入江君人作品の書評/レビュー

 入江君人さんの作品の書評/レビューを掲載しています。

王女コクランと願いの悪魔 II

人間を縛る現実
評価☆☆☆★★
 悪魔から人間へと戻ったレクスだったが、後宮に男がいることは問題であり、当然、騎士隊によって追い出されることになる。叩きだされたレクスは、ワイズワードという男娼の元締めの下で働くマーシュに仕事を斡旋される。
 一方、レクスとの再会を望むコクランは、その権力を駆使し、レクスを自らのもとに取り戻そうとするのだった。

神さまのいない日曜日 IX

期限までの3日間
評価☆☆☆★★
 アリスとナインの戦いに割り込んで死んでしまったアイ。彼女は死者となった自分を埋めるのか、あるいは?
 シリーズ最終巻。

王女コクランと願いの悪魔

後宮の悪意
評価☆☆☆☆★
 ランダナリア帝国皇帝ギルデガルア・ディアス・テル・ビルム・アレクサの第一王女であるコクラン・ディオス・アルケイアス・レジーナが伯父から贈られたランプをこすると、そこから願いの悪魔が現れた。願いを聞かれた王女はこう答える。「さっさと帰って二度と来るな!」

 あまりのことに絶句した悪魔は、彼女の真なる願いを暴くため、彼女のもとにとどまることにする。彼女の住む後宮は、女性たちの悪意と嫉妬、陰謀渦巻く場所だった。
 後宮に来たばかりで勝手がわからず、ヒルディナン・リッツ率いる一派から嫌がらせを受けるメイディ・クロッセル、王女に突っかかってくる従妹のアイネ・ダイナパレス・オムリス、王女に悪意を抱く伯母のダイア・ダイナパレス・オムリスなどとの出来事から、王女を取り巻く環境を悪魔は理解していく。しかしそれは、王女が悪魔を理解していく時間でもあった。

魔法の子

魔法が奪ったもの
評価☆☆☆☆★
 あるとき、子供たちは誰もが魔法を獲得した。その魔法は、二十歳までの間に、毎年10%ずつ失われていく。だが、彼らは特殊災害指定生物という存在に狙われ、周囲に多大な被害をもたらすため、魔法を使う子供たちを時島に隔離する政策をとっていた。
 特殊災害指定生物に攫われた妹の相馬小夜を探すために旅立とうとしていた魔法喪失者の相馬アキラは、召喚領域の発現が認められ、魔法の再獲得者として召還されることになった。起源までに出頭しなかったアキラを拘束にやって来たのは、別れたもう一人の妹の相馬凜だった。

 彼女に連れられて時島へと向かったアキラは、幼馴染の瀬戸洋二に再会し、チューターのクリシュナ・シヴァ・桜田ノアと出会うことになる。そして魔法と考え方を巡り、ノアと対立する事になるのだった。しかしやがてノアの抱えている苦悩が明らかになる。

神さまのいない日曜日 VIII

万能の魔女
評価☆☆☆☆★
 封印都市オスティアで二つのイベントが開催された。セリカを連れた墓守スカーとユリーの結婚式、そして、魔女旅団のマダムとの戦いにより死んだ市長ベンドーらの葬式だ。そのイベントも終わったオスティアで、イソラ・エドワーズが生んだ黒面から、一人の少女がやってくるのをアイ・アスティンとアリス・カラードは目撃する。
 黒面は一生に一度しか通過できない。ゆえに、黒面の向こうで生まれた人間しかやってくるはずはないのに、向こうで生まれたにしてはやってくるのが早すぎる。名前がないという少女にナインという名前をつけたアイは、ナインを自宅に連れて帰る。

 市長となったディー・エンジー・ストラトミットスがナインから聞き取った名前はウラード・エル・サイカヴァッティナイン、万能の魔女の名前だった。

神さまのいない日曜日 VII

それぞれの役割
評価☆☆☆☆★
 封印都市オスティアを解放し、人々をこの世界に呼び戻したアイ・アスティンたち。そこに残ったのは、イソラ・エドワーズが生み出したという黒面だ。そして、その黒面とアリス・カラードの罪を裁くべくやってきた魔女旅団のマダムは、アイたちの行動により暴走してしまい、オスティアを襲い始める。
 陪審員としてきていたフェルミゴーラ外周貴族ノイレーフェンやオルタス独立大使ダストビリーバーはいつの間にか姿を消し、残ったディー・エンジーは何らかの想いを胸に、人々を魔女旅団との戦いに駆り立てる。一方、新しい能力の使い方に目覚めつつあるアリスを痛ましく見るアイは、捨てた世界を救うという夢の代わりに、新たな夢を見つけるのだった。

 神さまのいない世界には一つの決着がついたようにも見えるが、実はまだつづくらしい。

神さまのいない日曜日 VI

全てを見失う
評価☆☆☆★★
 オスティア少年少女学校3年4組が作り上げたタイムループする街を解放し、本人が望んでいないにも拘らずアリス・カラードを生き返らせてしまったアイ・アスティンは、自分の存在意義を見失いかけていた。
 世界を救う。その夢を実現するためには、誰かの願いを取りこぼすこともあってはならない。しかしアイは自分のためにアリスの願いを無視してしまったのだ。

 かつての情熱を失くし、何をしたらよいかも分からず、ただ周囲に心配をかけてしまうアイ。一方、幽霊ではなく実体を取り戻した西方の魔女ディーは、それまでの彼女の罪を清算すべく、新たな活動を始めていた。
 そんなとき、オスティアの街に魔女独立司法旅団とマダム・エキスプレス・レギオンズ・ヘイヴがやってきた。彼女たちは、世界を救う罪を裁くという魔女の配下たちだ。その背後には世界の国々の思惑が見え隠れする。そして今回、被告として指名されるのは…。

