鎌池和馬作品の書評/レビュー

新約 とある魔術の禁書目録 (14)

食べられない鍋
評価:☆☆☆☆★
 上条当麻の部屋に、理想送りを持つ普通の高校生・上里翔流によって消滅させられかけた魔神ネフテュスが転がり込んできた。幻想殺しに失望して生まれた理想送りを宿してしまい、人生を狂わされたことに怒りを覚える上里翔流は、魔神をこの世界から消滅させることを目的とする。
 そんな二人が対峙した場に、奇妙な赤と黒の生き物が現れて場を乱す。そこから現れたのは、レイヴィニアとパトリシア、二人のバードウェイ姉妹だった。上条当麻と上里翔流にそれぞれ保護された二人は、どんな物語を紡ぐのか。

新約 とある魔術の禁書目録 (13)

届かない怒り
評価:☆☆☆☆★
 真なる魔神、真のグレムリンを構成する僧正が上条当麻の前に現れる。偶然居合わせた御坂美琴と共に、アクロバイクで学園都市を疾走しつつ、僧正の撃退方法を探る上条当麻だが、全く太刀打ちできない。
 一方、御坂美琴は、自らの切り札である超電磁砲すら歯牙にかけない敵の存在と、その敵に曲がりなりにも渡り合う上条当麻の姿を見て、近くにいながらも全く並び立てない自分に腹を立てていた。

 最後に、理想送りを持つ普通の高校生、上里翔流が姿を現す。

新約 とある魔術の禁書目録 (12)

商業施設の不幸
評価:☆☆☆☆★
 妖精サイズとなったオティヌスの日常を守るため、三毛猫スフィンクスの脅威から逃れる場所を作るため、巨大複合商業ビルにお買い物に来た3人。そこに、魔神を名乗るサンジェルマン、学園都市第六位の藍花悦を名乗る人物、そして浜面仕上とアイテムの面々が遭遇する。

新約 とある魔術の禁書目録 (11)

上条当麻と食蜂操祈の思い出
評価:☆☆☆☆★
 上条当麻と食蜂操祈の出会いを軸に、雲川芹亜との関係もほのめかされ、さらには食蜂操祈の思い出に干渉した蜜蟻愛愉という存在が明らかになる。

新約 とある魔術の禁書目録 (10)

一人の少女のために世界を敵に回す
評価:☆☆☆☆★
 魔神オティヌスに力を放棄させ、正統なる裁きを受けさせようとする上条当麻は、世界を敵に回すことにした。そしてオティヌスを撃滅しようとする各勢力は、不可思議な行動を取る上条当麻を世界の敵として攻撃することにする。
 デンマークの古城にあるミミルの泉を目指して旅する二人は、各勢力の必死の攻撃を切り抜け、力を放棄して罪に服し、オティヌスの心を救うという目的を達することが出来るのか?

新約 とある魔術の禁書目録 (9)

精神戦
評価:☆☆☆☆★
 魔神オティヌスの槍の力により、世界は滅亡した。そこには、真の闇のみがあった。世界の基準点であり修復点でもある右手を持つ上条当麻は、オティヌスを倒して世界を元に戻そうとする。それに対しオティヌスは、上条当麻を絶望させて心を折り、右手を彼の中に封印しようとするのだった。
 そして始まるのは、あまたの可能性が実現した世界。その世界が幸福であればあるほど、彼に絶望をもたらす。その果てに至るのは?

