淡路帆希作品の書評/レビュー

ひとしずくの星

星の巫女と世界の終わり
評価:☆☆☆★★
 星の災禍という天災によって故郷と家族を一瞬で喪失したラッカウスは、聖都の神殿に引き取られ、神官として教育を受けていた。ある日、師匠から立ち入るなと命じられていた禁忌の森に忍び込んだラッカウスは、そこに佇む塔にいる少女と出会う。
 赤ん坊のように無垢で何も知らない少女に同情し、言葉を教え感情を教え、シースティという名前を与えるラッカウスは、やがて彼女の秘密を知ることになる。

海波家のつくも神 (2)

振り絞る想い
評価:☆☆☆☆★
 海波大地に家に、本体が行方不明になった付喪神のフウと、獺の瀞が、彼の力に期待してやってくる。ひとまず居候させ、本体探しと共に、瀞が人間に化けられるようになる訓練に付き合うことになる。
 そんな時、日和陽菜に不審な行動が見られるようになる。彼女を心配した石水冴華は、嫌っている、不思議なものを見られる能力を使って彼女を助けようとする。それを知った大地も密かに助けようとするのだが…。

海波家のつくも神

隠れた遺産
評価:☆☆☆☆★
 父母の海波航と空閑すみれを事故で亡くした海波大地は、叔父の家を出て両親と暮らした実家に戻ることになった。久しぶりの我が家に入ると、無人のはずのそこには、物語のリリィベル、マグカップの紅葉と青葉、しゃもじのしゃも爺、掛け軸の秋津と珠風という付喪神たちが暮らしていた。
 付喪神に力を与える力を持つという大地の力によってリリィは実体化までしてしまい、共に学校に通うことになる。幼馴染の槇悠生や、新しく友人となった日和陽菜や石水冴華、父母の後輩だという教師の泰田詢子などに絡み、付喪神が不思議な現象を起こしていく。

グロリアスハーツ (2)

愛ゆえに
評価:☆☆☆☆☆
 パルティシオン大陸から遠く離れた死潮(グラニカ)より来たる怪精(ファンタズマ)に対抗するため、シローフォノ軍が生み出した贋人(ギニヨル)である《木霊(ドリュアス)》メリッサと《氷姫(グラス・レーヌ)》ユズカは、《七頭龍(キリム)》を宿す人間であるアルトゥール・ドルークと出会い、人間になる方法を探して、かつて第四クレイドルの研究員だったディニタ・イングリスを探していた。
 しかし、シローフォノ軍の三等星(ペトルーシュカ)狩り部隊である《贋人狩り》の《スター・ダスト》に襲われ、メリッサはそのコアであるマテリエを真っ二つにされ、動かなくなってしまった。

 残されたユズカを連れ、アルトゥールはせめて彼女だけでも人間にしようと、ティニタ・イングリスを探し求め、情報屋《妖猫(アダンダラ)》ミヌーの言葉に従い、ジャッロ・コリーナ市へとやってきた。
 メリッサがいた時は姉妹兄弟として何の意識もすることなくやってこれたアルトゥールだったが、ユズカとキスをしてしまった後では、彼女を一人の女性として意識せずにはいられない。しかし、ユズカがあくまで兄を望むのであれば、その思いは押し殺さなければならない。そんな葛藤を抱える彼の前に、かつてユズカのストーカーだった《雷鷲(ワキンヤン)》ロドリクが現れ、彼らの仕事の妨害をしてくる。

 シリーズ最終巻、残念ながら打ち切りの模様。ファンタジア文庫なのにファンタジーが少なくなっている昨今、頑張って欲しかったのだが、売れなかったのであれば致し方なし。萌えるシチュエーションを優先する最近の風潮の中では、苦境に立たされてしまったのであろう。
 そんなわけで、おそらく当初の予定からは筋立てが大きく変わり、かなりご都合主義のハッピーエンドになっている気がする。その点は何か残念。

グロリアスハーツ

容れ物ではなく中身の関係
評価:☆☆☆☆☆
 パルティシオン大陸から遠く離れた死潮(グラニカ)より来たる怪精(ファンタズマ)に対抗するため、シローフォノ軍は贋人(ギニヨル)を生み出した。マテリエを心臓とし超常の力を持ちながら、見た目は人間と変わらない存在だ。それらは感情を持たない一等星(オランピア)、戦闘的ではない二等星(スケアクロウ)、感情を持った欠陥品の三等星(ペトルーシュカ)に分けられ、最後の一つは即刻処分される。
 そんな研究所の一つ、第四クレイドルで、七年前に事件が起きた。所長のディニタ・イングリスが三等星を密かに逃がし、自らも出奔したのだ。そうして逃げた《木霊(ドリュアス)》メリッサと《氷姫(グラス・レーヌ)》ユズカは、アルトゥール・ドルークという人間の少年に出会う。彼は人間にも拘わらず、《火龍(ヴィーヴル)》《飛龍(リンドブルム)》という贋人のような力を持っていた。