神さまのいない日曜日 (5)

みんなを救うには自分を殺す?
評価:☆☆☆★★
 アイ・アスティンは、アリス・カラーに連れられて、ある場所へと向かっていた。お連れはいつものように、ユリーとスカー、そしてセリカ。その場所とは、アリスと西の魔女ディー・エンジー・ストラトミットスの故郷であり、14年前の約1年間をループさせている彼らの学校だった。
 そこは、あの塔のような、誰かの願いを体現した場所。その場所では、14年前までの、当たり前のような世界が保証されている。しかしアリスは、自分たちを閉じ込めているその場所を破壊して、アリスを救って欲しいという。
 みんなを救うことを自身の夢とするアイは、当然のことながらその願いを聞くことになるのだが、それは彼女がその夢を手放す転機ともなる出来事になるのだった。

 アイやディーやスカーが制服を着ます。あと、相変わらず誤用や誤植が多いです。

神さまのいない日曜日 (4)

神なき世界に祈る場所
評価:☆☆☆☆★
 赤ちゃんのセリカを置いて失踪してしまった墓守の傷持ちを探すため、クラスメイトの多くと別れ、アイ・アスティンはアリスとディーと共に、再び旅に出る。
 そうしてやってきたのは世界塔という、数多くの墓守たちが集まってくる場所。この塔の中では、生者も死者もかかわらず、抱いた願いが叶うという。このために集まる死者を埋葬するために、墓守たちも集まっているのだ。

 スカーを探してどんどんと塔を登るアイやユリーたちは、祈るべき神が去った世界にあって、神に代わって願いを叶えるために塔を作り続けた人々の物語を知る。だがそれは、あくまで塔の中だけで叶う願い。世界を救いたいというアイの願いが叶う場所は無いのだ。
 しかし塔は彼らを誘惑するように、彼らの望む物を提供し続ける。そしてようやく到着する最先端で、アイたちは何を見るのか。

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神さまのいない日曜日 (3)

守りたい世界の違い
評価:☆☆☆★★
 墓守スカーと赤ちゃんのセリカを連れ、アイたちは死者の都オルタスの城を脱出する。世界を救うという夢を否定され、色々と学ばなければならないと自覚し始めたアイに、ユリーは学校へ行くことを勧める。
 アイの父である人食い玩具も通っていたという話を聞き、学校に興味を持つアイだったが、自分の夢を実現するためには立ち止まってはいられない!とばかりに、学校に行くつもりはなかった。しかし、突然現れた鬼教官風の教師に言い包められ、いつの間にやらユリーと分かれ宿舎の中にいた。
 学校にいたのは、自分と同年代の生者たち。初めて出会う存在に圧倒され恐怖すら抱くアイだったが、持ち前の負けん気を発揮して、徐々に自分の立ち位置を確立していく。だが、その学校は、普通とはかなり違っていた。

 初めて出会う同年代の子供たちが、自分とは違い周囲の状況に流されるまま、世界の崩壊を受け入れているように思えることに愕然とするアイ。しかし彼女たちの話を聞いていくうちに、彼女たちにも守りたい世界があるということを知る。それは自分とは大きさが違うだけだったのだ。
 そして、アイと同じ大きさで世界をとらえ救おうとする仲間たちとの出会い。これが彼女の今後の行動をどれだけ左右していくことだろう。

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神さまのいない日曜日 (2)

神さまはいないけど神のごとき力はある
評価:☆☆☆★★
 100万人以上の死者が住む死者の国、オルタス。旅に出たアイたちが拾った少年キリコを送り届け、その恩により普段は許されぬ生者の入国が認められ滞在することになった街で、アイは多くの死者たち、そして、オルタスの姫ウッラに出会う。

 何も考えていないような様子でありながら大胆な行動をとり、理屈ではなく真実にたどり着いてしまうアイに、初めて出会う人々は必ず振り回される。このアイのキャラクターを受け入れて楽しめれば、この本は面白い。
 前巻に比べてストーリーを動かすキャラクターが不足していて、アイの気ままに振り回され、何だかすっきりした感じがしないうちに終わってしまった気がする。

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神さまのいない日曜日

大きくなればいつか分かるよ
評価:☆☆☆☆★
 十五年前のある日、神様は突然世界を捨てた。子供は産まれず、人は死ななくなった。人が死なないことにより生まれる混乱を収束するため、神様が使わしたのは墓守という、人の女性に似せたものたち。彼女たちの手にかかれば、人はようやく永遠の眠りにつくことができる。
 そんな世界のとある小さな村。自称墓守の少女は、毎日せっせと墓穴を掘っていた。一日の仕事が終わり、帰ればあたたかな村人たち待っている。永遠に繰り返されるはずの日常は、人食い玩具を名乗るぶち壊される。そこから始まる自分探しの物語。

 世界観が面白い事はひとまず置くとして、個人的にキャラクターが上滑りしている様な印象を受けた。人は外見に左右されるけれど、精神年齢はその人が得た経験に依存すると思う。だから、あの話し方に違和感を感じて仕方がない。
 物語中で明示はされないが、人食い玩具は一人余分に殺しているはず。主人公たるアイに自覚がないこともあり、ここはさらりと流されるのだが、同じ構造の関係があとでもう一度登場する事から考えると、結構重視されている部分の気もする。ここではいったい何を言いたかったんだろう。

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