新約 とある魔術の禁書目録 (8)

頼られた少女たち
評価:☆☆☆☆☆
 合衆国大統領ロベルト・カッツェ、英国女王エリザードらが、魔術結社グレムリンの本拠地である船の墓場(サルガッソー)において、魔神オティヌスを完成させるためにマリアン=スリンゲナイヤーが製造する主神の槍(グングニル)の完成を阻止するための作戦を相談している頃、目を覚ました上条当麻の両隣りには、「明け色の陽射し」レイヴィニア・バードウェイと「新たなる光」レッサーがぐったりとして寝こけていた。
 魔神オティヌス対策の切り札として身柄を予約されている上条当麻は、美少女たちを侍らして学園都市を動き回ることになる。当然、インデックスには噛みつかれ、その状況を目撃した御坂美琴には電撃を飛ばされることになるのだが…。そして、彼女たち四人を従えた上条当麻は、水着売り場で危機回避能力を試される展開となる。

 だが、危機は間近に迫っていた。偶然、居合わせた雲川鞠亜も連れ、船の墓場(サルガッソー)に向かうことになった彼らは、その意外な場所に驚かされ、ひどい混乱に巻き込まれることになる。

インテリビレッジの座敷童 (3)

終わらない恐怖
評価:☆☆☆☆☆
 インテリビレッジの高校生である陣内忍は、小手密惑歌の隣の席で寝こけながら、バスで課外授業へと向かっていた。しかし、とあるトンネルにさしかかったところで、気づくと霧の中の廃村へ放り出されていた。同様に放り出された小手密惑歌と共に、廃村の調査に歩き出す。
 警視庁刑事である内幕隼は、冤罪の疑いがある死刑囚が輸送中に行方不明となった事件を調べるため、とある廃村へと向かっていた。同様にやって来ていた菱神艶美と強制合流し、隣接する黒山電子グループの工場へと情報収集に向かおうとしたところ、菱神舞の襲撃を受ける。

 またしても村から飛び出したところで妖怪事件に遭遇するわけだが、構成がちょっと面白い。ちょっと、昔に流行った分岐型の小説めいたところもある。矛盾するようだが、ルートは一本しか描かれていないけれど。

新約 とある魔術の禁書目録 (7)

幼き少女の誓い
評価:☆☆☆☆★
 学園都市に持ち込まれた霊装を回収するという名目で、男子禁制地区である「学舎の園」の中の更衣室に配送された上条当麻は、御坂美琴らから盗撮容疑で追跡を受ける過程で、食蜂操祈と遭遇する。
 一方その頃、上条当麻を送り込んだ土御門元春は、土御門舞夏の仇を取るべく、学園都市統括理事会の貝積継敏への糸口を追いかけていた。そして、彼のブレインである雲川芹亜と対立することになる。

 その結果明らかになる計画の中核を担わされるのは、無力な少女フレメア・セイヴェルンだ。彼女を助けるために立ち上がる「ヒーロー」たちにより、学園都市には混乱がもたらされ、彼ら同士による戦闘が巻き起こる。その果てに黒幕が望むものとは?
 どう見ても今回の主役はフレメア・セイヴェルンだよなあ。

新約 とある魔術の禁書目録 (6)

通したい意思
評価:☆☆☆☆★
 学園都市の文化祭「一端覧祭」の準備中、雷神トールに声をかけられた上条当麻は、窓のないビルに幽閉されていた死なない女フロイライン=クロイトゥーネを助け出した。その彼女は、学園都市でフレメア・セイヴェルンやラストオーダーと友達になる。だが、フロイライン=クロイトゥーネは、ミサカネットワークへのアクセスを獲得するため、ラストオーダーの脳を捕食する機能を獲得していた。

 ラストオーダーを見守る一方通行、フレメアを守りたい浜面仕上、滝壺理后、麦野沈利、絹旗最愛、上条当麻の意思を尊重する御坂御琴、フロイライン=クロイトゥーネを狙うグレムリンやレイヴィニア・バードウェイたち魔術師。そこに暗部から垣根帝督が加わり、祭に盛り上がる学園都市の裏側で、大規模な戦いが各所で繰り広げられる。

 とにかくバトルがいっぱいで、各所で主人公級が色々と悩んだり気づいたりしたりして、盛りだくさんすぎる展開。キャラ増やしすぎて全てを追おうとして、まとめるためには大量のページが必要になってきた印象を受けた。

インテリビレッジの座敷童 (2)

