青葉優一作品の書評/レビュー

復讐ゲーム ―リアル人間将棋―

後味は相当悪い
評価:☆☆★★★
 将棋部の南誠一郎と後藤信二は、それぞれの彼女である吉本花楓と幸原美咲に楽しい日々を送っていた。しかし、いじめを受けて学校にこれ亡くなった元将棋部員の箕輪芳次が、何者かの手引きで、文化祭前の学校をデスゲームの舞台へと変えてしまう。
 人間を駒に見立てた将棋で、取られたり負けたりすれば死んでしまうルールを課せられて、二人は将棋を指すことになるのだが…。

 後味は相当悪い。絶対二人は破局だよ。

王手桂香取り! (3)

最強のライバル
評価:☆☆☆☆★
 大橋桂香と共にペアマッチ将棋大会に出場することにした上条歩は、先輩の中学最後の思い出を作るべく、優勝を目指す。しかし彼の前に、大橋名人と双璧をなす棋界トップの●●の弟子だという小学三年生の■■が現れる。
 将棋の合間に先輩と遊園地に行って青春を満喫する歩だったが、プロ棋士を意識するようになり、大橋名人への弟子入りの話題が出るに至って、現在の師匠である将棋の神の女王がすね始める。

 大橋名人への弟子入りを賭けた名人とのハンデ戦を迎える歩だったが、この対極に勝利すれば女王たちが消えてしまうかもしれない。そんな不安を抱えつつ指す対局の結末は?

 第1部完。しかし第2部があるかは不明。

王手桂香取り! (2)

アマチュアの最高峰を攻略せよ
評価:☆☆☆★★
 中学校将棋団体戦の東日本代表となった大橋桂香と上条歩だったが、西日本代表は、昨年、二階堂有也が手も足も出なかったという、最強の呼び声も高い西本だ。上条歩は、さらなるレベルアップのため、歩、香車、桂馬の駒娘たちよりも圧倒的に強いという王将の駒娘から指導を受けることになる。
 女王からの厳しい指導の合間に、桂香先輩とvs形式の練習をしたり、たまの息抜きの初デートを挟み、桂香先輩は最後の中学生名人戦に挑む。申し込みを忘れた歩が見守る中、西本と対局する勝負の結末は?

 そしてその対局を見た女王から、西本が奨励会三段相当の棋力を持っていると知らされた歩は、桂香先輩に勝利を献上すべく、必死の勉強を続ける。そして中学校将棋団体戦決勝の日がやってきた。

王手桂香取り!

将棋で女の子を振り向かせよう
評価:☆☆☆★★
 名人の娘で将棋部部長の先輩である大橋桂香に憧れて将棋に打ち込む中学一年生の上条歩は、頑張っているのにアマ初段から上に中々上がれない。いつも行く将棋道場では、プロ棋士の息子の小学三年生である相良純一にバカにされる日々を送っている。

 そんなある日、誰もいないはずの上条歩の近くから女の子の声が聞こえてくる。顔を上げると、そこには三人の美少女がいた。
 自分たちは歩が祖父から譲り受けた将棋駒であると言い、歩、香車、桂馬を名乗る。彼女たちはふがいない歩の棋力を上げるべく、はじめて実体化したのだった。

 将棋の神に匹敵するという棋力を以て鍛え上げられる歩はみるみる棋力を上げ、1カ月足らずでアマ四段に匹敵する程度の実力を得るようになる。そんな彼の前に現れたのは、憧れの大橋桂香が一も度勝ったことのない幼なじみの二階堂有也だった。歩は桂香に男として見てもらうため、有也を大会で下そうとする。

 将棋を題材にした部分は意欲的だが、あまりにも簡単に上がっていく棋力に現実感を感じられない。それゆえに、強敵を下したという爽快感も薄れがちだ。また、桂香との関係性もあまりにも簡単に変化してしまい、生身っぽい少女さが感じられない。それゆえに、将棋に真摯に打ち込む桂香の悩みも切迫感を以て感じられない。つまり一言で言うと全てが薄っぺらい。
 ただのラブコメを描きたいだけならば、将棋を題材に取る必要はないだろう。将棋を題材に取ったからには、将棋に打ち込む少年少女としての姿も深く描くべきと感じる。また、将棋に詳しくない立場から見ると良く分からない用語がたくさんで困る気もする。第20回電撃小説大賞銀賞受賞作品。

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