北村歳治作品の書評/レビュー

現代のイスラム金融(共著:吉田悦章)

一応イスラム金融の仕組みは分かる
評価:☆☆☆★★
 イスラムでは、イスラム法により利子をとることが禁止されているということは何となく知っていた。でも、現代の金融市場で共に経済活動をするからには、この問題をどうにかして回避しないといけないわけであり、その回避法の一つがイスラム金融なのだろうという理解だ。
 本書では、イスラム金融の簡単な歴史と現状を述べるところから始まり、代表的なイスラム金融商品とイスラム金融市場の紹介、イスラム金融の問題点の指摘、日本でのイスラム金融の可能性を論じて結んでいる。序文には日本の金融関係者に向けて書いたとあるが、金融規制当局者に向けて書いたものではないかとボクは感じた。

 イスラム金融の問題点の指摘では、イスラム金融は宗教者の恣意的な判断が絡むから不透明であり、利子を取らないためのつじつま合わせをするシステムは非合理だ、という趣旨の論が展開されている。
 しかし、そもそも宗教自体が合理性とはかけ離れたものだとボクは思うし、その非合理性が嫌ならば係わらなければよい。皆が嫌だと思えば資金は集まらないのだから、経済への影響力も小さいままだろう。逆に、イスラム金融の便法を信じる者が多く、資金が十分に集まり世界経済に影響を与えるならば、それを踏まえた新たな金融の仕組みを構築するのが筋というものではないか。欧米流の金融スタイルを正とするスタンスから始まって、それに合わないからダメだというのは、何かおかしい気がする。

 本書の構成も、イスラム金融をよく知らない人間にとっては読みづらい。まず、イスラム金融とはどういう仕組みのものか、という説明があってからその歴史に遡った方が理解しやすいのではないか。また、あとから参照するためには、用語集か索引をつけて欲しかった。ネット等からの引用が多いことも踏まえると、まるでどこかに委託したレポートを読んでいる気がしてきた。

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