大黒尚人の書評/レビュー


 大黒尚人の書評/レビューを掲載しています。

フルメタル・パニック! アナザーSS

評価:☆☆☆☆★


フルメタル・パニック! アナザー (12)

評価:☆☆☆☆★


フルメタル・パニック! アナザー (11)

恩と怨
評価:☆☆☆☆★
 ガルナスタン軍の追撃をはねのけながら、避難民を護衛するアフガニスタン軍と共にサベージで撤退戦を行う達哉とアデリーナは、アフガン第三の都市まで逃れたものの、ミハイロフ・ナタリア率いるケントゥリア隊の襲撃を受ける。絶体絶命の二人の前に現れたのは…。
 アメリカ情勢の変化により追い詰められていくガルナスタン。その状況で狂気のオルカンは何を選択するのか?

フルメタル・パニック! アナザー (10)

13年越しのリベンジ
評価:☆☆☆☆★
 達哉と菊乃が決死の逃避行を続ける中、捕虜となったアデリーナは、オルカンとの再会を果たしていた。一方、撤退には成功したものの、多大な犠牲を払ったと認識しているクララは、自分の責任に押しつぶされかけていた。それに追い打ちをかけるように、日本からレイヴンシリーズの引き上げ通告が届く。

フルメタル・パニック! アナザー (9)

過去を暴く短編集
評価:☆☆☆☆★
「夕陽のサンクチュアリ」
 市之瀬達也の友人の牧島楓の小説を原作とする映画が撮影されることになり、D.O.M.S.がその撮影に協力することになった。ところが、大人の事情により原作レイプが発生してしまう。

「砂塵の国」
 一時帰国したユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーは、兄のハマド・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーの謀略により、失脚の危機に追い込まれてしまう。

「山河燃える」「故郷は緑なり」
 南カフカスの小国、コルキス共和国の内乱において、政府軍の教導を行っていたメリッサ・マオは、戦場でアデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤという少女に出会う。彼女は内戦によって住んでいた村を焼かれ、少年兵として反政府軍に従軍し、ステファン・イリイチ・ミハイロフやナタリア・イワノヴナ・ヤコブレワの指導を受けていた。

フルメタル・パニック! アナザー (8)

混沌の戦場
評価:☆☆☆☆☆
 ステファン・イリイチ・ミハイロフやナタリア・イワノヴナ・ヤコブレワの所属するD.O.M.S.によるAI制御AS実戦投入を目的としたカエサル・プロジェクトを壊滅させるため、旧ソ連のガルナスタン共和国に向かう新生D.O.M.S.は、ガルナスタン共和国軍参謀長を父に持つソラヤ・パルミシュ少尉の手引きで、市之瀬達也と三条菊乃が夫婦役、アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤが使用人役で国内に潜入した。
 大統領ムーザ・エカテリーナ・アタエフの暴走によりロシア軍が駐留するクラノヴォーツク基地を奪い、完全にロシアを敵に回したガルナスタンだったが、ソラヤの父はロシアの介入を防ぎつつ、ミハイロフらを追い出して独立を維持するため、新生D.O.M.S.を国内に招いたのだ。

 サミーラ・ビント・ハッサンはユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーと自分の関係を、オルカン・アタエフ中将とソラヤ・パルミシュ少尉に重ね、惑う。クーデターの準備が着々と進む中、それは突如、もたらされた。
 混沌の戦場で生き残るのは誰か?

