トネイロ会の非殺人事件(小川一水)の書評/レビュー


 トネイロ会の非殺人事件(小川一水)の書評/レビューを掲載しています。

トネイロ会の非殺人事件

SF調のミステリー
評価:☆☆☆☆★
 作者にしては珍しく、SF調のミステリーとなっている。三雲岳斗の初期作品と趣が似ている。

「星風よ、淀みに吹け」
 日本宇宙機構(JSA)の閉鎖環境長期滞在実験施設「BOX-C」実験の八カ月にわたる目的は、月基地要員二名を選抜することにある。それは志願クルーたち六名の密かに共通する認識だ。
 その実験の最終日の夜半。優秀なクルーの中でも異彩を放っていた蓮台美葉流が、窒息死した状態で発見された。このままでは、月基地計画事態の破滅にも結び付きかねない。リーダーの江綱守人は、警察が介入する前に犯人に名乗り出る様に宣言する。閉鎖環境ゆえに、犯人は必ずクルーの中にいる。

「くばり神の紀」
 高校生の石沢花螺は、母の藤の死後、介護施設の三宝園で住み込みバイトをしている。そんな彼女のもとに転がり込んで来たのは、彼女の血統上の父親であり地方の名士である伊瀬山礼三だった。
 従兄だと名乗る多岐という人物に呼び出され、今際の際の枕頭に連れて来られた花螺は、奇妙な光景を目にする。医師の道風甲子郎が控える中で、石沢母娘を手ひどく捨てた極悪人の父が、気前よく遺産を分け与えて来たのだ。そのことが気持ち悪かった花螺は、伊瀬山に伝わるくばり神の伝承に行きあたっていく。

「トネイロ会の非殺人事件」
 一代一人という恐喝者に金を巻き上げられていた被害者のうち、彼の殺害計画を実行しようという意志を持った十人がペンションに集まり、十人が分担して一人を殺す計画を実行する。それは、相手に縄をかけ、ペットボトルの重みで締めていくというもの。十人全員が実行すれば、相手は死に至るのだ。
 しかし翌朝、ペットボトルが一本だけ、空になっていることに気づく。実行者十人は、計画が完了したことを祝いながら、ただひとりの非殺人者を推理していくのだが…。トネイロはオリエントの逆読みらしい。

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