度ですと、遺産が3億円までだと約34%、1億円までだと約23%、5千万円までだと約16%です。複数の相続人で相続する場合は、全体の税額は一人で相続する場合よりも必ず少なくなる仕組みなので、実効税率はこれより低いと考えても良いでしょう。ボクが想像していたよりはずっと低いです。
 そして払わなくて良い利息ですが、y=10年、r=3%とした場合は額面の約34%、y=10年、r=2%とした場合は額面の約21%、y=10年、r=1%とした場合は額面の約11%となり、意外に多いことが分かります。こう考えると、相続税を払う必要がないからといって必ずしも得であるとは言い切れないかもしれませんが、失われた15年の間、利子率0%で耐え忍ぶことが出来た日本人の国民性を考えると、無利子国債を買うインセンティブは十分にある気がします。

 というわけで、具体的に考えてみると、この制度は必ずしも金持ち優遇とはいえません。むしろ、溜め込んだお金を今すぐ吐き出してもらえて、それを景気回復に使えるならばありがたいといえるでしょう。
 あとはこの制度で市場に出てくるお金がどれくらいになるか、ということを検討する必要があります。100兆円くらい出てくるとしたら、(仮にそれがタンス預金だったとしたら)GDPの約2割のお金が一気に市場に増えるわけですから、もしかするとインフレを引き起こすかも知れません。まあ、今の日本の現状を考えれば、多少インフレになるくらいが失業率を低下させて良いという可能性もあります。これをどう捉えるかは政策判断になるでしょう。
1,000億円を寄付します
【経済】
 2009年2月12日時点の情報では、日本郵政のかんぽの宿売却問題で、総務省が独自に資産評価をするという方針が出ているらしい。しかし、総務省にはこういいたい。プレゼントしたものを相手が質屋に入れるからといって、怒ってもしょうがないじゃん。
 こういう、目だって庶民受けしそうなところに突っ込むのって、いかにも選挙対策のようで嫌。もっと議論すべき重要なところがいっぱいあるだろうに。緊急時には解決の優先順位をいうものを明確にしないと、つまらないところに人手を割かれているうちに、取り返しのつかない事態になることもある。

 一応、議論を整理しておくと、まず、日本郵政が所有するかんぽの宿を経営維持を条件にオリックスグループに109億円で一括譲渡する方針を示した。そこで待ったをかけたのが鳩山総務大臣。わざわざ視察までして、こんな良いものが109億円なんて安い値段の訳がないと経営指南をしてくれた。そこに埼玉県の上田知事も乗っかって、県内にあるかんぽの宿の土地代と建築費が300億円弱にも拘らず簿価が15億強でしかないとおかんむり。
 さらには民営化時のオリックスグループ会長が政府の諮問機関にいたからといういちゃもんまでつく始末。日本郵政は一括譲渡を見合わせる方針となった。そもそもかんぽの宿は赤字事業なのでさっさと手放したかった日本郵政としては痛いことになってしまったのである。

 そこで解決策を一つ提案。総務省の独自の資産評価によっていくらになるかは知らないけれど、仮に2,000億円になったとしよう。そうしたら、日本郵政は記者会見を開いてこういえば良い。「国に1,000億円を寄付します」と。もちろん、現金で1,000億円をプレゼントする訳ではなく、かんぽの宿関連資産を1,000億円で国に売却するのだ。そうすれば、総務省の考えでは2,000億円で売れるので1,000億円の丸儲け。日本郵政も100億円で売るはずが1,000億円で売れるので900億円の得。両者がとてもハッピーになれる。
 一兆分の一の確率くらいで、総務省の考えが間違っていた場合に発生する1,900億円の損失は、総務大臣一族の資産で補填してもらえば良いのでは?このリスクをとるために、総務大臣には成功報酬として500億円くらいのリベートをあげても良い。
 まあ、国民サイドから見てみれば、民営化の際に気前よく国が日本郵政にプレゼントした資産がどのように扱われようとも、全く関係ないけどね〜。だって、プレゼントした時点で国民のものじゃなくなっているんだもん。
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