アンドレアス・ロイズ作品の書評/レビュー

悪魔の取引 ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

栄光からの転落
評価:☆☆☆★★
 投資アドバイザーとして世界中を飛び回る生活をしていた私は、テロ発生のためチューリッヒから飛行機に乗れなくなり、パリ行きの列車で移動することにした。そこで、同じコンパートメントに乗り合わせることになったアニサ・チャッブラに、ちょっとした経済学の講義をすることになる。もちろん彼女が若い女性だったこととは無関係ではない。
 ところが、同じ列車でかつて指導したガイ・アバグロンビーと偶然出会い、しかも彼が巨大詐欺事件の実行犯として当局から追われていたことで、私の運命はゆがめられ始める。そして、実は当局の職員だったアニサに脅される形で、捜査に協力することになってしまった。

 アニサからの質問を受けつつも、これまで通り、各地に仕事で飛び回っていたところ、ガイ・アバグロンビーが起こした事件と私の間に、かつての汚点とも言うべき出来事が絡み合っていることに気づき始める。そして事態が明らかになった時には、もはや抜けられないところまで深みに落ちていたのだ。

 金利、割引率、現在価値、デリバティブ、オプションというあたりの用語を聞いて特に分からない部分がなければ、本書を読んで新たに学ぶ知識はないかも知れない。ストーリー展開に絡めて経済学を学ぶ構成になっていると言うが、その絡め方はかなり無理矢理で、ストーリー上どうしても必要な要素というわけではないのが残念だ。
 知識がないと知らない間に手痛い目にあっちゃうよという教訓的な話なのだが、その教訓に本書の内容が適しているかどうかは、疑問がぬぐえない。

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