伊上円作品の書評/レビュー

 伊上円さんの作品の書評/レビューを掲載しています。

VAMP on the DEADLINE #3

三日間の延命
評価:☆☆☆★★
 《共生者/ジューナー》である須木水奈逆崎ヶ岳瑠姫乃のメイドである久慈臣愛恋、護衛の玖堂凛斗、飛塚祢亜を狙う《捕食鬼/ブレアー》のジグザ=ウェアソードが屋敷を襲撃してくるという情報が入ってくる。唯一の援軍としてやってきたのは、玖堂凛斗らの師匠である篠郭慧歌と、彼女が連れてきた、かつての事件の被害者の花芽入鞠果だった。
 師匠の篠郭慧歌はもちろんのこと、玖堂凛斗らをしのぐ実力となっていた花芽入鞠果に、襲撃までの三日間、集中的な訓練を受けることになる。しかし、三日間の猶予があるという思惑を裏切り、レティット=メイリーレーンがひそかに侵入、玖堂凛斗を拉致していってしまう。

 シリーズ最終巻。

VAMP on the DEADLINE #2

自覚なき罪
評価:☆☆☆★★
 《共生者/ジューナー》である須木水奈逆崎ヶ岳瑠姫乃の護衛である玖堂凛斗は、メイドの久慈臣愛恋と買い物に出かけて帰宅したところ、《星屑の射手》リフェル・九頭限の襲撃を受けて殺される。
 能力によって生き延びた玖堂凛斗は、その襲撃の背後に、《捕食鬼/ブレアー》で《空操魔侵》を自称する吸血種バルベリオ・ヴァルヴェルヴとその《兵儡/レインク》であるアルウィーン・ルティエンスが居ることを知る。リフェルは、飛塚祢亜と同じように、家族を吸血種に殺され、吸血種となって生き延びた元人間だった。

 恐怖を利用され、仇である吸血種に思うままに操られて罪を犯す憐れな元人間に対し、断罪すべきか許すべきか、統治者としての選択を迫られる瑠姫乃と、その護衛として、限られた能力を使い潰して生きる凛斗の選択が描かれる。巨乳率高め。

VAMP on the DEADLINE

デコボコ正義の味方
評価:☆☆☆★★
 人との共存を目指す共生者という純血吸血鬼である須木水奈逆崎ヶ岳瑠姫乃に仕える玖堂凛斗は、捕食鬼という人間を襲う吸血鬼に血を吸われそうになっていた花芽入鞠果を助ける。さらには、先輩の石宮美稀に告白され、瑠姫乃から白眼視されたり、同僚である久慈臣愛恋からはからかわれたり、配下である飛塚祢亜には心配されたりする。
 ところがそれは、街を震撼させる連続吸血鬼事件の序章に過ぎなかったのだ。

 良い吸血鬼と悪い吸血鬼の対立を軸に、吸血鬼たちのほんわかラブコメが繰り広げられる。人間を守る吸血鬼一族とその従者たちなのだが、その使命的にはかなりお間抜けな結果となっている。

ドラゴンブラッド (3)

折り合いがつけられない少女
評価:☆☆☆★★
 天音櫛秋良はかつて死んだところを、千道寺華散により<雷哮神龍>という化け物を宿されることで生き返った。そして彼の手伝いをすることで異能の事件にかかわり、元殺人鬼の全無壊世や、元異能もちの梔子緩杷というふたりの少女と同居することになっていた。
 そして今回は、秋良と同様に千道寺華散の眷族となった、実塚美鐘と<鋏影狐鋭>に関わることになる。彼女を殺す依頼が来たのだ。

 自身が<雷哮神龍>と何とか折り合いをつけているため、彼女も同様にして欲しいと願う秋良だが、華散は依頼だからと頑なに彼女を殺そうとする。そしてついには、秋良を事件から外してしまった。
 しかしどうしても納得がいかない秋良は、皇楼院藍や灰金諸哉の協力も得て、何とか対処しようとする。しかし彼を敵と判断した<鋏影狐鋭>は、悠錐在歌までも事件に巻き込んでしまうのだった。

 今回も前回までと同様、女の子を助けるという構図は変わっていないのですが、どちらかというと秋良自身が自分の問題に立ち向かうというニュアンスが加わっているように感じた。

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ドラゴンブラッド (2)

もう一人拾っちゃいました
評価:☆☆☆★★
 元殺人鬼の全無壊世と同居生活をしている天音櫛秋良は、目の前に降って来たチャイナ服の少女梔子緩杷を匿うことになる。彼女は様々な連中に追われているらしいのだが、頑なにその理由を言わない。
 同じころ、秋良の通う学校に、灰金諸哉という少女が転校して来る。どうやら彼女は皇楼院藍と知り合いらしい。そんな新しいキャラクターたちを交えて、異能を持った少年少女たちのすれ違いとぶつかり合いがはじまる。

 2巻はキャラクターが増えたために、その紹介に費やされた感が無きにしも非ずという印象がある。ぜひ3巻では、彼らを動かして物語を展開してもらいたいと思う。

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ドラゴンブラッド

それでもぼくらは生きていく
評価:☆☆☆☆★
 天音櫛秋良は白髪の容貌の17歳、高校二年生だ。両親を相次いで亡くし、自身も一度死んだ身であるせいかは分からないが、学校に行っても授業にはほとんど出ず、大概は屋上で過ごしている。そんな彼によく関わってくるのは、不良として孤立し同じ屋上によくいる皇楼院藍と、担任教師であり隣家に住む幼なじみでもある悠錐在歌くらいだ。
 一度死んだのになぜ秋良が生きているか。それは死にそうになっているところをある悪魔に助けられたからだ。そのおかげで雷哮神龍という眷属として転生した彼は、その恩に報いるため、依頼を受けて事件を解決する。今回の事件は、秋良たちの住む街で起きている超能力事件だった。
 火葬ライブ、超級ダイブ、歪曲アート、肉体ロストと名付けられた事件の現場を調査しているところで出会う、事件の容疑者と、そいつを殺そうとしている殺人鬼、全無壊世という16歳の少女。血縁に依らない殺人鬼の一族であるというその少女と協力関係を築くことになった秋良は、事件の影にダストアウトという麻薬の製造者が関与していることを知るのだった。

 殺人衝動だったり、雷化だったり、自然発火だったり、自分ではどうしようもない何かに規定されていると感じている少年少女が出会い、それぞれに影響を与えていく。自分の故郷を持たない人たちが、自分たちの家を、集う場所を見つけていくようにも思える。
 一部設定はどこかで見たことがある気がするが、バイオレンス風ラブコメという感じの作品です。あと、変に難しい言葉は使おうとしなくても良いかも。

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