コロロギ岳から木星トロヤへ(小川一水)の書評/レビュー


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コロロギ岳から木星トロヤへ

腐女子の救世主
評価:☆☆☆☆★
 木星前方トロヤ群のトロヤは、エネルギー問題で困窮したヴェスタにより占領され、不遇の環境に置かれていた。占領前に抵抗のために建造された宇宙戦艦アキレス号は、突如、艦長が不在となったため戦わずに敗北し、その象徴としてトロヤ地表に展示されている。
 艦長の孫であるリュセージ・ラプラントは、ヴェスタ人将校にケンカを売って働き先をクビになり、友人のワランキ・レーベックと共に宇宙戦艦アキレス号の中にこもったところ、閉じ込められてしまった。

 その時点から217年前の北アルプス嘶咽木岳山頂観測所に、時間を漂流する存在カイアクが難破してくる。このままカイアクを放置すると地球消滅の未来が待っており、障害となっている217年先の木星前方トロヤ群には少年二人が閉じ込められていることを知った観測員の岳樺百葉は、所長の水沢潔と相談し、世界を巻き込んで、少年たちを助けるために知恵を絞る。

 野辺山宇宙電波観測所の才谷煌海の登場で分かることだか、彼女たちは腐っている。時間の隔たりを超えて、過去の行動が未来を変化させ、歴史に小さくない影響を与える。だがそれは、ほんの些細なつぶやきがきっかけであったりもする。そしてその根底にあるのは、きわめて原始的な善意であるのだ。
 短編なので仕方のない部分はあるのだが、過去と未来のつながりについて、それぞれもう少し深掘りしても良かったように思う。

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