相原あきら作品の書評/レビュー

ちゅーぱらだいす

自己弁護の塊
評価:☆☆★★★
 古本屋から怪しげな魔道書を持ち出してしまった棚畠在人は、封印を解いて奇妙な存在に取りつかれてしまう。その存在はキスの女神を名乗り、彼に5人の女の子とキスしないと女の子になる呪いをかけられてしまう。ただでさえ、女の子と間違えられるような男の子なのに、シャレにならない。
 事故で、片思いの水生メルの友人である加瀬緋奈美にキスし、呪いのせいで快感を与えてしまった棚畠在人は、そのことに苦悩する。しかし、女の子になりたくないばかりに、水生メルにも告白してキスしてしまった。

 幼馴染の新月まひるから迫られるものの、兄妹の様な関係を崩したくなくてそれに気づかないふりをし、いつもからかってくる先輩の来栖夕陽に逆襲してキスをし、何とか呪いから逃れようとする棚畠在人は、さらには街で出会っただけの金谷五十鈴の唇も奪ってしまうのだった。

漆黒のエインヘリアル (2)

復讐の道半ばにて
評価:☆☆★★★
 血誓兄弟(フォースブレーズ)の仲間たちを失いながらも、トロイメア帝国皇帝を倒したロストは、謎の青年アヴィの言葉のままに、ビフレストのミリアの生まれ故郷であるウルズにある泉を目指した。
 ところがそこでは、炎の長スルトを信奉するヴァルテ・ル・ミウと彼が率いる焼神閥団(バンズコンパニオン)が住民たちを拷問し、ウルズの泉のありかを見つけようとしていた。

 ロストたちは、ミリアの旧友の半巨人ハミンギャと、ウルズの支配者であるグラーバグと共に、ヴァルテに先んじて泉に辿り着こうとする。

漆黒のエインヘリアル

省略される復讐の旅
評価:☆☆★★★
 ノルンの里に生まれたロストは、両親と巫女をしていた妹フーリンをトロイメア帝国皇帝と黒のビフレストである仮面の男に殺された。同様に皇帝を恨むトーメントと出会ったロストは、事件後に目覚めた、神々の力を宿し引き出す神紋を力として、復讐のための血誓兄弟となる。
 その後、ソロウやフュアリーらを助けて仲間とし、数々の戦いを乗り越えてようやく辿り着いた帝都では、神紋を宿すグリームニルたちによる戦いの場、神紋演武が企画されていた。皇帝と謁見できるという優勝特権を目指し出場しようとするロストたちの前に、皇帝直属のギリームニルであるビフレストのミリアやスーが現れる。

 物語としての山場をどこに設定しているかが分からず、結局、どこも盛り上がらないという残念な構成になっている。

イヤになるほどヒミコなヤンキー (2)

カズヤに生まれる疑心
評価:☆☆☆★★
 元ヤンキーの叢雲カズヤは、キャバクラ・スターライトのオーナー店長ミワに拾われて、ボーイとして働いている。キャバ嬢のミサキやアケミ、ボーイの先輩の下種井と働く日々だが、そんな彼には普通とは違うところがある。それは、彼にはヒミコを名乗る幽霊がとりついているということだ。
 そのヒミコは得意の手相占いで人助けをしたいとカズヤを説得し、実業家の北大路幹泰と結婚させられそうになっていた令嬢の久城明日香や、鹿住希美と金越環江の女子高生らを手相を読むことで救って来た。

 そんなある日、カズヤは街で良く当たるイケメン占い師の噂を聞く。てっきり自分のことが噂になっているかと思ったのだが、そうではなかった。件の占い師である坎面居士の信者らしき少女の清井沙希が彼の前に現れ、このままヒミコに誑かされて占いを続けると、周囲の人間を不幸にすると告げられる。
 その直後、ミサキが転んで怪我、ミワが交通事故にあい、久城明日香が働く探偵の小森武彦と助手の草田日名とがいる事務所が爆発してしまう。

 今巻は手相押しが弱められ、占いの胡散臭さが前面に出る構成となっている。キャラクターを生かして物語を転がす方にシフトしようとしているようだ。

イヤになるほどヒミコなヤンキー

ヤンキーが手相占い師
評価:☆☆☆☆★
 叢雲カズヤはミサキというキャバ嬢を助けてヤクザに追い詰められていたところを、キャバクラ・スターライトの店長ミワの仲裁で、見逃してもらえる。その縁でスターライトで働くようになったカズヤは、ミワへの恩を返すため、喧嘩っ早い性格を改めて真面目に働くようになる。でも、キャバ嬢のアケミには冷たく当たられてしまい、未だ修業中の身だ。
 そんなある日、ミサキから翡翠の勾玉の片割れをもらったことで運命が変わってくる。その勾玉にはヒミコが宿っていたらしく、でも力が弱ったおかげで、もう手相占いしか出来なくなっていたのだ。しかも幽霊だから、カズヤ以外の人間には見えない。

