飯山満作品の書評/レビュー

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ギャルバサラ 戦国時代は圏外です!?

色々と中途半端
評価:☆☆☆★★
 普通の優等生の太田あさみとサボリの常習犯の箕輪優、歴史オタクの高橋麻由と物理オタクの井川卓也の高校生4人は、タイムホールに飲み込まれて、約四百年前、三方ヶ原の戦いの戦場近くにタイムトラベルしてしまう。織田信長に庇護を求めるために岐阜城へと向かっている途中、川津信之が率いる野武士の集団に襲われてしまい、女子三人を逃がすために卓也は信之に捕まってしまう。
 無事、岐阜城下まで逃げのびた3人は、須藤寧々という女性に拾われ、信長や木下藤吉郎、徳川家康らとの拝謁が叶った。あとは現代に戻るだけだが、タイムホールの出現場所を知るのは卓也だけ。ときどきつながる携帯で連絡は取れているものの、状況はあまり良くない。そのうち、優は現代に戻っても居場所がないので残ると言いだし、麻由も参謀として織田軍に助太刀することになる。

 現代社会から切り離された途端、自分が何の役にも立たないという事実を突きつけられ葛藤する女子高生の姿や、逆に水を得た魚の様に生き生きとしだす女子高生の姿を描く。将来に漠然とした不安を抱く子どもたちが、明確な危険がある時代へと飛ばされ、しかしその中で精一杯に生きている人々を見て感化される、という風な演出がされている気がするが、あさみについてはあんまりそんな感じにはなっていない。
 携帯電話が使えるという設定で、敵味方両軍に現代人を配置しても連絡が取り合えるというところが、構成上のかなり無茶な部分ではある。また、せっかくの戦国時代なのに、戦場の描写がほとんどないところも残念。何のための戦国時代設定なのか。

 それに、彼女たちは川津信之を否定するけれど、自分たちだって未来の知識を生かして身の安全を図っていることは変わりがないではないか。生きるために自分が持っているものを使いきるというのは、正しい姿勢だろう。中途半端に良い子ちゃんで、いまいちすっきりしない。
 初めから帰れると分かっていることが、彼女たちの中途半端さの原因なのではないだろうか。

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