兎月竜之介作品の書評/レビュー

いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム

バッドエンドなので注意
評価:☆☆☆★★
 両親が無くなり、叔父の家で空気として暮らす狩屋友恵は、突如、不思議な空間に飛ばされてしまう。そこに招待された少女は彼女を含めて七人だ。いじめられっ子の桂木麻衣、みんなから可愛がられる鷺沢姫子、中二病の小早川由希、剣道部部長の坂本真琴、天才少女の万城目春、ヤンキーの佐藤きららと、いずれも誰かから疎まれている。
 そんな彼女たちの前に現れた黒騎士と名乗る存在は、女王の命により、いらん子クエストを開催するという。いらない彼女たちに代わり、彼女たちよりも周囲の人から好かれる存在が派遣されているが、それを取り消すためには、3日間にわたって開催されるゲームで生き残らなければならないという。そしてこのゲームには大きな罠があった。

 最近よくある、人狼ゲームのオマージュっぽい作品。バッドエンドなので注意。

流星生まれのスピカ

百合じゃない
評価:☆☆★★★
 流星工学の豊富な知識を持ちながら農業を志すシン・ヒラガは、流星の中から現れた少女スピカを拾う。ところが彼女は、セントラルを支配するエジソン・カンパニーが探し求めていた存在だった。
 流星の欠片からエネルギーを引き出す流星エンジンは、人類の生活を一変させた。ゆえにその製造元であるエジソン・カンパニーの力は絶大だ。都市を支配する企業の手から逃げ延びようとするシンとスピカをすんでのところで救ったのは、エジソン・カンパニーに対抗するテロリスト集団だった。

 ありきたり。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (8)

最後の戦い
評価:☆☆☆☆★
 旧アーケシア帝国の女王ソフィアを崇拝するハイディマリー・ハイドラに唆され、女王の忘れ形見であるシルヴィアは私立戦車隊ラビッツ戦車長であるドロシー・クローゼルを銃で撃った。ドロシーたちを助けに来たニーナとアリス・マドガルドは、ドロシーに同行していたキキラヤ・ヴィライネンと、ハイディマリーに捕らえられていたエルザ・アドラバルトやクリスティーナ・オーランドと共に、失意のうちにアンフレックの街へと戻ることになる。街で待つアメミヤ・サクラに伝える言葉を持たないままに。

 ラビッツのメンバーが失意に沈む間にも、ハイディマリーによる進軍計画は順調に進んでいた。アドリオ・マドガルドと手を組んだハイディマリーは、新しいクローンを生み出し、アーケシアの帝城に隠されていた魔法を駆使して、司令官ジャンヌ率いる平和維持軍を圧倒していく。
 ついにその魔の手がアンフレックの街に迫った時、ニーナはある決意をするのだった。そしてその決意を後押しするように、立て続けに人が訪ねてくる。

 シリーズ最終巻。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (7)

過去の亡霊
評価:☆☆☆☆★
 旧アーケシア帝国貴族の集まりに招待されたエルザと、それに便乗するクーが出かけたあとの私立戦車隊ラビッツに、過去の亡霊が訪れる。軍人時代のドロシーが犯した罪を裁くべく、一人の少女がやって来たのだ。その少女の名はシルヴィア。戦争犯罪人として処断された女王ソフィアの忘れ形見である。
 その直後、ドロシーとキキは、私立戦車隊ラビッツを出奔し、いずこかへと消え去ってしまう。残されたニーナとアリス、サクラは、消えた二人を心配して、その行方を追いかけることにするのだった。

 かつてのドロシーの仲間から、平和維持軍司令官ジャンヌの許へと向かった可能性が高いという情報を仕入れたニーナとアリスは、二人で旅に出る。そして、平和維持軍の拠点にたどりついたのと時を同じくして、戦犯として指名手配中のハイディマリー・ハイドラがテロを起こすという事件が発生するのだった。

 思いっきり次巻に続く。みんなバラバラになって、年少メンバーだけが取り残されることに。果たしてラビッツは元通りに戻るのか?

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (6)

悪を任じて平和を目指す
評価:☆☆☆☆★
 私立戦車隊ラビッツのもとに新たなお仕事が舞い込んでくる。それは、タイラン合衆国に匹敵する大国シヴァレル連邦生まれの歌姫リディアのコンサートに出演することだ。プロデューサーのスプライカから依頼を受けたと説明するドロシー・クローゼルに、メイドのアメミヤ・サクラは興奮気味だ。そしてリディアの大ファンであるニーナも本人と会えると大喜び。
 ところが、実際に彼女の許に向かい、会ってみると、聞くと見るとは大違い。歌姫は大層自分勝手で我が儘な少女であり、共演するピジョンズのモニカやジーン、エルザ・アドラバルトなどに面白衣装を着せて喜ぶ様な人間だった。