フルメタル・パニック! アナザー (7)

戦士の覚醒
評価:☆☆☆☆☆
 戦場の混乱で炎に巻かれ助からない状況に置かれた三条旭に慈悲の一撃を与えられない三条菊乃に手を貸し、市之瀬達也は初めて人を殺した。
 サミーラ・ビント・ハッサンを挑発し混乱に乗じて脱出しようとした三条菊乃だったが、市之瀬達也の言葉を聞き、自分の居場所と今後の選択について深く考えるようになる。

 破壊されたASの代替機を受け取るため、グレーな取引も許容されるソマリランドへと舵を切った新生D.O.M.S.は、無事に取引を終えたものの、遊びに来たアブドゥラ・アル・アテヤの娘にしてユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーの妻マルヤムが海賊に拉致されてしまう。
 マルヤム奪還のため夜間急襲作戦を決行する新生D.O.M.S.だったが、それはステファン・イリイチ・ミハイロフが周到に準備した撒き餌だった。

 一方、ジオトロン・エレクトロニクスCEOのロバート・モーガンとガルナスタン大統領ムーザ・エカテリーナ・アタエフの秘密会談の結果、ロシアに隣接する小国ガルナスタン共和国に運び込まれた無人ASは、ロシア軍が駐留するクラノヴォーツク基地を電撃戦により占拠してしまう。
 部隊を指揮した大統領の息子のオルカン・アタエフ中将と彼の幼なじみであるソラヤ・パルミシュ少尉は、未来に絶望的な結末しか見通せずとも突き進むことしかできない現在を嘆きつつ、戦場を眺めるしか出来ないのだった。

フルメタル・パニック! アナザー (6)

童貞卒業
評価:☆☆☆☆☆
 新生D.O.M.S.で乗っ取られたD.O.M.S.を動かすステファン・イリイチ・ミハイロフと、配下の三条菊乃と三条旭との戦いをあらためて決意した市之瀬達也は、アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤやユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーらと共に、彼らが無人ASを運用するテスト先を潰して回る戦いを繰り広げていた。
 ユースフの親戚である族長アブドゥラ・アル・アテヤの計らいで万全の補給をした一行は、敵の開発拠点であるユーゴスラヴィアの地下基地を襲撃する計画を立てる。完全な奇襲攻撃のつもりだったにもかかわらず、図らずもジオトロン・エレクトロニクスCEOのロバート・モーガンやその取引相手であるガルナスタン大統領ムーザ・エカテリーナ・アタエフが滞在しているという、好機であり、防衛戦力が充実している時期に突っ込むことになってしまう。

 何とか最低限の戦果を得、更なる収穫を得ようとした矢先、それぞれに因縁の敵が現れる。アデリーナの前に現れたのは、かつての教官、ナタリア・イワノヴナ・ヤコブレワだった。

フルメタル・パニック! アナザー (5)

新たな舞台
評価:☆☆☆☆☆
 民間軍事会社ダーナ・オシー・ミリタリー・サービス(D.O.M.S.)社長のメリッサ・マオとAS教導課班長のダクラス・バクスターが、ジオトロン・エレクトロニクスCEOのロバート・モーガンの差し金で襲撃され、瀕死の重傷を負った。娘のクララ・マオが回復を祈る中、夫のクルツ・ウェーバーは落とし前をつけるために姿をくらまし、D.O.M.S.は乗っ取りの憂き目に遭う。
 D.O.M.S.の新社長に就任したのがステファン・イリイチ・ミハイロフであり、三条菊乃と三条旭がD.O.M.S.社員となったことを知ったアデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤは即時退社を決意し、それに流されるように市之瀬達也も日本に戻ってきた。しかし、戻ってきた達也は無気力で、市之瀬由加里や牧島楓、武村健司を心配させる。

 一方、自衛隊も純日本製AS「ブレイズ・レイヴン」の返還を求めるのだが、D.O.M.S.からの返答は、輸送中に破壊されてしまったというものだった。
 戦術分析官のベルナール・ベルトランが実務を担当し、ユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーが出資者となることで、新たな戦いに挑むための舞台が設えられる。

フルメタル・パニック! アナザー (4)

時事ネタも絡めたフルメタ
評価:☆☆☆☆☆
 今回はシリアスなエピソードとちょっとコミカルなエピソードの中編二本立てとなっている。前編ではジャスミン革命の裏側にある先進国の利権争い、後編ではシェールオイルにまつわる利権争いという時事ネタが絡んでいたりもする。

