岩佐まもる作品の書評/レビュー

項目 内容
氏名 岩佐 まもる (いわさ まもる)
主要な著作
  • コードギアス 反逆のルルーシュ (0, 1, 2, 3, 4, 朱の軌跡, 生徒会事件簿)
  • コードギアス 反逆のルルーシュ R2 (1, 2, 3, 4, ナイトオブラウンズ)
  • ラストエグザイル‐銀翼のファム‐(1, 2)

 岩佐まもるさんの作品の書評/レビューを掲載しています。

ラストエグザイル‐銀翼のファム‐ (2) 空を翔る少女たち

絆の真価が問われる時
評価:☆☆☆☆☆
 TVアニメ「ラストエグザイル‐銀翼のファム‐」のノベライズ版で、第1話〜第9話に相当するエピソードを収録している。
 アナトレーの特殊戦艦シルヴィウスの一室を領土として、トゥラン亡命政権は樹立された。国王代理代行のミリアと従者のテディだけの、小さな政府。それを守るのは、カルタッファル空族のファム・ファンファンとジゼル・コレット。艦長のタチアナ・ヴィスラとの契約により、ファムの歳の数だけアデス連邦の戦艦を狩り、ミリアの艦隊を仕立てるのだ。

 連邦貴族ロシャナク・ババール男爵の御座艦を賭けて、闇のヴァンシップ・レースを仕掛けるファムとジゼルだったが、その対戦相手は、グランレースのファイナリストであるヤシュバル・アナンド、不敗の隼だ。憧れのグランレースパイロットに一瞬気押されるファムだったが、ミリアのために勝負に出る。
 その頃、アデス連邦内部では、総統ルスキニア・ハーフェスによる、抵抗勢力の掃討による内政強化作戦が進められていた。そしてその矛先は、反対派貴族だけでなく、空族たちにも向かってくる。

 強固な友情で結ばれているかに見えたファムとジゼルだが、それもその関係に胡坐をかいてしまえば、いつかは壊れる時も来る。信頼は独断となり、驕慢となって人をむしばむ。だが本当に確かな信頼があれば、それはほんのちょっとした努力で、取り戻すことも出来るのだ。
 空戦ドクトリンの違い過ぎる軍隊同士がこれから衝突していく訳だけど、これまで登場した設定を見る限り、一方的な戦闘になる気がするんだけどな。


ラストエグザイル‐銀翼のファム‐(1)

翼に風を!
評価:☆☆☆☆★
 TVアニメ「ラストエグザイル‐銀翼のファム‐」のノベライズ版で、おそらくは第1話〜第5話に相当するエピソードを収録している。
 かつて惑星上の環境が激変した時、人類には二つの選択があった。ひとつは悪化した環境の中で生きることを選んだ人々。もうひとつは軌道上の人工物に移り住んで環境の回復を待つことを選んだ人々。前者の末裔がアデス連邦であり、後者の末裔がトゥラン王国などの国々である。

 そして現在、アデス連邦総統ルスキニア・ハーフェズは、帰還者たちの国家を粉砕すべく、侵略戦争を繰り広げていた。標的となったトゥラン王国は、第一王女リリアーナ・イル・ヴェルク・クトレットラ・トゥランと第二王女ミリア・イル・ヴェルク・クトレットラ・トゥランを使者に立て、聖地“グラン・レイク”での和平交渉に臨もうとする。
 しかしアデス連邦はそれを一蹴。トゥラン王国へと圧倒的な兵力で進軍していく。それを見たカルタッファル空族のファム・ファン・ファンは、ナビのジゼル・コレットと共に、小型ヴァンシップ「ヴェスパ」を駆り、王女たちを助けようとする。

 当たり前といえば当たり前だが、空戦の迫力はアニメにはかなわない。結局ノベライズは、そういう部分ではなく、他のところで勝負しなければならないことになる。
 今巻で言えばそれはどこか?個人的な見解では、アニメの描写を越えている部分は見当たらない。ファムの熱さも、ジゼルのナビとしての優秀さも、ミリアのツンデレっぷりも、アニメと同程度かそれ以下の描写でしかない。あえて言えば、ミリアの空気読めなさが少し薄れているくらいか。後半はノーチラス号っぽさも感じた。