 しかし、彼女と直接接したことのない街の人々は、世界的な歌姫のコンサートが開催されることに浮かれ気味。町長であるドクターの秘書を務める才媛ベアトリーチェでさえ、彼女のことになると我を忘れてしまうのだ。
 リディアの思いつきに振り回されながらも何とかコンサート直前までこぎ着けたニーナたち。そんな彼女たちをリディアは開演直前にスタッフの目の届かない部屋に呼び、とある驚愕の事実を語り出す。

 野良戦車により家族を失う人々が多く生まれる世界で、恒久平和を目指すために自らの手を血に染める。そんな、信念の下に悪の道を進む生き方と、ニーナは対峙させられる。理想を目指すよりも近道な、犠牲を生みながらも均衡抑止によって平和に至る道を現実と呼ぶ人物に、彼女は何を言えるのか?
 おもちゃのように弄ばれるエルザが面白い。もっといじめてあげて欲しかったよ。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (5)

このままじゃお金で買われちゃう!
評価:☆☆☆☆★
 私立戦車隊ラビッツの砲撃手であるニーナの魔力の成長は著しい。いつもの様に野良戦車狩りをして魔法弾を打っていたところ、中古品の砲身がそれに耐えきれず、真中から折れてしまった。ぽっきり。
 私立戦車隊なのに大砲が使い物にならないのでは仕事が出来ない。最近、野菜を売って儲かっているラビッツなら何とか乗り越えられるピンチだったはずなのだが、戦車長のドロシー・クローゼルがまたも変な投資に金を注ぎ込んでしまったため、いきなり廃業寸前にまで追い込まれてしまう。

 そんなとき、都合よく持ち上がった儲け話が、新興企業コルノ・ウェインズ・インダストリーが開催する戦車レースだ。優勝賞金はちょうど修理代くらい。しかしまずは砲身を修理しなければ大会にも出場することもできない。
 ひとまず、ピジョンズのモニカとジーンに修理代を借りて出場することが出来るようになったのだが、金利なしの代わりに借金を返せるまでピジョンズのオモチャになる契約をしてしまった。レズのモニカ率いるピジョンズがオモチャにするということは、当然、あれやこれやをされてしまうということ。色んな意味でピンチだ。

 それに加えて、主催者のコルノ・ウェインズが一目ぼれしてしまい、彼の戦車にラビッツが負ければ、アメミヤ・サクラは彼の下にお嫁に行かなければならない展開になってしまう。そしてその対戦相手は、カレン・ザ・スピードと言う通り名を持つ、燃料戦車を操らせれば魔動戦車にも負けないという凄腕だ。
 色んな方面に貞操の危機を抱えて追い込まれながら、戦うためではなく走るために行われるレースという場で、いつもと異なる状態で全力を出し切ることが出来るのか?

 これまではラビッツの居場所を守ってきた陰の実力者のメイドであるサクラを主役とした物語となっている。彼女のラビッツに行きつくまでの背景を紹介しつつ、ラビッツを守るために自分自身を質草にしてしまう思い切りは、他のメンバーとはちょっと毛色が違う。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (4)

嫉妬とプライド
評価:☆☆☆☆☆
 私立戦車隊ラビッツの操縦手であるエルザ・アドラバルトと動力手であるクリスティーナ・オーランドは、いつも一緒にいる。しかし、クーのもとに来た一通の封書がその関係を一変させる。クーの国立学園時代の先輩、エミリア・ローゼンアルトから、復学の誘いが来たのだ。
 ひとまず様子見のつもりで学園に向かったラビッツだったが、クーがエミリアにベッタリなのを見て嫉妬したエルザがケンカを売り、逆に格の違いを見せつけられて返り討ち、そして怒ったクーはその場で復学を決めてしまう。

 クーのいないラビッツの日常に気落ちしイライラを募らせるエルザ。その様子を見かねたアリスやニーナは、彼女が自身の心と素直に向き合えるよう、真正面からぶつかっていくのだった。

 ニーナとアリス、エルザとクー、キキとドロシーというカップリングを前提として物語が進んでいく感じ。最初はニーナとアリスの蜜月ぶりを見せつけておいて、エルザとクーの破局、ライバル出現、そして和解という演出になっている。
 当然、戦車隊の物語なので、最後には戦車戦が繰り広げられるわけではあるが、これはいつものように、日常パートの出来事がブレイクスルーのきっかけになる構成だ。この辺りには作者のこだわりがあるのだろう。

 メンバーが女性ばかりなので元々そういう傾向は強かったけれど、完璧に百合が当たり前の物語になっている気がする。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (3)

独善的理想が誤るとき
評価:☆☆☆☆☆
 ニーナたち私立戦車隊・首なしラビッツのメンバーは、臨時収入で懐に余裕ができたことを受け、みんなで温泉へ湯治に出かける。そこには新メンバー・アリスの姿も。彼女はテオドーレの研究所からオリハルコンのレプリカを持ちだし、ラビッツの攻勢の糸口を作った立役者でもあるのだ。
 はじめはドクターのメイド隊に身を寄せていたものの、突然、ラビッツのメンバーと暮らすことになったアリス。しかし彼女はなぜかみんなに馴染もうとせず、友だちになろうと持ちかけるニーナに対しても、自虐的な態度で自分を貶め、決して友だちになろうとはしない。それなのにひとりは寂しいらしく、かまわれるとこっそり喜んで、やっぱり自虐する繰り返しだ。

 そんなとき、アリスに隠された秘密と、それを利用して自分の目的を達しようとするフィクシオ共和国軍中将ヴォルフが現れ、首なしラビッツを国賊として糾弾する。このピンチをどの様に切り抜けるのか?

