野口吉昭作品の書評/レビュー

コンサルタントの「質問力」 「できる人」の隠れたマインド&スキル

一部はジャーナリストにも見習って欲しい力
評価:☆☆☆☆★
 コンサルタントというのは、クライアントの会社について無知だ。一般的な知識や他社事例などは知っているかも知れないが、クライアントの会社についてはその会社の人よりは詳しくは無い。しかし、この最初の段階から、その会社について最も詳しい社員と同等に知っているというレベルにまでならなければ、本当に良い提案をできないのだろうと思う。このレベルアップの要点は何か。本書では、それを質問力と説いている。
 本書では、質問力には3つの側面があると説く。仮説力、本質力、シナリオ力の3つだ。ここで要素ではなく側面というのが重要で、それぞれは独立しておらず、密接に関係している。

 まずは仮説力。例えば、営業社員に「○○という商品の売上が落ちてきていますが何故でしょう?」と漠然と聞いても、よほど広い視野で業務を見ている人でない限り、適切な回答は得られないことが多い。
 事前に得たデータに基づいて、「同業他社が△△という商品を販売した影響はあるのでしょうか?」とか、「月刊の営業件数が落ちて販売に手が回っていないようですが原因は何でしょうか?」など、自分なりの仮説をぶつける事で、それに沿った、あるいは全く異なる回答を得られやすくなる。つまり、相手が考えるヒントを提供することで、深い考察を導き出す力が仮説力なのだと思う。

 そして、このように聞き出した事実を整理し、それをグルーピングすることなどで抽象化し(帰納法)、あるいは抽象的な仮説に基づいて事実を集めていったりする(演繹法)事で、問題の本質を見抜く力を本質力と呼んでいるのだと思う。
 以上の様な力を、クライアント固有の事象に当てはまるように取捨選択する力をシナリオ力と呼ぶのだと思う。一般的な事象を並べるだけでは、クライアントの会社にとっては何の意味もない。まさに共感できるシナリオを組み立てて始めて、意味のある成果といえるだろう。

 この様なことを、著者自身の経験や、様々な事例を用いて実地的に説明しているので、比較的分かりやすいと思う。まあ似たようなことは、様々な人が書いていると思うので、特に著者の独創というわけではないだろうけれど。
 これはコンサルタント視点であり、相手方に立った視点でものを考えることも重要なので、ジャーナリストの質問力とは若干異なるのは事実なのだが、政治家や官僚、企業人などに質問する若手記者を見るにつけ、せめて仮説力くらいは持って欲しいなとは思う。自分が取材対象を理解して初めて、本質を突く質問が出来るようになると思うのだが…。

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