いとうのぶき作品の書評/レビュー

 いとうのぶきさんの作品の書評/レビューを掲載しています。

未来日記E

切りだして映像にするだけなら
評価:☆☆☆☆★
 秋瀬或、高坂王子、日野日向、野々坂まおらの助力により、2nd我妻由乃の監禁から逃れることが出来た1st天野雪輝だったが、今度は8th上下かまどと、彼女に助力する7th戦場マルコおよび美神愛、孫日記所有者の宮代お鈴や難波太郎らを相手取ることになってしまった。
 ピンチに陥ったところに現れた我妻由乃を再び利用することになるのだが、自分の女を盾にする生き方に、戦場マルコは激怒する。

 そして未来日記を巡るサバイバルゲームは、11thジョン・バックスの登場を持って加速する。天野雪輝の両親である天野礼亜や天野九郎も戦いに組み込まれ、9th雨流みねねは刑事の西島真澄と共闘する。この戦いの至る場所には何があるのか。

 11thを巡る攻防戦が今巻のメインとなっている。そのあたりの駆け引きやバトルを楽しむ分には不足はないが、物語の全体構造を把握するには紙幅が足りな過ぎる。終盤、唐突に登場する「二巡目」の意味は、原作を読んでいない人には腹落ちしないことだろう。それに、色々とふっ切った雪輝がなぜ塞ぎ込んでしまったのかという理由も。そういう意味では物語の完全性にかけていると言わざるを得ない。


未来日記

ごっそり省いてぎゅっと凝縮
評価:☆☆☆☆★
 えすのサカエ「未来日記」第1巻から第6巻に相当するエピソードを、一部エピソードをカットする形でコンパクトに凝縮したノベライズ版となっている。我妻由乃、雨流みねね、春日野椿、秋瀬或を天秤の一端として、天野雪輝を描く形だ。一方で、豊穣礼佑や来須圭悟のエピソードは大幅にカット、由乃に振り回される雪輝のエピソードもかなり省略されている。
 そんなわけで、この程度の情報量ならば、何故ノベライズ版を出版する判断をしたのか、若干、疑問に思うところもある。それでも、描かれているエピソードは、心理描写が細かくなっている部分もあるので、全く価値がないというほどでもないかもしれない。でもこれじゃあやっぱり、由乃と雪輝の関係が薄くなっちゃう気もするんだよなあ。

あずけて!時間銀行 ご返済はお早めに

追い詰められる中で明らかになる心
評価:☆☆☆☆★
 時間銀行最大手のクロノス銀行第13支店に勤務するシーヌ・ポックルは、高校生の往時洋斗をアルバイトに雇い、彼が負った時負債返済できるよう、他者の過去の思い残りを解消して、その時間を回収している。
 ところが、シーヌの妹のシーネは、第13支店長という立場を利用し、また、時間犯罪者たちも利用して、シーヌを退職に追い込もうとしてくる。全ては姉を一人占めするために。

 シーヌと洋斗は、シャターン銀行のクッタ・バットレイやカイロゥ銀行のオムカ・エキータの時の精霊、同じ高校生バイトの十村勇海などの助けを借り、シーネの陰謀を乗り切ろうとする。しかし最後の手段に出たシーネは、洋斗の妹の陽奈まで巻き込もうとするのだった。

 本来は12話を10話にまとめたため急展開になっている部分もあるが、シーヌとシーネの関係を、洋斗と陽奈の関係に絡めることで物語はまとまった。そこに、シーヌと洋斗の関係の変化、というおまけもついてくるのだが。

 格別に面白いという要素もないかもしれないが、世の中に破綻する物語が多い中、きれいにまとまっているように思う。ただ、いくつか本編中で登場しない人物に触れられているのだが、これはどこかで描かれたのだろうか?

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あずけて!時間銀行 ご利用は計画的に

借時間返済に明け暮れる高校生
評価:☆☆☆☆★
 時の精霊たちが経営する時間銀行。その三大業務のひとつ、人間向けのリコレクト回収業務を担当する社員のシーヌ・ポックルに従って、高校生の往時洋斗はアルバイトをしている。
 リコレクトというのは、人の記憶の中にある、過去に縛られた時間のこと。後悔の記憶はその人生の中で何度も思い返され、蓄積されていく。それを回収して有効活用できるようにするのがリコレクト回収業務だ。洋斗は、自分が時間銀行から借りた時間を返済するため、この業務を手伝うことで時間を手に入れている。

 なぜ洋斗が時間を借金することになったのか、その事情は3話目で明かされる。逆に言えば、1話目・2話目は、なぜか分からないけれど、高校生が時の精霊と一緒に時間の取り立てをするという展開になっているのだ。
 構成として、序盤に謎を持たせたまま興味を引き、効果的にその謎を解明することで盛り上げるという手法はあるとは思うが、主人公の動機に関してそれをやると、設定自体がよく分からなくなる恐れがあるため、注意が必要である気がする。実際、この物語を読む時も、背表紙の梗概がなければ何のことやら分からなかった。

 ただ、3話目以降はその謎も明らかになり、遡って1話目、2話目もスッキリするので、段々面白い気がしてきた。設定の時間計算に若干分かりにくいところはあるが、考え方自体は面白いと思うし、それを人情話と結び付けているところが良い。冷酷な数字と人情という、相反するものが一緒に物語を作るのだから。
 さすがに連載時はもう少し分かりやすい構成になっていたと思うので、そちらの方が良かったのかもしれない。もし連載時もこんな感じだったとすると、読者はかなり置いてかれたんじゃないかな?ボクもてっきり、これが2巻以降なのかと思ってしまった。

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