妖怪ですらも金に換える世界
評価:☆☆☆☆★
 徹底的に懐古的な環境を維持し、差別化された酪農作物を生産することで、地域丸ごと、高付加価値化を果たした田舎であるインテリビレッジには、妖怪が住んでいる。そしてその妖怪にまつわる伝承を改ざんし、利用するシステムがパッケージだ。
 そんなインテリビレッジ納骨村に住む高校生の陣内忍の家には、数多くの妖怪が住み着いている。昔からいる怠惰で巨乳な座敷童に加え、パッケージに組み込まれていた露出狂の雪女、猫又やサキュバスという、社会の裏側の組織から流れてきた妖怪たちは、なぜか忍を慕っている。登校日で学校に行けば、富豪クラスメイトの小手密惑歌と、スクール水着を着て宿題をやったりする仲でもある。

 陣内忍は米咲尋という、唐傘おばけたちに慕われる小学生を助けることになったり、菱神舞は京都で飴村流という少女の家系をターゲットにした陰謀に巻き込まれたり、叔父で刑事の内幕隼は東京で人面瘡にまつわる事件を菱神艶美から知らされたり、それぞれがそれぞれの場所で関わった事件が、あるひとつの目的でつながっていく。
 やっぱり今回も、小手密惑歌は影が薄かったな。スクール水着でしっかり欲望を刺激してアピールはしていたけど、単なるエロ要員と、情報提供以外には機能していなかった気がする。

新約 とある魔術の禁書目録 (5)

猜疑心の行き着く先を確かめに
評価:☆☆☆☆★
 魔術結社グレムリンの野望を打ち砕くために東欧のバゲージシティでボロボロになっていたはずの上条当麻は、いつのまにやら、学園都市の文化祭である「一端覧祭」の準備に真っ盛りの学園都市に戻ってきた。そんな彼の前には、魔神になるはずだった魔術師オッレルスが現れ、フロイライン=クロイトゥーネという存在が学園都市に災厄をもたらそうとしていると告げる。
 吹寄制理にしつけられ、文化祭準備の雑用係に走り回る上条当麻の前に、グレムリンの攻撃担当である雷神トールが現れ、フロイライン=クロイトゥーネという女性が学園都市に監禁されていると教えるのだった。

 ハワイ、バゲージシティと他人にいいように利用され、他人を疑うことを覚えた上条当麻は、救出作戦に同行することに尻込みするのだが、雷神トールに散々炊きつけられ、自分なりの謀略を持って事態に介入することになるのだった。

 またもや学園都市に制御不能の巨大な力が現れ、それにちびっこいやつらが先に遭遇する感じ。今度はインデックスじゃないよ。そして、保護者の心配をよそに、ちびっこいのは勝手にターゲットにされたりする模様。
 いよいよ前夜は終わり、次巻は「一端覧祭」の本番だ。

ヴァルトラウテさんの婚活事情

無邪気さに翻弄される生真面目なお姉さん
評価:☆☆☆☆★
 ブリュンヒルデ、ゲルヒルデ、オルトリンデ、ヴァルトラウテ、シュヴェルトラウテ、ヘルムヴィルゲ、ジークルーネ、グリムゲルデ、ロスヴァイセからなるワルキュリエ九姉妹の四女ヴァルトラウテは、人間界ミズガルズで少年ジャック・エルヴァンと出会う。
 無邪気な少年に押し切られ、世界樹ユグドラシルを登攀し、ヴァルトラウテのいる天界アスガルドまでたどり着けば結婚することになってしまった。

 少年が、戦死者の軍勢エインヘルヤルを拡大したい主神オーディンの策略の犠牲となることを嫌ったヴァルトラウテは、結局、自分から負けを選び、少年と別居ながら結婚することとなった。口では色々というものの、本人はまんざらでもないらしい。
 しかし、少年と会っても鎧すら脱がないヴァルトラウテに業を煮やしたフリッグやフレイヤの女神たちは、少年を唆し、ヴァルトラウテに女の悦びを教えようとする。また、ロキも少年を利用し色々と画策しているようで…。

