エアロ・アクアバイオメカニズム研究会作品の書評/レビュー

エアロ アクア バイオメカニクス 生きものに学ぶ泳ぎと飛行のしくみ

水や空気をかき分けて移動する生物たち
評価:☆☆☆☆★
 海と空を舞台に生きる生物たちの遊泳・飛行機構の仕組みを、最近の研究に基づいて解説している。また、それらを応用したロボットなどにも触れられている。
 7章構成となっていて、それぞれ、マグロ、フグ、イルカ、微生物、昆虫、鳥、ペンギンの機構を紹介しているのだが、この章立てが面白い。

 第1章のマグロは浮き袋がなく、何もしなければ沈む体をしているらしい。だからマグロは、常に泳ぎ続けることで揚力を生じさせ、沈みっぱなしにならないようにしているそうだ。  こんな事実を知ると、よく聞くマグロは泳がないと酸素を取り入れられなくて死んでしまうという欠陥にみえる機能も、もしかすると揚力を得るために泳ぎ続けるための条件付けとしての役割を果たしているのかも知れない、などという妄想も浮かんできてしまう。

 第2章のフグは、マグロとは違い泳がなくても沈まないし、小回りが利く機能を持っているということ、第3章ではイルカが高速遊泳を実現する機能を持っていること、第4章の微生物は水の粘性の効果が強くなる領域で泳ぐための機能を教えてくれる。

 第5章と第6章は空を飛ぶ生物の話なのだが、昆虫は体が小さく空気の粘性の影響も受けやすいため高速で羽ばたく必要があること、飛ぶのに必要な力は体重のべき乗で増えるので体の大きな鳥は羽ばたきも滑空で飛ぶケースが多いこと、海に棲むか山に棲むかでどちらを選択するかが決まることなどが説明される。
 そして第7章のペンギンは、鳥でありながら海を泳ぐ生物だ。第1章のマグロは沈まないために泳ぐのだが、ペンギンは浮き上がらないために泳ぐ。同じ海という舞台に生きる生物でありながら、同じ翼と揚力を使って、全くベクトルが違う仕組みを作り上げていることが面白いと思った。

 ただ、全体を通して、この本がターゲットとする層がよく見えなかった。読み物として楽しむにはもう少しポイントを絞って、その分、面白いネタを加えた方が良い気がするし、専門的内容と見るには登場する物理は高校レベルで、大雑把な概算という感じなので物足りない。
 結局、これまで分かったことをとりあえずまとめた、というのが総合的な印象だった。

   bk1
   
   amazon
   
ホーム
inserted by FC2 system