「花、相似たり――」
 民間軍事会社ダーナ・オシー・ミリタリー・サービス(D.O.M.S.)は、内乱に揺れるアフリカの小国、マランパ共和国の政府軍に対する教導のため派遣されていた。アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤ、市之瀬達也、ユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリーといういつものメンバーなのだが、冷静な戦術分析官のベルナール・ベルトランが今回の仕事を取ったメリッサ・マオに不満たらたらということがいつもとは違う。
 だがその理由はやがて明らかになる。マランパの精鋭AS部隊を率いるのはサラ・サムラ少佐。影のある若い女性だった。そして彼女とベルトランの間には、とある因縁があったのだ。

 達也にとっても、ユースフにとっても、苦い思いと共に思い出される戦場となったであろう。三条菊乃と三条旭、そして彼らの親玉であるステファン・イリイチ・ミハイロフも登場し、マランパを舞台として国家間のパワーバランスをかけた綱引きが行われる。

「WILD WILD WEST」
 メリッサ・マオからアデリーナのおっぱいを触るボーナス付きで、家出したクララ・マオを連れ戻すため、アメリカはテキサスの牧場へと向かった達也とアデリーナ。もちろんアデリーナは、カウガールのコスプレ済だ。
 ところが向かった先の牧場は、油田を狙う悪漢から嫌がらせを受けている最中で、二人も成り行きから、牧場を護ることに協力することになる。そしてそこにはクララの父クルツ・ウェーバーもいた。

 新工法の開発によって突如、油田としての価値が生じてしまったために起こる悲劇…のはずなんだけど、悪漢も悪になりきれなかったりするので、全体的にはコメディの雰囲気になっている。
 気分転換も出来た達也だったが、彼が戻る場所にもたらされるのは、訃報ということになるのかも知れない。

フルメタル・パニック! アナザー (3)

代わりに得るもの
評価:☆☆☆☆★
 メリッサ・マオが設立した民間軍事会社ダーナ・オシー・ミリタリー・サービス(D.O.M.S.)に、陣代高校に在学したまま仮就職することになった市之瀬達也は、カリフォルニア東部の訓練場で、純日本製AS「ブレイズ・レイヴン」の専属オペレーターを決めるための試験を繰り返していた。教導隊(アグレッサー)におけるSVであるアデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤの見事な操縦に比べ、アジャイル・スラスタのロックな振り回しっぷりに達也は翻弄されるばかりだ。
 しかし当のアデリーナは、三条菊乃と三条旭の操るセプターに対して見せた達也の操縦に、心を乱されていた。何故素人同然の達也が見せた戦場での働きを気にするのか、自分でもよく分からず、達也に対して冷たい態度を取ってしまう。

 そんなとき、彼らの訓練場にラシッド王国第三王子ユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カーリム・アル・ケートリー殿下と、その従者のハッサン・ビン・ジャスイーム陸軍中佐、そして彼の娘にしてユースフのメイドのサミーラ・ビント・ハッサンがやってくる。達也に突っかかってくるユースフのおかげで、アデリーナとの関係も紛れた様に思えたのだが…。
 妹の市之瀬由加里や幼なじみの牧島楓、友人の武村健司が待つ陣代高校で開催される学園祭!達也はアデリーナを招待するのだが、そこにクララ・マオやユースフ殿下らもくっついてきて、日常と非日常が交錯する混乱が巻き起こされることになる。

 今巻は訓練場での対決と、学園祭がメインだ。家族や友達が待つ場所を持ちながらも、戦場での冴えを見せる達也に対して、アデリーナが知らず知らずのうちに感じる嫉妬や羨望がテーマとなっている。もう一つのテーマは、日常の世界から一足早く旅立とうとしている友人に対して、何をすれば良いのか困惑する高校生たちの気持ちだ。引き留めるでもなく、気持ちよく送り出すでもなく、混乱する感情が学園祭という舞台に集結する。
 学園祭だからイラストは地味だろうと思うかも知れないが、思うよりも派手なのでびっくりするだろう。

