黒田東彦作品の書評/レビュー

世界は考える

考える人々をつなぐ
評価:☆☆☆☆★
 一線級の論客が、世界の現状と展望を語る。それは地域ごとの話題もあれば、世界全体のテーマもある。内容を理解するためには、それなりの前提知識が必要となるので勉強にもなる。世界には面白いプラットフォームがあるんだな。
 岩波文庫と同様に買い切りゆえか、初版部数の少なさか、値段が高いのは玉に瑕。内容的には「Project Syndicate」で参照可能となっている。

ジョセフ・E・スティグリッツ「崖っぷちの一年」
中国、米国、欧州の現状を概説。政治が経済の足を引っ張っている。

クリスティーヌ・ラガルド「未来の世界経済」
国際協調を前提とした、金融改革と財政改善、経済成長。

カウシク・バス「新興国のユーロ危機」
EDWARD(欧州債務の壁と償還期限)が新興国にもたらす影響。

ギド・マンテガ「ブラジルの経済革命」
金利水準の引き下げと通貨安への誘導、そして各種税率の引き下げによる改革。

ビル・ゲイツ「ある楽観主義者のタイムライン」
ハードに普及によるソフトの本領発揮。

ジム・オニール「新興世界が立ち上がる」
新興国の経済成長は、毎年イタリアを一つ作るのと同じ。

ナシーム・ニコラス・タレブ「ゲームに自己資金を投じる」
リスクを取って上ぶれ利益を追求する人が下ぶれ損失の危険を引き受けているとは限らない。

ジョージ・ソロス「欧州の落日」
協調を旨に発足したEUは、債権国と債務国へ二分化し、上下関係が生まれた。

ピーター・サザーランド「危機に瀕する多角的交渉」
多国間貿易協定から二国間貿易協定に回帰する、区切られた世界。

ジョン・ビッカーズ「銀行論争、終わりの始まり」
重要すぎて潰せない問題をどう解決するか。

アナト・アドマティ「グレート・バンク・エスケープ」
歪んだ国際金融システムの根源は銀行家の傲慢。

黒田東彦/李昌鎬「険しい道を行くアジア」
南南貿易・投資の拡大により、富の源泉をリバランスする。

ダロン・アセモグル/ジェームス・ロビンソン「国家資本主義は最強か」
体制が社会を制御するのではなく、社会が体制を制御することが重要。

安倍晋三「Asia’s Democratic Security Diamond」(未収録)
日本、ハワイ、オーストラリア、インドのダイヤモンドで、太平洋の安全保障を考えよう。

レオン・E・パネッタ「太平洋に軸足を移す米国」
環太平洋の同盟関係を強化して米軍のプレゼンスを高め、戦力投射を可能とする。

アブドゥラー・ギュル「危機と変革」
トルコから見る中東の対立。

トルキ・ビン・ファイサル・アル・サウド王子「中東は敗者のままでいるのか」
米国はイスラエルを掣肘せよ。シリアの反政府勢力に武器を。イランはイラクへの干渉を止めよ。

メディ・ハラジ「エジプトとイランの緊張緩和」
エジプトとイランの緊張を高める、スンニ派とシーア派のねじれた対立。

ファン・マヌエル・サントス「最後の南米反政府ゲリラ」
コロンビア政府のゲリラ撲滅作戦。

ピエール・モスコヴィシ「仏欧経済清算の年」
フランスの改革。

イムラン・カーン「ドローンを停止せよ」
パキスタンに於ける米軍無人機の非道。

ニーナ・L・フルシチョワ「過去をひきずるロシアの未来史」
プーチンが取る懐古路線。ユーラシア連合発足のためのウクライナ取り込み謀略。

マーク・マズアワー「二〇一三年のワイマール」
世界中で見られる右派勢力の台頭。

マイケル・J・サンデル「市場原理に限界はあるか」
市場原理はどこまで正義に反しないか。

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