一色銀河作品の書評/レビュー

 一色銀河さんの作品の書評/レビューを掲載しています。

五線譜なんて飾りですっ!

工夫が足りない
評価:☆☆☆★★
 幼馴染で世界的なトランペット奏者だった南里桜乃音を亡くした日野正輝は、入部するために向かった吹奏楽部の部室の前で、入部希望のトランペット奏者の秋築律夢と出会う。
 肝心の吹奏楽部は、ヤンキーのような三年生のチューバ奏者の関島一吹、アルトサックス奏者にして部長の二年生の大室京香、怪しい雰囲気のあるフルート奏者の工藤凪砂と、顧問にしてパーカッション担当の朝比奈日向子という、とても吹奏楽部とは思えないほどの寂れようだったものの、秋築律夢の演奏には人を惹き付ける躍動感があった。…ただし、彼女はアニソンしか吹けない。

 彼女の才能を高く買う姉の秋築奏は、アニソンしか吹かない律夢を叩き直すため、自分の学校に編入させようとして、世界的指揮者のユーリー・シェルチノコフを審査員として、彼が納得いく演奏を出来るか否かでその行方を決めることになった。

 幼馴染がトランペットにつく幽霊として登場し、正輝のトランペットをビシビシ指導したり、ラブコメ展開を阻止しようと動いたりするわけだけれど、桜乃音が幽霊である必然性が今のところ全く分からなかった。普通に生きていてもいいじゃん。
 そしてこの作品は音楽がメインであるはずなのだが、その音楽の描写に全く魅力がない。アニソン中心でそれを読者が知っていることを前提にしているふしがあり、知らない人にその曲の魅力を伝える努力が見えないのだ。ただでさえ、文章からは音が聞こえないという不利があるのに、それを補う努力をしないのならば、音楽をメインにした小説など書かなければよいと思う。

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