石原宙作品の書評/レビュー

 石原宙さんの作品の書評/レビューを掲載しています。

世界で2番目におもしろいライトノベル。

エンドロールは終わらない
評価:☆☆☆☆★
 かつてラノベのセリフに救われ、ラノベ作家を目指しながらも諦め、ラノベを叩くことを趣味にしている高校生の灰川祭は、古本屋に張られていたバイト募集のポスターを見てしまい、元勇者のリーリャ・パヴロヴナ・リトビャノフ、獅子王騎士(ぱらでぃん)、織田切チロル、元魔法少女の赤瀬川夏恋に出会う。
 彼女たち、元主人公は、英雄係数という非日常への遭遇率を示す数値が異常に高く、物語が終わった後でも、非日常イベントに翻弄され、疲れ果てていた。そして灰川祭は、リーリャから英雄係数を譲渡する契約書を提示される。

8番目のカフェテリアガール (2) 東京おもてなしサバイバル

新たな制約
評価:☆☆☆★★
 お茶の木学園巨大学生食堂“大地”の【洋食】GRAND KITCHEN、【和食】蓬莱、【スイーツ】STRAWBERRY PEAK、【カレー&丼】Moccori壱番屋、【中華】錦城楼、【ファミレス】Rosso、【パン】Suprreme、【喫茶】満天のうち、一週間最下位が続いたら立ち退かなければならない。GRAND KITCHENとの戦いで最下位から浮上した満天には、あらたな課題が突きつけられた。
 ところがそんなとき、米田なごのには星野鹿七からのお誘いが、最上かこには蓬莱の外道ヶ沢庵からの申し出があり、二人はそれぞれ他店へ武者修行に行くことになってしまう。

 残された店長代理の天ノ川天は料理に対する異次元の感覚の持ち主であるし、百瀬しるびあは恥ずかしがりやで接客がまともにできない。米田シロは途方に暮れてしまう。さらには最上かこの妹である最上莉四まで現れ騒動を巻き起こすのだった。

8番目のカフェテリアガール 東京なごやかプロジェクト

味噌まみれだけじゃない
評価:☆☆☆☆☆
 名古屋人ながら味噌アレルギーかつ妹アレルギーになってしまった米田シロは、その秘密を隠したまま東京へと逃げ出した。そして入学したお茶の木学園に、兄大好きな妹の米田なごのが追いかけてくる。そんな彼女が兄を発見したのは、学食だった。
 お茶の木学園巨大学生食堂“大地”には、【洋食】GRAND KITCHEN、【和食】蓬莱、【スイーツ】STRAWBERRY PEAK、【カレー&丼】Moccori壱番屋、【中華】錦城楼、【ファミレス】Rosso、【パン】Suprreme、【喫茶】満天の8店舗が営業している。そのうちの、万年最下位である【喫茶】満天で、兄はアルバイトをしていたのだ。

 即刻、兄を名古屋に連れ戻そうとする米田なごのだったが、店長代理の天ノ川天の無垢っぷりや、暗殺一族出身の最上かこ、実はアイドルの百瀬しるびあ等を気に入り、兄を無理矢理連れ戻す代わりに、東京を名古屋化することで対抗しようとする。
 しかし、あまりのダメっぷりに理事長の愚留米院典明から目をつけられていた【喫茶】満天は、ぶっちぎりのトップである【洋食】GRAND KITCHENとのオープンキャンパス客数勝負で勝たなければ、即刻撤退という条件を出されてしまう。

 敵の星野鹿七や灯音らんぷは、恐ろしい能力を持った料理人たち。果たして彼女たちに勝ち目はあるのか?