 北欧神話の神々にラブコメさせるお話。彼ら彼女らにはラブコメより昼メロの方が似合うと思いますけどね。

簡単なアンケートです

作者のアイデアノート
評価:☆☆☆★★
 作者のアイデアノートを一冊の文庫にした感じの本だ。24本の掌編を紹介し、その後、4人の女子大学生と1人の男子大学生を登場させ、その掌編が現実にもたらす影響を、イエスノー相性診断形式で、ヒロイン4人分のエンディングとしてまとめることで、一応、一冊の本としての体裁を整えている。
 全く他のシリーズとの関係性は無いことを明言しておこう。売れている作家で無ければ、本にまとめるレベルでは無い。なぜなら、売れないと思うから。

ヘヴィーオブジェクト 第三世代への道

騎士の役を任じしは
評価:☆☆☆☆★
 世界中のあらゆるところで、クリーンな戦争を支配する最強兵器オブジェクトを生身でブチ壊したり、予想もしない陰謀に突き当たって色々とグチャグチャにしてきた結果、ついに軍の上層部は、ヘイヴィア・ウィンチェルとクウェンサー・バーボタージュを、窓際部署に左遷することを決めた。
 そうして送り込まれたのは、クレア・ホイストを筆頭とする、変わり者のオブジェクト設計者たちを隔離する南の島だ。窓際部署らしく意味のない仕事をさせられ、クレアを護衛するユニコーン部隊から小突きまわされ、それでいて安全で快適な環境を与えられるという状況に、多くの鼻つまみ兵士は腐っていくという。

 そしてそんな戦場の楽園ですら問題を起こしたヘイヴィアとクゥエンサーは、今度はドックタグもつけられない非合法な作戦のため、北極方面へと駆りだされてしまう。そしてそこにも、ユニコーン部隊と、彼らが関わっているらしい不正の影があったのだ。
 やがて二人は、正統王国ニコラシカ王家の継承問題に巻き込まれていくことになる。

 今回は実は主役以外の人が、お姫様を影ながら見守る騎士の役を割り当てられていて、さしものヘイヴィアとクウェンサーも、ちょっとふてくされ気味。
 まあでも、第三世代のオブジェクトと当たる見せ場も与えられているし、最強兵器の隙がそれを運用する人間にあるというテーマも継続中なので、次のオイシイ目を見る機会に期待して欲しいところ。でも実は、影で色々と良い目を見てるかもしれない。

インテリビレッジの座敷童

妖怪すらも利用する
評価:☆☆☆☆★
 徹底的に懐古的な環境を維持し、差別化された酪農作物を生産することで、地域丸ごと、高付加価値化を果たした田舎を、インテリビレッジと呼ぶ。観光客たちの懐古趣味を満足させる仕組みを、テクノロジーによって維持するのだ。
 しかしそのシステムは、現代化によって失われたもの、妖怪も内包することになった。そして実在が確認されれば、妖怪すらも利用しようとするのが人間という存在らしい。妖怪の伝承を改ざんし、犯罪行為に利用する仕組みが「パッケージ」なのだ。

 そんなインテリビレッジの高校生である陣内忍の家には、怠惰で巨乳な座敷童のお姉さんが住みついている。そして陣内忍自身には妖怪に好かれやすい性質があるらしく、それを利用して変わり者の富豪クラスメイト小手密惑歌にもてあそばれたり、雪女に求婚されたりするのだ。
 このインテリビレッジを嫌って飛び出した内幕隼は警視庁に奉職したのだが、やはり何の因果か、「パッケージ」がらみの事件によく遭遇する。そこによく現れるのは、名探偵属性の中学生の菱神艶美だ。そして彼女の姉の菱神舞は、警察ですら介入不可能な妖怪絡みの事件に介入する、怪物級のエージェントなのである。

