幾谷正作品の書評/レビュー

 幾谷正さんの作品の書評/レビューを掲載しています。

神童機操DT−O phase03

広がりすぎて薄まる
評価:☆☆☆★★
 【Aphrodite】の作戦により、核弾頭搭載の米国原潜が奪取された。その目的は、核ミサイルを北京に撃ち込み、第三次世界大戦を勃発させることであるように思われた。日本の自衛隊はイージス艦を出動させ迎撃しようとするが、妨害に遭い、作戦達成は困難になる。最後の希望はDT-Oと天童貞臣に託された。

 主役とする枠を広げすぎてしまったため、誰を中心とする物語なのかがぼけてしまい、かといって群像劇と言うには各エピソードの関連性が薄すぎる、まとまりのない展開になってしまった気がする。今回は結婚式が象徴する幸福がキーとなっているのだが、それをどうしても埋め込まなければならなかった理由が見つからない。余分な要素と解釈せざるを得ない。
 ロボットの種類は異なれど、誰もがロボットを操縦できる設定に広げてしまったことがそもそものミスなのだろう。当初は童貞や処女しか操縦できないという制限があり、そこに苦悩があったわけだが、そんなものは霧散してしまった。代わりに持ってきたのが幼児期の性的暴行とは、あまりにも安直すぎる。

 なにより、ヒーローやヒロインの印象が薄すぎるんだよな。

神童機操DT−O phase02

結局どこを目指すのか
評価:☆☆☆☆★
 技術で世界征服をたくらむ【Aphrodite】の首領である御門総司の誘いを断り、副首領の佐久間美亜も退けた天童貞臣は、秘密機関【Artemis】のロボットDT-Oに乗り込み、世界を守ることを決意した。
 自宅では義理の姉の天童阿妃と義理の妹の天童紗姫に肉体精神両面からいじめられつつ、早期の性交渉を奨励する政策に抗してパイロットの資格である童貞を守りながら、親友の間坂敏明らと馬鹿をやりつつ、汀宋高校に通っている。

 そんなある日、彼の前にタグなし(=経験者)の少女の佐久間立梨が現れ、天童貞臣に強烈にアプローチをして来た。彼に複雑な感情を抱く愛沢恵后は、気が気でない。恵后の友人である町見醇もハラハラしながら見つめている。
 また、時を同じくして、臨時教諭としてやって来た槇野聡吏は、類まれな美貌と巨乳を振りまき、天童貞臣に接近して来ながら、どこか恐怖を拭い去れない。

 【Artemis】司令の神楽義次が副司令の山崎衛に留守を任せて不在のおり、女装の男性である真田愛や男装の女性である渋木辰巳が新たに組み込んだ装備で出撃したDT-Oは、新たな敵に襲われる。そして未だ天童貞臣の知るところではないが、そのパイロットは、【Aphrodite】のナイトメア・ウィルスというナノマシンを性交時に接種された、ハニートラップの犠牲者だったのだ。
 そして問われる、天童貞臣の戦う理由。彼はどんな理由を示すのか?

 学園ラブコメの方に大きく方向転換した印象を受ける。まあそれはそれで良いのだが、今回もメインヒロインであるはずの愛沢恵后に活躍の場が与えられなかったな。

神童機操DT−O phase01

ちょっと散漫かも
評価:☆☆☆☆★
 汀宋高校に通う天童貞臣は、義理の姉・阿妃に肉体的にいじめられ、義理の妹・紗姫に精神的に追い込まれながら、ある誓いと誇りを持って暮らしている。それは、かつて、クラスメイトの愛沢恵后に関係して抱いた覚悟だ。そしてその覚悟を守ることは、この世界では難しい。
 日本にはタグ制度があり、性交渉未経験者はレッテルのごとくそのタグを付けていなければならない。ゆえに、多くの学生は早く相手を見つけて経験してしまう。そんな世界で天童貞臣が貫く覚悟とは、童貞でいること!

 そんなある日、彼の前に巨大ロボットが現れる。そのパイロット神楽義次は怪我をしているらしく、大声で助けてくれる人間に呼びかけている。「童貞のヤツはいないか!」と。このロボット、DT-Oは童貞にしか動かせない仕様らしい。
 自らの強い意志でもってそのロボットに乗り込んだ貞臣は、世界征服を狙う組織と戦うことになる。

 最近、このネタが多いなあと感じたり。「覇道鋼鉄テッカイオー」も童貞がエネルギー源だったしな…何かあるのかな?
 次巻があることが前提で展開されているので、全体的に密度が薄くなってしまっている気がする。十分なページ数はあるのだから、阿妃や紗姫がいることの意味を丁寧に組み上げたり、ヒロインである愛沢恵后サイドのエピソードを入れ込んだ方が良かったのではないだろうか。熱血ロボものは、ギュウギュウに詰め込んで沸騰させた方が、個人的には好みだ。

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