博物戦艦アンヴェイル (2) ケーマの白骨宮殿(小川一水)の書評/レビュー


 博物戦艦アンヴェイル (2) ケーマの白骨宮殿(小川一水)の書評/レビューを掲載しています。

博物戦艦アンヴェイル (2) ケーマの白骨宮殿

冒険と恋愛の、古典的なジュヴナイル小説
評価:☆☆☆☆☆
 ラングラフ国王ウルサールの命を受け、諸島環に眠る神秘、メギオス驚異の探索に出かけた博物戦艦アンヴェイルは、遠く外海でヌソスの金毛氈を発見し、遥か昔にメギオス博覧王が封じた嵐神キオの眷属・彗晶族の復活をも退けて、無事に王港レステルシーに帰港した。
 一躍有名人となったお調子者艦長アルセーノは夜会の華たちを渡り歩き、それまでの味噌っかす扱いを取り戻すように、天狗になっていた。そんな隙を突いて、敵国オノキアの艦長シェンギルンは、副長ボーガと側女のアモーネを率いて謀略を仕掛ける。それに嵌り株価急落のアルセーノを救うため、侍女のグレシアはある提案をする。

 一方、金鈴道化のジェイミーと護衛女騎士のティセルは、王妃のゲルフィレヴナに呼ばれ、アンヴェイル号を強化するためのお使いを頼まれる。そこで訪れたアンドゥダーナー皇国の皇女黎妃の乗艦、天佑では、魔法の深遠と、王族の冷酷なまでの思考方法を思い知らされる。
 そして、再び航海へと旅立ったアンヴェイル号は、博覧王の九本のオールと称されたユヴィ提督の伝承に従い、ケーマの白骨宮殿を目指していた。

 序章と終章を除けば3章構成となっているのだが、はじめの2章では、ジャムとテス、アルとグレシアという、二組の少年少女の関係の進展が描かれる。そして3章では、新たなメギオス驚異にまつわる冒険と、ウルサールやジャムたちが隠している秘密が仄めかされる。
 王妃ゲルプの、魔法とはただそこにあるぼんやりとしたものをぼんやりとしたものと受け入れるだけ、という解釈は面白かった。再現性のあるくっきり派の科学に対して、ぼんやり派の魔法はたまたま結果がそうなるという考え方をしているみたい。そのたまたまの現象に名前をつけてやることで、しっかりと形あるものにするという思想はとても日本的だと思う。

 前巻はどちらかというと冒険がメインだった気がするけれど、今回はティセルの心情の動きを丁寧に描こうとしている感じがする。そして、それをすればするほど、表面的には仲良く出来ているように見えるのだけれど、ジェイミーの底知れなさや謎が深まっていく。
 世界の脅威も大事なことだけれど、隣にいる人のことも大切。そんな女の子の揺れる気持ちが描かれている。冒険と恋愛の、古典的なジュヴナイル小説だ。

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≪おまけ≫
ラングラフ王国の爵位序列:
一等到爵
二等鴻爵
三等耀爵
四等師爵
五等敢爵
六等侍爵
七等余爵
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