哀川譲作品の書評/レビュー

魔界貴族のなつやすみ

永遠に続く夏休み
評価:☆☆☆★★
 子供の頃に神隠しにあった経験を持つ姫宮花梨は、その時の記憶から周囲の当り前との間に薄い膜の様な隔意を感じていた。
 そんなある夏休み、バス停で喧嘩する青年と少女に彼女は出会う。アンセム・クルワッハという青年とフェンネルという少女を居候させることになった姫宮花梨だったが、彼らは魔界から来た辺境伯とその唯一の領民だった。

 姫宮花梨の妹とその友人の小学生たちと共に夏休みを満喫する伯爵たち。そして姫宮花梨も、当たり前の少女の様な面持ちで伯爵と接していく。地主神や地域に住み着く妖怪と共に繰り広げる夏休みはいつまで続くのか。

モンストラクター やればできる人外娘の調教指導

早く人間になりたい
評価:☆☆☆★★
 モンスターが人間との軋轢を起こさないように指導するのがモンストラクターだ。辰巳宗一は17才でありながら業界でも認められるモンストラクターであり、成果は確実なものの報酬も高い。そんな彼のもとに、真成寺遥奈という女子高生が訪ねてくる。サキュバスの血が目覚めた彼女は、暴走するとエロくなってしまうのだ。
 遥奈は人間を目指して指導を受けることになるのだが、もちろん彼女には辰巳の要求する報酬は払えない。そこで、辰巳にメイドとして仕えるキキーモラのモーラの指導を受け、住み込みで働くことになった。そこに、ダンピールの小日向美織がやってくる。人間の友達を作りたいという彼女だが、すさまじい毒舌で人間を蔑む言葉を口にする。彼女に友達はできるのか?

魔法少女試験小隊

革新兵器開発の核心
評価:☆☆☆★★
 アウトフィットと呼ばれる装備を身につけることで強力な戦闘力を発揮する歩兵戦力は、俗称で魔法少女と呼ばれる。何故ならアウトフィットの適性がある人物は、圧倒的に女性が多いからだ。

 ドイツ軍の魔法少女であるアティリア・ヴィッツレーベン准尉はアウトフィットのテストパイロットだったが、エレン・アイラ・ボング中尉やミュリエル・ネッカー准尉と共に、多目的戦術運用オルキヌスを綾笠付属学院に輸送する任務を命じられる。
 ところが道中に瞬間装着、完全飛行、バリアという、2.5世代アウトフィットでは実現不可能な効果を発揮するアウトフィット・ジャガーの襲撃を受ける。偶々、同じルートで父・剛金の運転する車で空港に向かっていた戌井折春は、その襲撃に巻き込まれ、共同して対応することになる。

 その戦闘の最中、オルキヌスを開放してしまった戌井折春は、WM計画主任の川村貴幸から、専属エンジニアとして働くように協力を求められる。同じように専属アクターとなったアティリア・ヴィッツレーベンと共に学院に通うことになるのだが、元々、WM計画を担当するはずだった生徒の御影柚葉や篠崎江梨香とは微妙な雰囲気になってしまう。
 しかし、妹の戌井緋花音の事件から、誰もが扱えるアウトフィットの開発を目指す戌井折春は、めげずに日々を過ごしていくのだった。

正義の味方の味方の味方 (3)

素直な気持ち
評価:☆☆☆★★
 白陽花学園DH学科に通う悪の組織の総帥である一ノ院凜奈は、無表情な冬咲姫紗希や自称魔法少女の立花カノンにけしかけられ、鳥坂橙也ことジャックオーランタンに素直な気持ちを綴るために手紙の草案を考えていた。ぐるぐると考えながら書いたため、他人に見せると恥ずかしい感じの代物になってしまったのだが、授業中に書いていたことが禍し、理事長のシャルロット・ハイドランジアに没収されてしまう。
 恥ずかしいので取り戻しを鳥坂橙也に命じる一ノ院凜奈だったが、保管場所である理事長の部屋までは、夜間、厳しい罠が張り巡らされていた。陰陽師を名乗る犬もとい狼の大狼真弦やソフィアことイェル・フルモワセらを仲間に引き入れて、一大奪還作戦を繰り広げるのだが…。

 風紀委員会副委員長の香河白蜜(ぐんぷくん)に頼まれ、スーツの実験でリゾート地に赴いた面々だったが、実地試験でテロリストの演技をしていたところ、本当のテロリストに襲撃されてしまう。

 中編三本収録という感じ。鳥坂橙也に対する思いを自覚する少女たちの姿や、現在の体制に隠された闇について仄めかされる。

正義の味方の味方の味方 (2)