 元々霊感が強かったカズヤは、小学生時代に幽霊の話を聞いて痛い目にあったことがある。このため、手相占いで人助けの手伝いをして欲しいというヒミコを一蹴するのだが、なんやかんやと困った人を占ってやることになり、そしてその人たちの運命に介入することになる。
 若手実業家の北大路幹泰と無理矢理婚約させられそうになっている少女・久城明日香。友人の鹿住希美から見捨てられるかもしれないと怯える、自分に自信が持てない女子高生・金越環江。そこに探偵の小森武彦と助手の草田日名、数々のヤクザとキャバ嬢が絡んで来て、カズヤの周りは落ち着くことを知らない。そうして運命の至る場所で、カズヤはその拳で何をつかむのか。

 近年、人気職業ランキングの上位に入っているというキャバ嬢をキャラに選んだところは「夜のちょうちょと同居計画!」と共通している。そこに、占いという、女子には切っても切れない要素を加えた感じだろうか。
 まあしかし、本当の主人公はその占いを毛嫌いしている元ヤンキーなので、考えるよりも感情で反発し、困難は拳で突きぬく感じの行動が多い。占いに興味がなければその部分の解説は飛ばし読みになってしまうし、同じことが繰り返されるバカっぽいやり取りも流してしまうことも多いかもしれない。ちょい悪な男に憧れる感じで、どうせ結局、落ち着くところに落ち着くんだろ、みたいな。だが、色々と伏線は張られているようだ。

 ちなみに口絵と本文で、ヒロインの名字が違っている。どっちが正しいかは知らない。

彼女の運命ゲーム系

運命測定機械はサイコロを振る
評価:☆☆☆★★
 御調和水の携帯端末で、突如、ライフ・マニピュレーターというアプリケーションが起動する。その画面に現れた黒のバニーガール、運命測定機械と名乗る彼女は、和水をプレイヤーと呼び、ゲームへの参加を促す。彼女の言うゲームとは、スポットと名付けられた人間の運命をサイコロを振ることで決定し、幾人かのプレイヤーと競った結果勝利すれば、そのスポットの象徴する運命が世界の運命となるらしい。
 和水に提示されたスポットは、幼いころにケンカ別れし最近再開した少女、向井歩美。彼女との仲直りのきっかけを求めて、和水はゲームに参加することにする。

 まるで双六のように、止まったマスで指示される運命を実現するために和水は行動を開始する。でもそれは上手くいくことばかりではなく、傍から見ればまるでストーカーの様でもあり、彼自身の気質が達成を妨げたり、彼を妨害するプレイヤーが現れたする。  恐怖を象徴するポケットとそのプレイヤーの持田八十吉、博愛を象徴するポケットであり、和水の婚約者となったらしい三澄華江と従者の瀬場と出会い、彼らがゲームの示す運命に妄信していることを知り、そのことに違和感を抱いていくようになる。

 赤の9番【隷従】と共有する世界観でありながら、ゲームの運営方法が少し変化した設定となっている。そこに組み込まれた和水は、当初はゲームに沿ったクリアを目指しながらも、彼が守ろうとする歩美に降りかかる災難を経験していくにつけ、ゲームの枠を、運命測定機械やゲーム管理者の思惑を超えた所での調和を目指していくわけだ。
 ダイスを振るという偶然性を強調した舞台を作りながら、その偶然を実現するストーリー展開には主人公の努力を要求するというところに、何かちぐはぐした感じを受けてしまった。まるで後半の展開は後付けされたような。

 同じ様な結末を導くにしても、状況に流されきる部分、気持ちが切り替わる部分、新たなやり方を目指す部分をそれぞれ徹底的にやった方が、面白さと教訓ぽい部分が分かりやすくなった気がするのだが。ただそれをやるには、初めの主人公の心が強すぎるという気もする。

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赤の9番〈隷従〉

このあと衝撃の展開が…って言われても
評価:☆☆☆★★
 木下つくしという名前が表すように頼りない高校生男子が、たまたまクラスメイトの小田かずさが公開しているブログを発見し、それをきっかけに声をかけたことから、不思議なカジノでの対決に巻き込まれていく。
 ポケットという、世界の方向性を決める中心となる少女たちと、彼女たちにベットするプレイヤーたちの駆け引きの物語…と紹介すると、渋い展開であるように感じるかもしれないが、そこまでみっちりとした駆け引きが繰り広げられる物語というわけではない。基本的には、女王様キャラの小田かずさのツンデレっぷりと、彼女に従属しながらも最後には活躍する木下つくしのもてっぷりを描いている部分が多い。
 ただ、木下つくしが妄想する場面では、どこまでが現実でどこからが妄想なのか、その区切りが分かりづらく、それだけ彼が妄想にどっぷり漬かっているという演出なのかもしれないが、読んでいて状況がよく分からなくなることもある。

 全体の構成面でいうと、事態の把握とダラダラとした敵とのやり取りに多くが割かれていて、間延びした印象を受ける。設定的には色々と考えられていることはなんとなく伝わってくるのだが、その深さが具体的に伝わってこず、これから面白くなるかどうかもよく分からないというのが正直なところ。バラエティ番組のコマーシャル前のアオリみたいな。
 上下巻の上巻というのならこの構成も分からなくはないけれど、そういうわけではないみたいだし。キャラクターの言動に萌えられなければ、それで終わりかもしれない。

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