小木君人の書評/レビュー


 小木君人の書評/レビューを掲載しています。

魔女は世界に嫌われる

生き残るための旅路
評価:☆☆☆★★
 鍛冶師アルベルトの息子ネロは、ある日、帝国の兵士により無実の罪で父親が処刑されてしまったため、妹アンゼリカを連れて不帰の森へと逃げ込んだ。その森にある城の主ミドナは魔女の生き残りであり、娘のアーシェと共に暮らしていた。
 呪い返しにあって命が尽きかけていたミドナは、アーシェの魔力を目覚めさせれば、毒矢によって死んでしまったアンゼリカを生き返らせることができるとネロにささやく。

 その言葉を受けてアーシェと二人で魔導帝国跡へ向かう覚悟を決めたネロだったが、アルベルトを殺した兵士たちが、ネロとアンゼリカの首を取るため、魔女の城へと乗り込んできた。

 16歳になる娘に、自分が置かれている立場や身の守り方、各種知識を伝えないでこれまで過ごして来たミドナは、親としてなんと無責任なのだろう。子供に適切な教育を施さない親は愚かとしか言いようがない。それならば子供など作らなければよい。

森の魔獣に花束を

それまで教えてもらえなかった気持ち
評価:☆☆☆☆★
 一巻完結のハートフル・ファンタジーだ。

 有力者の家系に生まれたクレヲ・グラントは、生まれつき身体が弱かった。それでも跡継ぎになるため、厳しい教育を受けさせられていたのだが、弟ローレンスが生まれてからは父親に見捨てられ、それからは部屋に引きこもって好きな絵だけを描いてきた。
 しかしある日、クレヲは“青い薔薇の試練”を受けさせられることになる。それは、跡継ぎでもめたときに決めるための試練であり、資格者は魔獣の棲む森に分け入って、青い薔薇を取ってこなければならない。つまりそれは、邪魔者を放逐するための、体の良い試練だった。

 実際、森の中で護衛者に見捨てられたクレヲは、人食い花の少女に襲われ食べられそうになる。しかし、その少女に絵を描いて見せたところたいそう気に入られ、ペットの様に飼われることになってしまうのだった。

 人間を襲う獣がたくさんいる森で、人間を喰う魔獣の少女と暮らすことになる少年だったが、そのうちに、実家で虐げられているよりも、自分を必要としてくれる少女と暮らすことの方が楽しくなってしまう。しかし、そもそも生物としての強度が異なる二人が一緒に暮らすのは、中々にハードルが高かったのだ。

 ところでイラストのうち、接ぎ木のシーンの絵が、どう見ても挿し木にしか見えないのは、内容確認不十分という意味でお粗末すぎると思う。

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