有里紅良作品の書評/レビュー

桃と鬼の轍 なぞらえ屋秘匿文書

世の中にしかれる因果の轍
評価:☆☆☆☆★
 高校生の榊原真沙美は、中学時代の親友・小林麻耶から急な呼び出しの電話を受けた。その切迫した様子に、急いで待ち合わせ場所の新宿に向かう。その場所で偶然に会ったクラスメイトの坂東亮輔と共に接したのは、麻耶が飛び降り自殺をしたという警察からの電話だった。

 急な自殺に納得できないという真沙美を連れて実家の骨董屋に帰った亮輔は、事件の真相を明らかにする協力を申し出る。亮輔の一族は、なぞらえ屋という、強者や権力に虐げられる人々を救う生業を代々続けてきたという。
 なぞらえとは、現代風に言うならフラグだ。戦場で婚約者の話をした兵士が死ぬ、シャワーシーンの後で怪物に襲われるなど、何かが起きれば必ずあることに至るという、目に見えない因果の轍がこの世にはある。そんな轍を読み、そこから抜け出すために別の物語になぞらえて轍を変えるというのが、なぞらえ屋の技なのだ。

 かくてなぞらえ屋が挑む女子高生の自殺の真相にある金と欲望の渦は、桃太郎という日本古来の物語のなぞらえに守られ、多くの少女たちを贄としていた。
 そのなぞらえを破って犠牲者を救い出し、加害者たちに報いを与えることが出来るのか?なぞらえ屋たちの技術を凝らした戦いが始まる。

 作者の文章に接するのはおそらく「HAUNTEDじゃんくしょん」以来だが、懐かしくてとりあえず購入した。もともと舞台にかけられた本を、オリジナル小説としてまとめたものの様だ。
 色々と伏線は張られているので、余裕があれば続編も出していただけるとありがたい。

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