 唯一、小手密惑歌の存在価値がちょっと薄めだったかなという気もする。中二病から脱却し、社会システムの恐ろしさみたいなところを描くのに移行中なのかな。

新約とある魔術の禁書目録 (4)

思惑を無視した騒乱
評価:☆☆☆☆★
 レイヴィニア=バードウェイが主宰する魔術結社グレムリンが扇動する形で結成された反学園都市サイエンスガーディアンが、東欧のバゲージシティにて開催する格闘大会「ナチュラルセレクター」には、様々な勢力から異能の持ち主が集まっていた。
 上条当麻はグレムリンの幻想を打ち砕くため会場に潜入するのだが、出場選手のサフリー・オープンデイズの着替えシーンに乱入してしまい、逆に打ち砕かれる。

 そんなコントを繰り広げているうちに、バゲージシティには、グレムリンからウートガルザロキ、マリアン=スリンゲナイヤー、シギンという魔術師が、学園都市からは木原一族の木原乱数、木原円周、木原病理が送り込まれ、大会を無視した闘争が繰り広げられる。
 大会に参加しているものの裏事情は全く知らない甲賀ロリ忍者の近江手裏や、学園都市から人を追って来たメイドの雲川鞠亜は、知らず知らずのうちに事態の中心部に飛び込み、その身を危険にさらすことになる。

 上条当麻の活躍シーンよりも、それ以外の登場人物たちの戦いが群像劇として描かれる構成となっている。木原加群という、木原一族の異端が乱入したり、一度は破れ去ったと思った人物が意外な形で復活したり、真っ当な力で異種格闘技戦を繰り広げられる、普通の魔術師や能力者の戦いが描かれるわけだ。
 旧約は神につくられた人間の営みを描いているけれど、新約は神の子とその信徒たちの言行録。そう考えれば、上条当麻ではなく普通の信者たちが主役となるのは、理にかなっているのかもしれない。

新約とある魔術の禁書目録 (3)

勢力と正義の混戦状態
評価:☆☆☆☆☆
 第三次世界大戦終結後に世界の表舞台に登場した魔術と科学を融合した組織・クレムリンの魔手が伸びたのは、合衆国の政治中枢だ。
 副大統領以下、重要ポストや議会の過半数を汚染されていることに気づいた大統領、ロベルト・カッツェは、ワシントンD.C.から最も離れた領土であるハワイで、ただひとり、反撃の狼煙を上げようとしていた。無謀さと無思慮さを嘆く大統領補佐官のため息つきで。

 一方、明け色の陽射しのボスであるレイヴィニア・バードウェイに引き連れられ、ハワイの大地を踏んだ上条当麻や御坂御琴、一方通行らの学園都市の戦力たちは、クリムゾンがハワイで引き起こそうとしている大惨事を阻止するため、行動を開始する。
 そんな彼らの前に現れたのは、学園都市と合衆国に踏みつけにされる、第三次世界大戦の敗者・ロシア成教系の魔術師、サローニャ・A・イリヴィカらだった。彼女たちは幻想殺しへの対策を携え、自らの故国を列強の支配から守ろうとする。

 今回は国家側のヒーローとして、合衆国大統領ロベルトが無謀にも参戦する。彼の目的は、自国の国益と国民を守護するという、シンプルなものだ。そこにあるのは善悪ではなく、それこそが正義であるという強い確信のみ。
 一方、上条当麻という人物も、自分の信念に基づいて、魔術と科学の闘争に参加し、数多くの人々を救ってきた。その際には多くのものを傷つけたりもしたけれど、結果として正しかったという事実が、彼の心を正当化してきたはずだ。もしそれが崩壊したら…。そんな方向で、物語は進んでいく。

ヘヴィーオブジェクト (5) 死の祭典

無茶は無茶でもちょっとまし
評価:☆☆☆☆★
 いつものヘヴィーオブジェクト同士の“クリーンな”戦争から目先を変えて、テクノピックという、ドーピングあり、あらゆる技術の利用ありの、世界各国の威信と技術力がぶつかり合う競技大会の様子を描く番外編だ。
 このため、クウェンサーとヘイヴィアたちやオブジェクトの出番はなく、通常兵器や航空戦力によるバトルシーンが盛り込まれている。

