森見登美彦作品の書評/レビュー

夜は短し歩けよ乙女

夢のような楽しい世界
評価:☆☆☆☆☆
 先輩であるところの私は、黒髪の乙女とお近づきになるべく、京都の街で、大学構内の中で、偶然の出会いを装おうと奮闘する。しかし、黒髪の乙女である私は、先輩と時間と場所を共有しながらも、他の独特な面白い人たちと知り合い、大学一回生の生活を充実させていく。果たして先輩と私のニアミス続きの関係性が交わる、ご都合主義の展開は訪れるのか?  先輩が彼女にお近づきになろうと色々と迂遠な手立てを使って努力するのだけれど、実際に彼女と街中を歩き回るのは、「四畳半神話大系」に登場する樋口氏や羽貫嬢など、京都に住む偉大な先達だ。どこまでが先輩の妄想で、どこからが現実なのかよくわからないような楽しい世界の中で、黒髪の乙女は人間関係が築く青春を謳歌する。  この夢のような楽しい世界は、人生のどこかのタイミングで、夢のように消えてしまうのかな?李白翁や東堂氏の様に、いくつになっても同じ世界で行き続けられる人もいるけれど。
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四畳半神話大系

組み合わせは変わってもピースの接点は変わらない
評価:☆☆☆☆★
 最終話まで読み終わってみると、第一話でほとんど全てが語られていたんだな、と思う。ただ、同じ様な出来事でも、それを捉える側の心理が変われば見え方が変わってくる。
 周囲の出来事が変わるようでいて、結局のところ自分の変わるべきところが変わるまでの過程として必要なのが、二話と三話の試行錯誤なのだろう。

 一回生の時の選択肢の違いによって引き起こされる、三回生のときの出来事の変化が延々と繰り返されるだけなのだけれど、そこには変わらないターニングポイントがいくつかある。そして最終話に至って、それらの関係性が明らかにされるわけだ。
 いずれの話にせよ、訪れる結末は大概の人にとっては十分幸せだと思うのだが、本人は不満が残るらしい。なんて贅沢なんだ。

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