岡本タクヤの書評/レビュー


 岡本タクヤの書評/レビューを掲載しています。

武装中学生2045-夏- (3)

延長線上の敵
評価:☆☆☆☆★
 巽征志郎に連れられ、沖縄、そして西都防衛学院で米国の軍事複合体である蛇遣い(オフューカス)を相手に戦争させられた東都防衛学院の武装中学生である久坂レイジ、桐島チヒロ、御門ミヤコ、高城クマグス、八神トワ、西都防衛学院の橘イオリは、姫川美雪の友人だった敵指揮官アリッサ・オブライエンから、トワが狙われる理由を聞いていた。そしてその根源を絶つため、クマグスの実家である高城重工の研究施設へと向かう。
 一方、蛇遣い(オフューカス)のトップである少年アレス・シルバーリングは、合衆国大統領から呼び出しを受けていた。日本での騒動について釘を刺され手を引くことを決めるものの、既に次の刺客タキは日本に放たれていた。武装中学生たちが出会うタキは、彼らの心に何をもたらすのか。

 1,2巻は相手の方が圧倒的有利な立場で攻めて来るので、どれだけ反撃してもオッケーな空気を醸し出していたけれど、今回は自分たちの延長線上にいる相手が敵なので、反応が非常に人間的になっている。その中で、武装中学生としては褒められるべき非人間性が異物として浮かび上がるという構成だ。
 しかしこれは、どうやって続けるのかな?

武装中学生2045-夏- (2)

巻き込む範囲を広げての防衛戦
評価:☆☆☆☆★
 内閣府の官僚である巽征志郎により、沖縄から軍用ヘリに乗せられた東都防衛学院の久坂レイジ、桐島チヒロ、御門ミヤコ、高城クマグス、そして沖縄から連れてきた少女の八神トワは、東京ではなく京都へと向かっていた。  たどり着いた先は西都防衛学院、西の武装中学生の本拠地である。学院長の土岐重郷に迎えられた5人は、西のトップである橘イオリと、あまり兵士には見えない寺田キイチと知り合いになる。

 一方、沖縄で作戦に失敗したアルベルト・ルースは、米国の軍事複合体である蛇遣い(オフューカス)のトップである青年アレス・シルバーリングに面会していた。アルベルトから日本の武装中学生について興味深い話を聞いたアレスは、アリッサ・オブライエンを指揮官とし、現地指揮官ラゼンドラ・ダハルと軍用兵器オペレーターのヒューイ・メイヤーズに命じて、西都防衛学院への侵攻を計画させる。
 その頃、西都防衛学院には、東都防衛学院から戦術担当教官の姫川美雪がやってきていた。

 沖縄での奪還作戦に引き続き、今度は孤立した学院での防衛戦に中学生が駆り出される。当然、彼らを護るべき大人はおらず、彼らは自らの意思で銃を取り、自らを護るために戦わなければならない。
 もちろん、逃げようと思えば逃げられないことはない。ただし、その後の人生で、彼らは仲間を見捨てて生き残ったという、苦い思いを噛みしめて生きなければならないだろう。それを嫌う者は、否応なく銃を取って戦わなければならない。そんな戦場が組み立てられる。

 今回は子どもよりも前に大人が傷つくことで、一応、対面は護ったような構成にはなっている。しかし、事態を外から企画した人間は、傷つくこともなく、平穏の中で暮らしている。
 アホらしいと思うかも知れないが、これは現実の一側面であるとも言える。移り変わっていく戦場において、中学生が武装する意味はどこにあるのか?果たしてこの物語は、その問いに答えを見い出せるのか?

武装中学生2045-夏-

子供を駒にして何を得る?
評価:☆☆☆★★
 2022年に成立・施行された国防教育法により、一部の中高生は軍事教練を行う学校へと進学するようになっていた。その中でも最古参である東都防衛学院に通う久坂レイジは、戦闘をさせれば最優秀の中学三年生である。
 夏休み前に彼らの学校を訪れた内閣府の官僚である巽征志郎の提案で、お調子者の桐島チヒロ、射撃の腕がピカイチである御門ミヤコ、参謀タイプの問題児・高城クマグスと共に、久坂レイジは沖縄に人を訪ねに行くことになった。その人物の名は八神トワ、僅か13歳の少女である。

 巽曰く、先輩たちによるリクルーティングと言うことだったのだが、彼女をスカウトに来ていたのは彼らだけではなかった。そのスカウトマンである米国の軍事複合体である蛇遣い(オフューカス)のアルベルト・ルースは、話し合いによる解決は不可能と見るや、力尽くでトワを攫っていこうとする。
 その場に居合わせることになった4人の武装中学生の決断とは?


 そもそも、選択肢があるのに子供に銃を持たせて戦場に送り込むという設定や、戦わないことも出来るのに自ら望んで戦場に来ていながらきれい事をぬかす輩が個人的に大嫌いなので、その時点でこの作品の評価は低くならざるを得ない。望まなくても銃を持ち、食べるために人を殺す現実が存在しているのに、美化された戦場なんて見せられても反吐が出る。
 まあしかし、日常的な感覚を持った中学生を戦場に送り込んでの反応を描くというのは、悪趣味さを除けば、平和の大切さを考えるきっかけにはなるのかも知れんね。

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