博物戦艦アンヴェイル(小川一水)の書評/レビュー


 博物戦艦アンヴェイル(小川一水)の書評/レビューを掲載しています。

博物戦艦アンヴェイル

趣味がいっぱい詰まっている
評価:☆☆☆☆☆
 ティセル・グンドラフは下級貴族の娘なのだけれど、戦争で父を亡くし、母妹を養うためにつてを頼って騎士見習いになった。ようやく叙任というところまで来たのだけれど、戦費負担の影響などもあって、正騎士を雇う余裕がないと言われちゃう。不況って恐ろしいね。これまで歯を食いしばって頑張ったのに。
 さすがに悪いと思ったのか、交換条件として出されたのが、外洋に出て遺跡調査を行う博物戦艦に乗るならば、騎士に叙任してあげるよ、ということ。外洋は未踏破地域なので怖がって誰も行きたがらないらしい。
 例えると、就業環境が厳しい関係会社に出向するなら正社員にしてあげるよ、みたいな条件だと思うけれど、剣を振り回す以外に特技もない16歳の少女には世間は厳しすぎる。ほとんど選択肢を奪われたような状態で引き受けることを決め、王様のもとに詳細を聞きに行くことになりました。

 そこで登場する王様は、有能らしいのだけれどちょっと変態。いきなりティセルのスカートをめくって、絶対領域の素晴らしさを力説したりする。王妃様はそんな王様をニコニコ見て笑っているだけ。
 そして、彼女は護衛として乗船することになるのだけれど、その護衛対象はジェムという悪ガキ。いきなりティセルに抱きついて胸に顔をうずめたりする。本当だったら成敗してやりたいところなんだけれど、金鈴道化という、王様以外の命令は聞かなくても良い立場なのでそんなこともできず、怒りを押し殺して我慢するしかないのだ。(出港してからはそうでもなくなるけどね。)
 未知の海に、大型帆船で挑む大冒険。途中には困難があり、反乱があり、彼らの行く手を阻む敵が登場する。そして、ようやくたどり着いた目的地でもひと波乱ふた波乱ある。基本的にファンタジーなので、時代考証とかはそこそこにして、大いなるロマンを楽しみましょう。

 あとがきで、「もっとガンガンいけ!大丈夫文章メディアならいけるはずだ!」とあるけれど、将来、東京都の条例が改正されたら大丈夫じゃなくなるかもね。

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