うえお久光作品の書評/レビュー
項目 |
内容 |
氏名 |
うえお 久光 (うえお ひさみつ) |
主要な著作 |
- 悪魔のミカタ (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13)
- 悪魔のミカタ666 (1, 2, 3, 4, 5, 6)
- シフト (単1, 単2, 1, 2, 3)
- ヴィークルエンド
- 紫色のクオリア
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うえお久光さんの作品の書評/レビューを掲載しています。
紫色のクオリア
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自分以外の生き物が全てロボットに見える、ロボットと人間の区別がつかないという少女、毬井紫と友人になった少女、波濤学は、ゆかりの友人でありながら彼女に憎悪を抱いている少女、天条七美と反発したり近づいたりしながら、普通の学校生活を送っていた。
しかし、ゆかりと一人の殺人鬼との出会いが、普通とは少し変わっているけれど平凡な日常をどこかへ追いやり、まなぶにななみが抱いている憎悪の理由を悟らせることになる。まなぶの機能拡張がなされることを代償として。
クオリアの相違という変わった設定はあるけれど、日常のドタバタをまったりと描いていくのかなと思わせる第一章から、第二章ではまなぶを主役として、思いっきりSF的な展開へと変わっていく。
一言でいえば並行世界での試行錯誤なのだが、感覚的にいってこのジャンプの仕方が半端じゃない。そして、ジャンプして戻ってくることで、ゆかりという人物に対する深みと、まなぶという人間の徹底ぶりが理解できるようになっている。
第一章の展開を引き継ぐべきなのはこの回帰した後の世界なのだが、そこは描かれることはない。まさに不確定だ。ただ、あらゆる可能性を検証した上でその経験を捨てたことで、まだ生まれていない可能性を選択できる可能性が生まれたことは確かだと思う。
ヴィークルエンド
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生まれてくる子供たちが感情を制御できない先天的特質を備えるようになって20年ほどが過ぎた。子供たちは自分で適合サプリと呼ばれる薬を調合しし、それを服用することで感情を制御する。
サプリとは脳内麻薬を調整する薬だ。つまり、実質的に麻薬に等しい。このような環境は、彼らをして様々なサプリを調合せしめる状況を作り出した。単にトリップするための調合をする者もいれば、そうではない者もいる。後者の例がヴィークルと呼ばれるサプリだ。これを飲むことにより、適合者は自分の体を完全にマニュアルで精密操作することが出来るようになる。この適合者たちがは、ヴィークルライダーと呼ばれた。
高校生の羽鳥哉視はヴィークルを用いたレースを行うライダーの一人だ。猿渡十弥、十条竹見、入洞清香、雪村勇士、隠霧をチームの仲間としてレースにデビューした彼は、レースの最中に一人のアーティスト、出雲ミクニと出会う。彼女は、自分の歌を歌うために、他の全てを切り捨ててしまっているような人間だった。
あくまで非合法なヴィークルをメジャーな存在にするため、かつての恋人である土葵川徳子を影のスポンサーとして活動する哉視は、表のスポンサーとして、ミクニの知名度を利用したいと思うのだが、何故か彼女に嫌悪感を抱いてしまい、上手く接することが出来ない。彼の感じるイライラの原因は何なのか。
設定的には色々とチャレンジングである気がする。ただ、相当にダークサイド寄りの割には明るい感じもする。
サプリを使うことによって、これ以上ないほど自分を完全にコントロールできる能力を持っているにも拘らず、自分を根底から突き動かしているはずの喜怒哀楽はモヤっとした熱としてしか感じられず、何が自分を突き動かしているのかが分からない。
世界から異常として排除され、押しつぶされそうになっている人たちが、もがいてもがいて浮きあがろう、引き上げようとしている。そんな感じがした。
シフト 世界はクリアを待っている (3)
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2巻から登場した赤松の同級生、高嶋空のシフト世界はじめて物語。空がシフトをする際に感じる苦痛の理由は何か、ということが明らかになります。これでようやくシフト世界を人間系と怪物系の側面から描く準備が完了したというところでしょうか。本来の物語はこれから始まります、という感じ。
電撃のハードカバー戦略が、読者層を上に広げよう、ということなのだとしたら、本作を当初ハードカバーとして出版したことは戦略ミスだったように思う。どう読んでも、対象は中高生だし。中高生に売るにはハードカバーは高すぎる。
文庫化によって、コンスタントに出版が続けばよいのだけれど…
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