中川剛毅作品の書評/レビュー

債権回収最前線

まるで正義の味方みたいだね
評価:☆☆☆★★
 何千万、何十億円、何兆円。新聞などでよく見る金額ではあるが、ボクなどには縁のないお金。今は昔、バブル期の乱脈経営のつけを少しずつ処理していた、整理回収機構(RCC)がその役割を終えつつある。本書は、RCCの回収現場で処理された11の案件を紹介している。お金の裏には物語あり。債務者、債権者、そしてそこに群がる人々の、あの手この手を使った戦いは、笑いあり、涙あり、怒りあり、とても無機質なお金に関する出来事とは思えない。
 法律に無知で債務者にさせられてしまった人とそれを支える家族、老舗旅館のボンボン旦那の放漫経営の後始末、権力に執着する病院経営者、司法を無視してやりたい放題の人間。それらの人々に対し、時に情にあふれる解決を、時に毅然とした姿勢で望むRCCの職員は、妙にかっこいい。
 一点、気になったのが、著者は財務系の役人が嫌いなんだなぁということ。税務署が税金を負けてくれなかったと紹介しては不人情であるかのごとく書き、RCCの処理がうまくいって債務が回収できたときに満額徴収できた税務職員に皮肉めいたことを書く。税金はちゃんと支払ってもらわないと、まじめに働いている人に失礼だよね。
 本にする以上、売れるないようにするのは当然で、派手な事件ばかりが上げられているが、もう少し、RCCの地味な面や職員の素顔みたいなものに迫ってもらえれば、もっと良かったかも。ご自分でも職員の給与の仕組みが一般に知られていない、ということをおっしゃっているじゃないですか。

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