 相変わらず食べ物に関する思い入れとか、キャラクターの内面をぐりぐりと描く感じがとても良い。
 1巻からずっと各巻には、自分の正義のために他人をかえりみない人たちが敵役として登場してきた。今回の敵は、ひとつの意志に統一された、いわゆるディストピア的な世界観を目指す軍人だ。こう書くと明らかに敵の様に感じるかもしれないが、実際はこういう人を祀り上げもてはやすのは、普通の人たち、大衆であることを忘れない方が良い。

 ニーナは食が細かったけれど、アリスはダイソン並みの吸引力を備えている。傷つかないために近づかないを信条にしているアリスがなつく時は、ちょっとかわいい。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (2)

自分を売った両親との再会
評価:☆☆☆☆☆
 生き別れた両親と妹を探すため、私立戦車隊ラビッツのメンバーたちと分かれ旅立ったニーナは、ニーナの出身地であるソルシャ共和国から難民を受け入れているというエンデ市にたどり着く。この街は、弱肉強食をそのまま法律とした悪法が支配する場所だったのを、17歳の少女が市長に就任して短期間で立て直してしまったらしい。
 その少女、テオドーレ・レーベンマイヤーと仲良くなったニーナは、特例として難民たちが住む開拓市へと連れて行ってもらい、両親と妹のソーニャ、そしてニーナを生き延びさせてくれた砲手の女性フランカと再会する。
 自分を売り払った両親に対する反発もありながら、開拓市が野盗に食い物にされている事実を知ったニーナは、ドロシーを見習って、難民たちに蜂起を促すのだが、野盗の武力を恐れる彼らは、逆にニーナを傷つけようとする。そんなとき現れるのが…。

 旅に出たニーナはドロシーたちラビッツとは違う形で世界を救おうとする少女テオドーレに出会い、心酔する。自分を傷つけたものを根源から失くそうとするそのやり方に、感動するからだ。
 しかし、テオドーレ自身にも辛い過去がある。貴族の娘でありながら戦傷を負う羽目になった彼女は、彼女を形作る全てであった家から見放されてしまっていたのだ。そこで自分の存在意義を自分で定義しなおすべく、行動していた。

 今回はちっちゃいニーナよりさらにちっちゃい妹のソーニャや、ゴスロリM少女テオドーレという新しいキャラクターが登場し、絵面的には華やかなのですが、戦争復興下にあるという状況を反映したように、生命力に満ちた明るさと、その影となる物悲しさを併せ持った物語になっています。

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ニーナとうさぎと魔法の戦車

戦争という概念と戦う
評価:☆☆☆☆★
 兵器の動力源が搭乗者魔力という世界。大国同士の戦争は新型魔法爆弾の余波による全兵器の故障という理由で5年前に停戦したものの、何故か兵器たちは搭乗者なしで自走し、周辺の集落を襲うようになった。集落では自分たちの身を守るために私兵力として戦車を保有している。
 ニーナはそんな時代の被害者。7歳で人買いに売られ、12歳まで戦車の動力源としてこき使われ、いまはそこから逃げ出して放浪する身となっている。そんな彼女が空腹に負けて食べ物を盗んだところを捕まえたのが、私立戦車隊"首なし"ラビッツのメンバーたちだった。

 これまで虐げられる一方の人生だったニーナに初めて訪れた楽しいひととき。しかしそれも、彼女たちの町を襲う野良戦車の本拠地を壊滅に向かった戦いで崩れてしまう。そして、彼女の前に現れる、諸悪の根源にして新型魔法爆弾の開発者、最悪の戦犯マドガルド。
 彼の存在を前にして、ニーナは憎しみを募らせ恨みを晴らそうとするのだが…。

 様々な形で戦争被害にあった少女・女性たちが集まるラビッツ。しかしそんな彼女たちには一つの誇らしい信条がある。その信条を貫き、いつの日か理想を実現することが出来るのか。そんな感じのテーマがあるっぽいのだけれど、マドガルド側にも何か理由があることを仄めかしながら、そこに言及し切れなかったのが個人的には物足りない感じがした。
 一応事件は解決した感じだけれども、根本的な問題は何も解決されていないので、物語自体を続けることは可能だと思う。その場合は、世界観だけを生かして別の主人公サイドから描くのもありかも知れない。

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