 そして現在、ユズカとアルトゥールはブリザード特急便という宅配業を営みながら、ディニタ・イングリスを探して旅を続けていた。全ては贋人の軛から逃れ人間になるため。《贋人狩り》《スター・ダスト》という敵を抱えつつ、人捜しを続けてきた二人の前に、ミヌーという女スリが現れる。

 人間を超える力を持たされた存在が、普通に平凡に暮らすために戦うファンタジーだ。戦いなどとは無縁にいたいのに、向こうから火種がやってくる。それもこれも、彼ら自身が特別な存在であるからだ。
 そんな異能ファンタジーを彩る要素として、兄と妹という関係や、異性として意識する感情、今までと同じ関係を維持したい気持ちが交錯し、外的要因によって引っかき回される展開が付与されている。

花守の竜の叙情詩 (3)

互いの想いゆえに傷つく心
評価:☆☆☆☆☆
 妹姫ロゼリーを取り込んだ悪魔キャンディッドに狙われる銀竜テオバルトは、共に狙われる女性アマポーラを護るため、思い出を失い彼女に他人を見る目で見られて傷つきながらも、必死に悪魔を倒し続ける。月神との契約を果たし、再び彼女の隣に戻るために。
 一方、影ながら守られるアマポーラは、テオバルトを救うために失った彼との思い出の欠落に苦しんでいた。何か大切な記憶があることは分かるが、それが何か分からない。その困惑は徐々に彼女の精神を、肉体を蝕んでいく。

 同じ銀竜であり、アマポーラを保護するラトレイア王家の千年前の姫でもあるラシェルの護衛をかいくぐり、あの手この手でアマポーラに手を出して来るキャンディッドを完全に倒すため、銀竜たちはある計略を練るのだった。

 滅ぼした国のいらない王子と滅ぼされた国の王女がはじめは憎悪しながらも、様々な困難を乗り越えていくにつれて思いを通じていく。しかしその恋慕は、王子が人外の存在となってしまうことにより引き裂かれる。そして、傷ついたその王子を救うために、王女は彼に関する記憶を失うことに同意する。そんな二人が再び出会うのが今回の話だ。
 レーベル名にファンタジアと入りながら、ここまで純粋なファンタジーは珍しいのだが、二人の心情と、その間で心を痛める幼い娘エレンの姿を丁寧に描写しており、美しい。1巻だけだと悲恋という印象なのだが、ここまで続編が刊行されることにより、ハッピーエンドとなった。

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花守の竜の叙情詩 (2)

ピンチがチャンス
評価:☆☆☆☆★
 銀竜としての使命を果たすテオバルトだったが、悪魔たちの生みの親であるキャンディッドの計略により、その力の大半を奪われてしまう。速やかに取り戻さなければ自身の消滅を招く。アマポーラとの約束を守るため、キャンディッドを追跡するテオバルト。その頃、老夫婦の家に拾われて農民としての生活をしていたアマポーラは、領主の次男坊に見初められ、意に沿わぬ行動を求められていた。

 前巻の終わり方から考えると必ずしも続編が必要だったとは限らないが、キレイな終わり方から希望を持てる展開への転進を果たしたのだとすれば、アリではあると思う。次巻で完結らしい。

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花守の竜の叙情詩

モノではなく人として
評価:☆☆☆☆★
 ある島を支配する二つの王家のうち、一方が滅ぼされる。滅ぼされた方の王女を生け贄として、滅ぼした方の第二王子が自分と妹の生き残る道を守ろうとするのだが、一緒に旅をするうちに互いに情が移ってきて、という筋書きの物語。戦闘シーンなどはほとんどなく、一方は憎み、他方は無関心な関係が、様々な出来事が起きていく中で少しずつ変わっていく様子を描いている。
 ストーリーの核にあるのは、王家に生まれた姫君たちの運命と、それを利用する人々といったところでしょうか。静謐で物悲しい雰囲気を持った作品です。

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