天冥の標 X 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河(小川一水)の書評/レビュー


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天冥の標 X 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河

現在の出来事は過去に起因する
評価:☆☆☆☆☆
 西暦2349年、ドロテア・ワットの事件から約半世紀が過ぎた小惑星パラスの地下で、タケカズ・バンダイは娘のザリーカと二人で、農業を営んでいた。貧しく、苦労の連続で、都市の人間からはバカにされる仕事。しかしそれを選んだことに後悔はない。そんなある日、タックは、地球から来た学者のアニー・ロングイヤーを紹介される。彼女を居候させて欲しいというのだ。彼にはその要請を断れない理由があった。
 一方、その六千万年も昔、ある銀河のある惑星の原始サンゴ虫の上に、とある意識が誕生した。初めそれは茫洋としたものだったが、次第に様々なことを学び、自らをノルルスカインと名乗る様になる。そして様々な出会いを経て、自らを知り、希望を持ち、やがて絶望することになる。そこから物語は始まるのだ。

 どんどんと全体像が明らかにされていっている訳だが、ちょっとだけ、レンズマン・シリーズ「三惑星連合」を思い出した。文章力ではこちらが遥かに上だが、設定の構成がちょっとだけ似ている。
 24世紀の出来事と、六千万年前からその時点につながる出来事を、交互に並行的に語っていく構成となっており、終盤に進むにつれて様々な要素がつながっていくことが分かる。そのつながりは、既刊の要素とのつながりでもあるし、今巻で描かれた要素とのつながりでもある。

 そうして全体の伏線を回収しながらも、厳しい環境の中でありながら、希望を失わず、ひたむきに自分の仕事に打ち込み続ける男と、そういう世界から逃げ出したいと感じている少女という、時代を問わず繰り返されてきたであろう光景を併せて描いているところが良い。

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