赤城大空作品の書評/レビュー

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (4)

中折れはしないでっ!
評価:☆☆☆★★
 《SOX》のエロ絵師である早乙女乙女が、自分の描きたい絵だけを描く環境を求めて、鬼頭慶介の許へと走ってしまった。彼女を説得して戻らせようとするものの、もはや言葉が通じる状態ではない。
 そこで提案されたのが、鬼頭慶介の傘下にある《ベーコンレタス母の会》《震激の尻》《哺乳類》《絶対領域》の四大下ネタテロ組織の代表者と、華城綾女、奥間狸吉、鬼頭鼓修理ら《SOX》が対決して、早乙女乙女に審判を務めさせるというものだった。

 奥間狸吉の中学時代の同級生である濡衣ゆとりも、敵の代表者として勝負に関わってくる。

 今回の下ネタの多さは半端じゃない。しかし、同じような展開にちょっと飽きてきたな。

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (3)

周囲の思惑
評価:☆☆☆☆★
 時岡学園を席巻した《蒸れた布地》は、雪原の青が率いる《SOX》によって一掃された。しかし、その行動は悪としてレッテルが張られ、公序良俗健全育成法に抵抗する他の組織も、《SOX》を危険視するようになってしまった。それは、彼らを支援する鬼頭慶介の意向でもあった。
 そんな状況を憂いつつ、夏休みに華城綾女の養母である華城撫子が女将を務める高級温泉旅館に滞在することになった奥間狸吉は、中学時代の同級生の濡衣ゆとりと再会する。一方、早乙女乙女は求められる絵と自身の欲求の間のギャップに耐えきれなくなってきていた。

 温泉街で繰り広げられる奥間狸吉に対する特訓と混浴。アンナ・錦ノ宮の欲求暴走から逃れてきたものの、誘惑には事欠かない状況となっている。

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (2)

パンツ狂想曲
評価:☆☆☆★★
 公序良俗健全育成法により装着者の言動を監視する情報端末PMが義務化され、青少年は卑猥という概念を理解できないように教育されていた。その現状を憂慮する組織である《SOX》は、雪原の青とあだ名されるペロリスト華城綾女と奥間狸吉、早乙女乙女を中核とし、卑猥な教育を青少年に施そうとしていた。
 恋愛感情と性欲を混同した生徒会長のアンナ・錦ノ宮から貞操を狙われ逃げる奥間狸吉は、鬼頭鼓修理という中学生を助ける。《SOX》に憧れるという彼女を雪原の青に紹介し、彼女の教育係を任された狸吉だったが、鼓修理の有能さに打ちひしがれる日々を送るようになる。

 そんなとき、時岡学園には《蒸れた布地》を名乗る、《SOX》に賛同した下着泥棒の集団が跋扈するようになった。このままでは、下着泥棒の迷惑さにより《SOX》の評判と理念まで穢されてしまう。それを阻止すべく、密かに不破氷菓らと協力し《蒸れた布地》狩りをおこなう《SOX》だったが、生徒会側も切り札として善導課から月見草朧という人物を風紀委員長に就任させ、取り締まりを強化することになってしまうのだった。

 アンナ・錦ノ宮の壊れっぷりがすごい。表紙の時点でアウト気味だが、口絵は完全にアウト。これで教育が上手くいったと思っている錦ノ宮祠影は幸せだ。
 前巻よりは社会的対立軸が明確になってきており、また、呼吸するように吐かれる下ネタギャグも冴え渡っていて良いのだけれど、敵に成り得る鬼頭鼓修理がスポイルされてしまった感があるし、月見草朧も不発でポンコツだったので、もっと魅力的な敵が欲しいところだ。

下ネタという概念が存在しない退屈な世界

奇抜なだけで主張がない
評価:☆☆☆★★
 公序良俗健全育成法が成立し、装着者の言動を監視する情報端末PMが義務化されてから十年が過ぎた。制限される言動は、猥褻な単語図画の流布、つまり下ネタを周囲に広める行為である。この結果として、下ネタに興味しんしんながら、下ネタを知らない高校生たちが誕生した。
 その中でも、エイチ禁止法を主導するソフィア・錦ノ宮がPTA会長を務める時岡学園は風紀優良校であり、生徒会長のアンナ・錦ノ宮を筆頭に、ゴリラ顔の轟力雷樹や、眼鏡の副会長の華城綾女が、風紀の維持に努めていた。そんなアンナにあこがれて編入した奥間狸吉は、奥間善十郎という下ネタテロリストを父に持つ、下ネタを理解できる希少な人間だった。

 そんな彼の性質に目をつけたのは、ハエの交尾からの類推で下ネタを研究する少女の不破氷菓や、雪原の青とあだ名されるペロリストだった。彼女たちに半ば脅されて下ネタを流布する手伝いをさせられることになった狸吉は、青春画家の早乙女乙女を春画家にジョブチェンジさせる手伝いをさせられることになる。

 政府規制によって下ネタが浄化された世界で、下ネタを取り戻して健全な社会を構築しようと戦う少年少女たちを描く…という感じかと思いきや、たんに下ネタを叫びまくるだけのお話だった。黒板とかに落書きして喜んでいるのは、小学生くらいで卒業しておいて欲しいもの。
 あらすじから推測すると、何か主張を持って下ネタ規制を取り上げたように好意的に解釈していたのだが、読んでみるとその期待は裏切られた。主張があるように見せかけて、そんなものは全くないのだ。がっかりである。がっかり過ぎて、あまりコメントを書く気力もない。

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