 あれ、競技大会なのになぜバトルシーンなの?と思った人。本来ならバトルシーンなどあり得ない企画なのだけれど、この大会は代理戦争の側面が強く、非公式な妨害行為はアリアリなのだ。だから、上位選手に対する妨害行為は当たり前。
 そしてその大会の裏で、陰謀を逞しくする一勢力もあり、主役であるマリーディ・ホワイトウィッチは、大会に、戦闘に、大忙しになる。

 いつもの無敵兵器に対する無茶よりは、幾分、現実的な無茶かもしれない。

ヘヴィーオブジェクト (4) 電子数学の財宝

クリスマスのサービス
評価:☆☆☆☆★
 オセアニアで水着休暇だ!度重なる連戦に披露するフローレイティア・カピストラーノ少佐率いる部隊に与えられる休暇…だったのだが、それを楽しみにしていたヘイヴィアとクウェンサーは、作戦展開中にゲリラ兵に拉致され、資本企業のヘヴィーオブジェクトを破壊するように脅される。…みずぎ。
 その危機を乗り越え、フローレイティアの爆乳ビキニミニスカサンタにクウェンサーが窒息させられそうになっているとき、ヘイヴィアはまたも、オセアニアの都市に対するテロ事件に巻き込まれていた。不運。

 今回の事件の背景にあるのは、フローレイティアたちの活躍もあって空白地帯となったオセアニアに対する支配権の争い。そこに、信心組織の異端枢機卿と彼が持つ電子数学の財宝、人工プラチナの製造方法と、彼を殺すべく追いかける女性天罰集団ヴァルキリエ、そしてそれらを利用しようとする大国の思惑が交錯する。

 ヘイヴィアとクウェンサーが歩兵で最強兵器を壊し続けるのにも飽きて来たので、彼らの知名度が利用されるパターン、逆にお姫さまのベイビーマグナムがオブジェクト以外で攻撃されるパターン、そしてオブジェクトの戦場の外で繰り広げられる謀略戦が描かれる。
 見どころは女性キャラの、真夏のクリスマス衣装。他は…歩兵が戦場全体を語るのは立場的に難し過ぎるね。

とある魔術の禁書目録SP(はいむらきよたか)

文庫未収録の短編集
評価:☆☆☆☆☆
 雑誌等に掲載された、電撃文庫未収録の短編集。一部、マンガ形式になっている部分があるので、電撃文庫ではなく、大型コミックスサイズでの出版となったのだろう。

「ステイル=マグヌス」
 オーダーを受けて学園都市へとやって来たステイルは、パトリシア・バードウェイという少女と出会う。彼女の姉は"明け色の陽射し"という魔術結社のボスであるが、彼女自身は魔術とは全く関係ない人間だという。
 そんな彼女を狙う魔術師の存在に理不尽さを感じたステイルは、自分の信じるものを貫くために行動を開始する。

「マーク=スペース」
 パトリシアが科学者として派遣された海洋調査船が、魔術と科学の連合部隊により沈められる。その背景には、"宵闇の出口"という魔術結社の条約違反があるらしい。
 ともかく妹の救出をボスのレイヴィニア・バードウェイに命令されたマークは、現場を調べるうちに、攻撃を許容できない事実を知ることになる。

「上条当麻」
 火星から学園都市に届いた謎の無線通信。タコのえいりあんだと騒ぐインデックスをつれて天文台へ散歩に行った当麻は、"暗闇を拭う夜明け"のフレイスという魔術師と警備員の戦闘に巻き込まれる。
 その騒動の中で明らかになるエイリアンの正体と、フレイスの目的とは?

