ジェイムズ・P・ホーガン作品の書評/レビュー

内なる宇宙 下

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内なる宇宙 上

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巨人たちの星

舞台は異星人との外交へ
評価:☆☆☆☆★
 2,500万年前から旅してきたガニメアンたちを、彼らの子孫が住むかもしれない星系・ジャイスターへと送りだしたハントやクリスたちだったが、彼らの上司グレッグ・コールドウェルから新たな話題を聞かされる。なんとそのジャイスターから、地球人へ向けて電波が送られているというのだ。つまりそれは、前述のガニメアンたちがやって来る前から、彼らによって地球が監視されているということを意味する。
 事の真相を明らかにするため、ハントやクリスは情報の分析にかかる。その結果、論理的に導かれた答えは、前二作に現れた謎を解き明かすものだった。

 今回は継続的な異星人とのコンタクトがテーマとなっているため、政治や外交的な側面が強く、SF色よりもアクション色の方が強いかもしれない。

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ガニメデの優しい巨人

起源と過程のどちらがより重要か?
評価:☆☆☆☆★
 ガニメデで発見された2,500万年前の宇宙船を調査に向かったヴィクター・ハントとクリスチャン・ダンチェッカーは、そこで過去からの遭遇を果たす。相対論的効果により、2,500万年前から漂流していたガニメアンの宇宙船が、かつてミネルヴァが宙域へと帰還したのだ。
 母星の消滅に愕然とするガニメアンたちに、これまでの研究成果を語って聞かせたハントたちは、彼らと協力して未だ残る謎に挑む。その果てに知る、人類進化の秘密とは何か?

 「星を継ぐもの」の続編。地球の研究者たちが総力を結集して見出した存在、ガニメアンが本当に彼らの前に現れる。崩壊の危機に瀕していた当時の母星を救うため、他星系で研究をしていた彼らは、帰還時の事故がきっかけで、亜光速の世界線に隔離され、現代へと帰還したのだ。
 前作に比べれば、徐々に競り上がって来るような緊張感には欠ける気がする。提示される謎も、元をたどればただひとつで、その点でも物足りなさはある。しかし、前作で描ききれなかった部分が読めることは楽しいと思う。

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星を継ぐもの

事実を積み上げて仮説を構築する姿勢が科学的
評価:☆☆☆☆☆
 人類史にとって大きな転機となる事件は、男性遺体の発見から始まる。それが発見された場所は、月面の洞窟。ただし、放射性物質による年代測定法から算出された死亡時期は、5万年前だ。

 物理学者のヴィクター・ハントは、その起源の調査を行う国連宇宙軍に協力することになる。遺体は調べれば調べるほど、生物学的には完全に人間。遺留品の文字の解析は遅々として進まない。
 そんな状況の中、生物学者のクリスチャン・ダンチェッカーは、彼を地球人類として議論を強引にまとめようとするのだが、ハントはそれに反対し、もっと自由な立場から調査を進めることを主張する。
 各分野のトップ研究者がそれぞれの領域で分析を推し進め、様々な発見的事実に基づき組み上げられた仮説は、常識を覆す驚くべきものだった。

 SFとは、常識の上に空想を重ね、ありうべき未来を構築するフィクションだ。しかしこの常識は、時代により変化する。作品が時代を超えて読み継がれるためには、執筆時の作者と、読者との間に、常識のズレがないことが重要な要素であると思う。
 この常識のズレを避けるために、この作品では常識を読者に委ねてはいない。作中で解き明かされる謎の前提となる常識を、解決の前にあらかじめはっきりと提示しているのだ。
 ゆえに読者は、丹念に作品を読み進めて行けば、どんな事実をベースにハントたちが悩んでいるかが分かるし、彼らが積み上げていく発見から、彼らが至るコペルニクス的転換を味わうことも可能になる。

 本作では、その様な転換のタイミングが3度、訪れる。その転換はさながら、読者への挑戦状が出されているミステリーの解決編のようなものだ。一体何がその常識で、それがどの様に転換されるのか。ぜひ味わってみて欲しいと思う。
 このとき注意することは、いまあなたが知っている常識に捕われてはいけないということだ。全ての常識は、作中の記述の中にあるということを忘れてはいけない。そして読み終われば、このタイトルがどれほど内容を適切に表現しているかも理解できることだろう。


 個人的に、なぜ十二進数なのかに対する仮説もあるんだけど、それは作中では明確にならないんだよなあ。

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