坂本光司作品の書評/レビュー

日本でいちばん大切にしたい会社

どんな会社を目指すのか
評価:☆☆☆☆★
 村上ファンド事件の際に、会社は誰のものかということが話題になった記憶があります。株式会社が解散する場合を考えると、資産分配を受ける権利があるのは、第一に債権者であり、第二に株主であるわけですから、一般的には会社は株主のものであると言われています。しかし、本書はこれに真っ向から反対します。すなわち、会社は社員のためのものである、と。満足していない社員によって、顧客を満足させることなどできるわけがない、と。
 本書では、この理念に基づいて経営を行っている会社を主に5社紹介しています。どの会社も、本当にこんな会社が存在しているのかと驚くほど、社員なり、顧客なりを中心にした経営を行っています。こんな会社を探して紹介した著者には敬意を表します。

 ただ、株式会社が本当に株主の意向を無視して経営を行うことができるかどうかは、かなり疑問に思います。実際、本書で紹介されている会社も、ボクが簡単に調べた限りでは、ほとんどの会社が株式公開はしていないようです。つまり、株式市場の影響を受けずに経営を行える会社ばかりということです。
 経営者の地位が安定していれば、経営方針が揺らぐことはありません。揺らがない経営方針の下ならば、社員も安心して働くことが可能です。多少を無理をしてダウンしてしまっても、救ってもらえると分かっているならば、無理をしてでも働くでしょう。
 しかし、株式公開している企業は取締役会(=株主)により、経営者の地位が左右されます。株主の意向を無視した経営者は交代させられ、経営方針も変わってしまうかもしれません。社員もいつリストラされるか分かりません。そんな状況で会社に忠誠を捧げろと言うのは無理があるでしょう。

 確かに、本書のような方法で上手く経営できている会社があるのは事実でしょう。しかし、資本を増強し、会社を大きくしていこうと思う場合には、経営者も変質し、社員も変質することは避けられない気がします。そのような状況で、「五人に対する使命と責任」をどう果たしていくのかを考えなければならないのかも知れません。

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