國貞克則作品の書評/レビュー

財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方

ボクの様な初心者が分析を始めるにはちょうど良い方法
評価:☆☆☆☆★
 財務諸表の数字を要約・グラフ化してあげて、視覚的に財務状況を理解する方法を提案している。書いたグラフを並べてやると、事業規模や指標が文字通り目に見えて分かるのでとても良い。これを読むと、会社は生き物だ、という事が良く分かる。大企業はずっと変わらず大企業の印象があるけれど、実は毎年、結構変動しているのだなあ、と。
 財務諸表分析の本も読んだことがあるけれど、そういう所に書かれている指標は細かくて素人には全体感が把握しにくかったので、その意味では、この方法は全体感を把握するのに役立つ。更に詳細に分析したい人は、その後でポイントを絞って分析することも可能だろう。

 ただ一点、引っかかるところがあるとすれば、ライブドア批判の部分。粉飾の事例として挙げるならばもっとひどいことをした大企業は多くあるだろうに、なぜここを選ぶのか。著者自身もライブドアの手法は違法ではないと言いながら、とにかく疑いの目で見ることはやめない。そして堀江氏の主導ですべてが進められたかのような印象を植え付けている。
 しかし、この点については、裁判の過程でむしろ宮内氏が主導的役割を果たしたことは明らかになってきているので、社長としての経営責任はあるだろうけれど、堀江氏が目立つからといって全ての責任を押し付けるかのごとき論法はボクの好むところではない。
 また、ライブドアは叩くけれど楽天は褒める、投資事業組合は疑うけれど商社の投資ビジネスは勧める、と評価の基準がどこにあるのか不分明な点もある。これは、最初に出る杭はとにかく打つけれど、それで満足してその後に出てくる杭はすんなりと通す、という日本社会における通過儀礼のパターンを反映した論理なのではなかろうか。まあこういう書きっぷりの方が、世の中の意見に合致して売れるのでしょうけれどね。

   bk1
   
   amazon
   

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法

つながりが良く分かる
評価:☆☆☆☆★
 財務3表、即ち、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(CS)のつながりというポイントに着目して詳しく解説したビジネス書だ。
 B/Sの利益剰余金とP/Lの当期純利益がつながり、P/Lの税引前当期純利益がCSのそれとつながる。CSはB/SやP/Lに比べると分かりにくい面もあるので、そのつながりが分かるという意味では非常に役立つ。

 しかし逆に言うと、それ以上のことは書かれていないとも言えるので、これだけで財務諸表がマスターできるかというと、そう言うわけでもないと思う。勘定科目や仕訳についてもある程度知った上で、理解を深めるための読み物として読むくらいがちょうど良いのではないかと思う。

   bk1
   
   amazon
   
ホーム
inserted by FC2 system