天沢夏月作品の書評/レビュー

吹き溜まりのノイジーボーイズ

ヤンキーの更生
評価:☆☆☆★★
 一年前に吹奏楽部を作ろうとして失敗し帰宅部となった一条亜希は、担任の平野教諭の依頼を受け、旧講堂にたむろするヤンキーたちに音楽を教えることになる。
 黒川竜太や玉木孝輔を手なずけ、夏目茜まで取り込んだ所で、伊庭悠という難物が現れ、全てを台無しにしようとする。彼を説得するためには、過去の、野々瀬由紀との出来事に踏み込まなければならなかった。

サマー・ランサー

メジャーからマイナーへの転向
評価:☆☆☆☆★
 範士八段の大野将英を祖父に持つ大野天智は、父親の仕事の関係で転校を繰り返し、転校先で圧倒的な実力を示しつつも孤立することを繰り返していたため、一部では風来坊(バガボンド)と呼ばれる若き剣士だった。しかし、祖父を亡くしたことを契機として、それまで祖父の存在を妬まれ嫉まれて蓄積していたものが吹き出し、剣を置いてしまった。
 そんなときに入学した高校で、大野天智は羽山里佳という少女と、槍道に出会う。剣道で腐っていた心の靄を吹き飛ばすような彼女の爽快さと眩しさに見せられ、槍の道を目指したいという思いを抱いた彼だったが、その心に染みついた闇は簡単に拭い去れるものではなかったのだ。

 奈良興福寺主催の宝蔵院流槍術演武及び全国槍道選手権大会団体戦を目指して練習を始める大野天智に、様々な試練が襲いかかる。
 第19回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作。構成上、社会常識的に見てあり得ない行動が随所に見られるが、槍道という存在しない競技を生み出し、マイナー・スポーツの悲喜こもごもを描いているところは面白い。

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