 2ページごとに表題がついている。ジャンプネタが多い。何より名古屋押しがすごい。自分のホームグラウンドで、かつ、売れるように色々と仕掛けをしているところが良い。

くずばこに箒星 (2)

ガイノイドだと自称する少女
評価:☆☆☆☆☆
 希代の天才科学者・福山昏が経済界の出資を得て創立した了星学園には、グレードチェア制度がある。そこで第二席を占める福山英知は、第一席の神宮寺鳥子から義妹の水川小花の面倒を見ることを依頼され、学園の掃き溜めであるおそうじ部に関わった。そこで小花のネガティブスパイラルに翻弄され、越前なつきの男性恐怖症をフォローし、神経質すぎて何も作れない工学者の安達匠に出会い、成績以外の人に対する尺度を得た。

 引き続き、おそうじ部に在籍する決意を固めた英知たちの前に、ミュール=レストというメイド服を着た少女が落ちてくる。どう見ても人間なのに、彼女は自分をガイノイドだという。
 記憶をなくしたミュールのご主人さま探しを手伝うことになり、そして生徒会の森田待から依頼されたゴミをポケットに入れる逆スリ事件の調査を頼まれ、安達匠が手伝う機関車の修理作業に関わる英知は、その過程で、自らが探している母親の痕跡と、その母親がかつて関わっていた天梯会の跡取りである梯帝人の策略に遭遇することになる。

 母親に対する感情が入れ替わり、他人のことを考える余裕が生まれた英知は、自分とは全く違う価値観でありながら、美しい素晴らしいと感じられる生き方があることを知り、そのことに魅せられていく。その結果、それまでの自分では考えられない様な、他人に関わる選択を自然に出来るようになっていく。
 だがそれに対する妨害要素があることが明らかになるのが今回のお話だ。福山昏の名が持つ価値に群がり、そこから金銭的価値しか見出すことが出来なかった存在が、意趣返しのために学園を、福山の血縁である英知を狙ってくるのだ。

 仲間は助け合える存在だけれど、自分のせいで迷惑をかけることも起きてしまう。それに耐えられるかどうかが、次巻で英知が直面する問題になりそうな気がする。

くずばこに箒星

遊園地のアトラクションのごときバリエーションに富んだ展開
評価:☆☆☆☆☆
 希代の天才科学者にして変人の福山昏が潰れた遊園地を買い取って創立した了星学園。この学園にはグレードチェア制度という、成績・課外評価・生徒間投票によりランキングされる序列があった。
 その第二席である福山英知は、生徒会長にして不変の第一席である神宮寺鳥子からの依頼で、学園のお荷物扱いされているおそうじ部への潜入調査をすることになる。彼女たちが秘密裏に探している何かを調べよというのだ。自身も探し物がある英知は、その役に立つ可能性を鑑みてその依頼を受けた。

 しかし、おそうじ部は前評判以上に学園生徒から蔑まれていた。部員は全員一年生なのだが、部長の水川小花は極度のマイナス思考で自虐的だし、越前なつきは男に近づかれると緊張で石化する。唯一の男子である安達匠は、変質的なまでに細部にこだわる性格だ。そしていずれも席次は高くない。それも当然だ。席次には生徒間の評価も含まれるのだから。
 生徒会役員で、英知をライバル視する森田待(お子さま少女)からの挑戦を適当にいなしつつ、おそうじ部の秘密を探っていく英知。そして彼女たちと深くかかわっていくことで、席次に囚われていた英知に、別の価値観が芽生えてくる。

 単行本としてはそこそこ厚めで、盛りだくさんの要素が詰め込まれている。しゃべるインコとの漫才やら、自虐ネタや毒舌ネタへのツッコミ、序列システムが導く歪な人間関係、すれ違う親子、恋未満の淡い気持ち、そしてちょっとしたアクションだ。
 その全てに対応しなければならない英知は、かなりのスーパーマンと言えよう。これでヒロインたちがかなり残念でなければ、ちっとも共感できる要素がなかった。逆にヒロインたちが残念だからこそ、英知のスペックが生きる展開になったともいえる。

 今回は派手なイベントがあったので良かったけれど、学園内のラブコメに帰着するのならば、英知はちょっとオーバースペック気味な気がする。序列システムがあまり有効に活用されていなかったことも鑑みて、次巻以降の展開次第では、英知はただのツッコミキャラになってしまうのかもしれない。

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