Story Seller
- 短い中にも怒涛のストーリー
- 評価:☆☆☆☆☆
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表題作である、有川浩「ストーリー・セラー」の感想。
ただの雨降りの日だと思った。でもその雨粒は森の葉に受け止められ、樹表を伝わって地面に落ち、そして川の源流となった。初めはちょろちょろとした流れも、山を下るに従って水を集め、あっという間に大河になった。そして激流。岩をごろごろと巻き込みつつ、徐々にそれを丸く小さく変えていった先に待っているのは海…かと思いきや、断崖でぶっつりと断ち切られた。
一気に引きこまれて、唐突に突き放された。そんな感じ。
趣味で小説を書いている女性が、ちょっとしたアクシデントで初めての読者と出会い、商業作家となるのだけれど、思考すると死んでしまうという奇病に罹るお話。こうやって文章に表現すると陳腐に感じるのだけれど、実際に読むと、色々と自分の心にひだに引っかかるところもあり、一気に引きこまれてしまう。
この理由は、登場人物たちが現代社会をまさに今生きている、と実感させられるからではないだろうか。物語のためのウソは冒頭の一つだけ。他に起きる出来事は、身近に本当にあるかも、と思わせるものばかりで、そういった小さなホントの積み重ねが、物語のウソすらも現実的に感じさせてくれる。
「読み応えは長篇並」のコピーは伊達ではないと思った。
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Story Seller(有川浩)の書評/レビュー
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