 それでも、物語自体がワクワクするものなので、そのこと自体は伝えてくれるノベライズだと思う。

コードギアス反逆のルルーシュR2 TURN-4-

女性陣の黒さが前面に
評価:☆☆☆☆☆
 シャルルとマリアンヌから真実を告げられ、愕然とするルルーシュ。しかし、スザクから覚悟を迫られたルルーシュは彼らと決別し、アーカーシャの剣を破壊する。現実世界へと帰還し、ブリタニア皇帝となったルルーシュの前に現れたのは、トーキョー租界で行方不明になった妹ナナリーだった。
 今回の範囲から考えると、ナナリー視点での描写は言葉足らずになるかと思ったのですが、実際はむしろ彼女の視点で描いて正解。シュナイゼルに取り込まれたナナリーが、その陰でどんなことを考え、どんな計画を立てていたかが明らかになりました。おかげで、アニメ最終話のルルーシュとナナリーのやり取りが補完されました。
 これを読むと、シャルルの計画の首謀者はむしろマリアンヌだったという風に印象が変わると思います。また、アニメの最後のシーンの意味合いも、ちょっと変わってくる気がします。

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コードギアス 反逆のルルーシュ R2 ナイトオブラウンズ

ナイトオブラウンズの穏やかな日々
評価:☆☆☆☆★
 ジノとスザクの出会いの物語、アーニャの日常、セシルとミレイの事後談、マリアンヌのラウンズ時代のストーリーを収録。すべて「ザ・スニーカー」掲載作です。特に、マリアンヌのお話に登場する人物たちと現在の同じ人たちを比べると面白いかも。イラスト担当の方が本編の時と違うので、そこに違和感を覚える人もいるかもしれません。

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コードギアス 反逆のルルーシュ R2 TURN―3―

意外にストーリーをなぞっています
評価:☆☆☆★★
 アニメを見ないでこの本を読んでいる人はいないと思うので書きますが、シャーリーの死から、フレイヤが政庁で炸裂するあたりまでをノベライズ。これまでは、スザクやナナリー視点で書かれているところが多かったですが、今回は展開上仕方ないのか、ほとんどアニメをなぞっている感じです。ただし、ルルーシュ視点少な目の方針は継続されているため、シャーリーが亡くなるシーンはほとんどカットされています。ある意味、ユフィーが亡くなるシーンよりも、ルルーシュに与えた衝撃は大きかったと思うので、ここはもう少しフォローしても良かったかも。
 個人的にはフレイヤの詳しい説明が入るかと思って楽しみにしていたのですが、あまり詳しい記述がなく、ちょっと残念でした。

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コードギアス 反逆のルルーシュR2 TURN―1―

本領が発揮されるのか?
評価:☆☆☆☆★
 個人的には、テレビアニメのノベライズは難しいことなのではないかと思う。少なくとも、原作のアニメ化という、逆の作業に比べては。この理由の一つとして、文章に比べて、映像は余分な解釈を許さない、ということが挙げられる。
 本読みには、行間を読む、ということが許される。例え文章に明確には書かれていなくとも、明記されていないからこそ、想像(=創造)の余地が生まれる。一方で、映像は文章に比べて内包する情報量が多い代わりに、余分な想像の余地を残さない。この縛りの強さが、クリエイターとしての作家を縛り、つまらないアニメのノベライズが生み出される原因になっているのではないかと思う。
 作者は、その縛りから抜け出し、自らの視点で作品を描き直そうとしているようだ。その試みは、前作である「コードギアス反逆のルルーシュ」では、あまり上手く行っているとは言えなかった。原作がルルーシュ視点であるのに対し、スザク視点で物語をとらえようというのがその試みだったが、原作のほとんどの期間においてスザクはルルーシュの正体を知らないという事情もあり、ストーリー展開に無理が出て、原作を知らずしては何が起きているのか把握できないという現象が生じてしまっていた。(それでも、後半になるに従って、別キャラ視点でのストーリー補間を行うことにより、この問題はだいぶ解消されたが)
 しかし、今回はこの試みがおおよそ成功しているように思う。何しろ、冒頭が原作では触れられていない、ナナリーのブリタニアでの行動から始まっている。これにより、原作では唐突に思えたナナリーの行動原理が説明される形となっており、良い形でメディアミックスができたといえよう。おそらくこれには、原作サイドからの情報提供量が以前より増えたという事情もあるのではないか。なぜなら、本作は第1話〜第6話に該当しているが、第12話まで登場しない皇族が登場しているためである。
 ストーリーの全体像および背景を把握した上で上梓されるであろう、今後の続編にも期待したい。

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