 失っても代わりに手に入るものがあるならば、心は満たされるものだと思う。

フルメタル・パニック! アナザー (2)

乖離していく日常
評価:☆☆☆☆☆
 民間軍事会社D.O.M.S.に就職することになった陣代高校3年生の市之瀬達也は、アラビア半島へと来ていた。カルロスの代役で演習に参加することになった達也は、交戦規定を忘れてクライアントの殿下をぶちのめし、一時日本に帰されることになってしまう。
 久しぶりに帰った日本は夏休みが終わり新学期が始まるタイミング。友人の牧島楓や武村健司は受験生として、青春を謳歌する高校生として夏休みを過ごしていて、達也は微妙な疎外感を感じずには居られない。しかししばらく彼らと普通の高校生として過ごせると思った途端、指導教官である少女アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤとクララ・マオがやってきて、騒動を巻き起こす!

 次の達也のお仕事は、純日本製ASブレイズ・レイヴンの輸送。とりあえず命の危険はないと思ったのも束の間、軍需産業の勢力争いと、国際テロリストのステファン・イリイチ・ミハイロフ、そして三条菊乃と三条旭が関わってくることで、思いっきり戦場の空気を味わうことになってしまう。

 非日常の世界に身を置くことを決めてしまえば、日常の世界との間に違和感を感じずには居られない。本人の意思とは関わりなく、求めずそうなったのならまだしも、達也は自分の決断としてそれを選び取ろうとしている。それは、望んでも日常に戻れない人間から見れば、愚かしい行為に思えるのかもしれない。
 そんな葛藤を含みつつ、状況は彼らの気持ちとは関係なく、時に緩やかに、そして激しく進行していく。

フルメタル・パニック! アナザー (1)

普通の高校生が普通じゃない世界に
評価:☆☆☆☆☆
 都立陣代高校の学生である市之瀬達哉は、実家の建設会社で民生用の人型重機、PS(パワースレイブ)を操縦中、自衛隊の九六式AS(アームスレイブ)の襲撃を受けてしまう。暴走したASの向かう先の民宿には、妹・由加里が宿泊している!そして目の前には、傷ついた操縦士、アデリーナ・エレクサンドロヴナ・ケレンスカヤが乗って来たASが残されている。
 妹を守るために初めてASに乗った民間人の達哉は、ASの左脚を砕かれながらも何とか取り押さえることに成功。その話を聞いたアデリーナの所属するPMC、ダーナ・オシー・ミリタリー・サービス(D.O.M.S.)の社長、メリッサ・マオが彼をスカウトし、教導隊(アグレッサー)の隊員として訓練を受けることになる。

 普通の高校生がASパイロットの訓練を受ける訳で、その訓練内容は苛烈!指導教官であるアデリーナは、メリッサの悪戯で変なコスプレばかりしているけれど、とてつもなく厳しい。訓練所に出入りする10歳くらいの少女・クララにすら射撃技術でコテンパンにされながらも、何とか訓練を続けていく。
 そして、その訓練の最終日。テスト科目となったのは…。

 フルメタル・パニック!本編の最終巻から十数年後、ソ連も崩壊し冷戦が終わった世界で、国防費用は削減され、PMCが幅を利かせ始める中、民生用にAS技術も拡散していっている。そんな時代に生きる普通の高校生が、普通じゃない世界に入り込んでいく物語。
 普通の高校生の視点で軍事訓練の世界を描くという視点は本編とは真逆だが、それゆえに読者の感覚としては受け入れやすいところもある。日常とのギャップにコメディ要素を散りばめながら、世界の裏側で進行している陰謀じみたものも仄めかされ、今後の展開にも期待が持てそう。

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