石川あまね作品の書評/レビュー

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シー・マスト・ダイ

生存競争に人間の感情をブレンドする
評価:☆☆☆☆☆
 世界には様々な超能力者がいる。彼らは幼少期の頃に受けた刺激で能力を開花させ、精神的・肉体的ストレスによってそれを強化させていく。日本でも、新生児の4割は超能力者としての才能を持っている。特にその能力の強力化は、十四年前の二月二十五日に起きた平成大震災以来顕著だ。
 平成大震災により都市機能が移転し、地価下落で住民が増えた東京に新設された港区第二十二臨時中学校に、武装したテロリストが侵入した。彼らは騒ぐ教師・生徒を容赦なく射殺し、生徒たちに動かないように命じる。そして、生徒たちの超能力の強さを測定し始めた。

 まさにこの現場となった学校に通う矢口誠は、超能力値が13しかない一般人だ。友人の志水はるかのテレパスによって、侵入したテロリストが実は自衛隊の超能力部隊であり、彼らの目的が、いずれ世界を破滅に導く大超能力者がこの学校にいるという予知があり、誰かは分からないその人物を確実に殺すため、超能力値が高い人間から順番に殺していく計画を持つことを知る。そして彼の友人のはるかはまさにその対象となる人物だ。
 誠は彼を信じてくれる彼女を何とか助けたいと思うのだが、超能力の弱い身としては目前の暴力に立ち向かう術がない。とにかく状況に合わせて何とかしようとするのだが、そのうち、クラスのボス的存在である北島良平が暴走の兆しを見せ始める。

 世界を護るために世界を滅ぼす予定の人物をなりふり構わず抹殺しようとする自衛隊。そしてそのターゲットと思われる少女を助けたい少年。そんなセカイ系の王道チックな展開なのだけれど、一旦事件が解決した後に、状況は別の様相を見せ始める。
 とても内向きな内容を秘めた物語で、試していると思っていた側がいつの間にか試される側に回っていたり、あっけなく人が死んでしまったり、恐ろしいまでに自己中心的だったり、どこまでも閉じた物語だったりする。生存競争という本能的なものに人間の感情を混ぜ合わせると、こんな感じになっちゃうのかなあ?

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