大橋崇行の書評/レビュー


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妹がスーパー戦隊に就職しました

ヒーローたちの日常生活
評価:☆☆☆☆★
 都営浅草線戸越駅から徒歩十分。国文学研究資料館の跡地に、(株)人智戦隊シュタイナーの拠点はある。それは、七罪を犯した人々を堕身させて何事かをたくらむ秘密結社薔薇十字団に対抗するため、地水風火金の力を身に宿しアストラル界で戦う組織なのだ。
 戦隊部戦闘課長の桜井リサコの指揮の下、シュタイナー・レッドの赤羽トオルが部隊を掌握しようとするのだが、彼自身も高校を中退して就職してから一年半くらいの未熟者。いくら年代が近いものばかりがメンバーだからといって、そう簡単にはまとまるわけもない。

 まず大変なのが、妹であり、シュタイナー・オレンジでもある赤羽アオイ。家ではかなりの変態さんなのだが、外面は大変良く、兄が他のメンバーに気を取られようものならば鉄拳制裁は当たり前という理不尽な存在だ。
 そんな傷心を、同僚にしてシュタイナー・ピンクの桃瀬マコトを見ることで癒すのだが、シュタイナー・ブルーの青山アンナはお堅いお姉さんという感じだし、シュタイナー・イエローの土屋ヒカルは何を考えているのか分からない。

 そして何より、この組織が株式会社であることが問題だ。国からの報奨金だけでは経営することが出来ず、彼女たちにアイドルユニットのまねごとをさせて稼いだりもしなければならない。…もっとも、本人たちは結構ノリノリなのは救いだ。
 そんな彼らの前に、エリザベト・シュタイナーという、トオルの妹を名乗る存在が現れたことで、様々な混乱がもたらされることになる。

 全般的に中途半端な印象だ。ヒーローものとしてはバトルシーンに力が入らず、アイドル活動に色ものさを出すものの最後までは押し切らず、ビジネス要素を組み込むもののビジネスへの理解が浅く、ラブコメ要素も多方面に手を広げ過ぎてまとまらず、陰謀ものとしては陰謀になり切らず、文章量だけは多い。
 次があるか分からないからやりたいことは全部やり切ったと言わんばかりで、読者よりも作者の事情が前面に出てしまっているところが、あまり商業的ではないと思われる。その結果、完成したものが面白ければ文句はないのだが…。

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