通じ合うライバル
評価:☆☆☆☆★
 悪の秘密結社ゼロウ・ファミリーの総帥である一ノ院凜奈は、ただ一人残された怪人の鳥坂橙也と共に、祖父の知人だったシャルロット・ハイドランジアが理事長を務める白陽花学園DH学科へと転入した。悪の秘密結社を滅ぼした、正義の味方を育てる拠点である。
 無表情な冬咲姫紗希や魔女の出で立ちをした自称魔法少女の立花カノン、陰陽師を名乗る犬もとい狼の大狼真弦と親しくなり、正義の味方の味方としての日々を送る一ノ院凜奈だったが、鳥坂橙也が自分自身を軽く見て、簡単に自分の幸せを手放してしまえることに不満を感じていた。

 そんなある日、シャルロットの策略で、スキー旅行という名目の、ワールドクラスの怪人確保に駆り出された鳥坂橙也ことジャックオーランタンは、かつての同胞であるソフィアことイェル・フルモワセと再会する。

正義の味方の味方の味方

零細結社の生きる道
評価:☆☆☆★★
 悪の秘密結社ゼロウ・ファミリーの総帥である一ノ院凜奈は、祖父の知人だった白陽花学園理事長シャルロット・ハイドランジアの伝手を頼り、たった一人の構成員にして怪人の鳥坂橙也と共に、白陽花学園DH学科に転入することにした。白陽花学園は、十年前に悪の秘密結社を根こそぎにした、正義に味方を養成する学校である。
 DH学科はダークヒーロー学科の略。生徒たちは、正義の味方を目指す、出自に悪が紛れている者たちばかりだ。悪を嫌う教師の剣井英子には敵視されながらも、無表情な冬咲姫紗希や魔女の出で立ちをした自称魔法少女の立花カノン、陰陽師を名乗る犬もとい狼の大狼真弦など、良い仲間に恵まれ、無難に学園生活をスタートさせた。

 奨学生である彼らは、人助けをして奨学金を稼がなければならない。ちょっとヤバ目な猫の世話をしたり、学外で浮気調査のまねごとをしている内に、彼らは、正義が支配する世界の悪意にさらされる。

 単語選択の感性がいまひとつ合わない。零細だからといって弱いとは限らないし、立場が弱いからといって弱者とは限らない。それは相手の誇りを無視する単語であり、誇りを糧に生きようとする主人公たちに安易に当て嵌めてしまえるセンスは、あまりにも信じがたい。
 ギャグの鉄板である繰り返しを多用する会話文がお好きらしいけれど、さほど笑えるネタにはなっていない。ただ、後半の展開は好みではあるので、そちら方向にシフトした方が良い気がする。

 ちなみにタイトルは、「正義の味方」の味方(=「悪の秘密結社」)の味方という意味らしい。悪と正義の戦いは、正義を引き立てるお芝居なんだと。

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長

生徒会戦がキモなら、かっちりルールを固めて欲しかった
評価:☆☆☆☆★
 人間と魔物が共生する世界似テストケースとして設立された、人間と魔物の子供たちが一緒に通う高校。そこには人間側の勇者生徒会と魔物側の魔王生徒会があって、毎年抗争を繰り広げている。
 今年の勇者生徒会長に就任するのは、才色兼備の無敵超人伏城野アリス。そして、前魔王の気まぐれで魔王生徒会長に就任することになったのは、アリスの幼なじみで平凡人間の兎沢紅太郎。魔王は正体がばれたら負けなので、覆面をかぶって変装しているからアリスはその正体に全く気づかない。そして彼らの周囲には変なやつらが集まっているので、抗争も真面目にというよりは漫才的に進行する。
 そんな彼らだが、二つの生徒会が対立することにより生じる生徒間の不和を解決することができるのか。

 幼なじみ二人の能力と関係性、キャラクター同士の掛け合い、生徒会メンバーの容姿性格、それぞれ様々な作品に似ているな、と思うところはある。しかし、日々大量の作品が出版される現状を考えると、部分部分が似ることは不可避であり、基本部分がパクリでなければ、許容範囲内なのではないかと思う。
 あまり深く考えず雰囲気を楽しむ感じの作品だとは思うが、ベースにある生徒会戦のレギュレーションはもう少しきっちり決めておいた方が良かった気はする。最後の正体を暴くシーンなどは、ああいうやり方がアリなら適当にスケープゴートを選らべばすむ事だし、後出しジャンケンみたいなことも可能になる。だから判定勝ちというのは有り得ないと思うんだよね。

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