日明恩作品の書評/レビュー

ロード&ゴー

失踪する救急車が訴えるもの
評価:☆☆☆☆☆
 消防隊の機関員である生田温志は、救急隊長の筒井圭一や救命救急士の森栄利子と組んで、救急車の機関員も兼務している。どちらも緊急走行する車両ということで同じ様に思えるかもしれないが、運転のコツはぜんぜん違う。なぜなら救急車は、卵よりも振動や衝撃に弱い急病人を安全に、かつ、素早く搬送しなければならないからだ。
 そんな彼らの仕事には困難がいっぱい。例えば、大した症状でもないのに簡単に救急車を呼ぶ。例えば、サイレンを鳴らしても避けてくれない。例えば、搬送先の病院がなかなか決まらない。だが今回、彼らを襲う困難は、それよりも直接的にハードなものだった。

 病人を装って救急車に乗り込んだ悠木という男が、森にナイフを突き付けて救急車をジャック。その悠木が持ち込んだのは爆弾で、彼自身も家族を人質に真犯人に脅されているらしい。
 犯人の要望によりマスコミに報道され、無線で実況されるジャックの状況は、消防・警察だけでなく、無線を傍受する人々にも詳らかにされていく。そして犯人の要求により、救急車ノンストップで都内の病院を走り回らされる。
 果たして犯人の目的は何か?そして、救急車は無事に解放されるのか?

 救命救急の啓発的な意味合いも含まれている印象を受ける。動機は分かりやすいものだけれど、その状況を生み出す救急のことはあまり知らないことを自覚させられた。
 最近、福島第一原発で話題の第三消防方面本部消防救助機動部隊(NBC災害対応部隊)も後半に活躍する。

 ちなみに、タイトルのロード&ゴーとは、迅速な車内収容と高度な医療機関への搬送の宣言のことらしい。

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