「初春飾利」
 訓練中に呼び出された初春は、人工衛星を搭載したトレーラーがコントロールを奪われた事件の解決に加わることになる。止めようとすればトレーラーは横転し、搭載された1.5tのヒドラジンが散乱してしまう。
 独断専行した黄泉川愛穂と協力し、トレーラーのコントロールを取り戻すべく尽力するのだが…。頭脳労働専門の初春が身体を張って絆を守ろうとするエピソードだ。

新約 とある魔術の禁書目録 (2)

みんなで魔術のお勉強
評価:☆☆☆☆★
 北極海から学園都市へ生還した上条当麻は、一方通行、浜面仕上とアドレス交換した。そして、上条当麻を助けたレイヴィニア・バードウェイによる第三次世界大戦の背景の解説と、これから彼らが対峙するであろう組織の思惑を知るため、学生寮で魔術講義を聞くことになる三人。その過程で、彼らにまつわる女性陣たち、例えば御坂御琴やインデックス、その他多くの女の子たちが、彼らの周りに集まってきてラブコメる。
 一方、神裂火織は、第三次世界大戦の残照とも言える、高高度に展開する謎の物体、仮称・ラジオゾンデ要塞の安全な排除に取り組んでいた。魔術か、はたまた科学の産物か、第三次世界大戦の結果訪れた世界は、これまでのセオリーで対処できない現象が起きている。そしてこの要塞の目的とは…。

 第三次世界大戦の背景や、魔術の仕組みなど、これまでは何となくで過ごしてきた設定のつながりを詳細に説明する感じの巻になっている。御坂御琴が最初と最後でかなり良い働きをしてくれているのでラブコメ分はある程度あるが、それがなければ設定資料集にストーリーをつけたといっても良いとも思える内容だ。
 最後には、これから上条当麻が戦う組織の名前が明かされる。そして戦場は、ロシアからアメリカへと移っていくようだ。

 今回はイラストのつけ方がかなり良いと思える。いい場面を選んでいる。

新約 とある魔術の禁書目録

乱される平和な日常
評価:☆☆☆☆★
 ヒーロー・上条当麻が北極海の冷たい海に消えた後、第三次世界大戦から生還した面々は、帰還した学園都市でそれぞれの平和を享受していた。
 浜面仕上は、滝壺理后や麦野沈利、絹旗最愛と共に新生アイテムを結成し、前へ進むための生活の手段を得ようとする。アクセラレータは、ラストオーダーやミサカワーストと共に、平凡な日常生活に慣れようとしている。

 そんなときに、浜面仕上が出会ったのが、かつて駒場利徳が守ろうとした少女、フレメア・セイヴェルンだ。彼の遺志を継ぐために彼女を守ろうとする浜面だったが、それは、学園都市の闇への新入生、黒夜海鳥らの策謀の一環だった。そしてその策謀は、アクセラレータたちをも巻き込んでいく。
 学園都市を舞台に繰り広げられる、科学兵器を駆使した戦闘。圧倒的兵力差に、防戦一方となる浜面たち。闇からの卒業生たちを巻き込もうとする新入生の意図はどこにあるのか?

 御坂御琴や禁書目録たちは今回の物語に関わって来ない。彼女たちは暗い目をして街をさまようだけだ。
 上条当麻不在の学園都市で繰り広げられる戦いは、超能力者たちの能力を利用した科学兵器戦。魔術は登場しないため、別シリーズ「ヘヴィーオブジェクト」と内容的にかぶっている気がしないでもない。
 全てをビシッと解決してくれるヒーローのいない戦いは、様々な人物たちの協力で解決に導かれるのか、それとも…。この流れで今後も続くのかと若干不安になっていたので、最後の登場シーンには安心しました。

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ヘヴィーオブジェクト (3) 巨人達の影

巨大兵器の足元で
評価:☆☆☆☆★
 始まりの場所アラスカに戻って来たクウェンサーとヘイヴィアは、オブジェクトの残骸回収任務で情報同盟のおほほが口癖のエリートが乗るオブジェクトとまたしても生身で対峙することになる。腰が引け気味のヘイヴィアに対し、積極的に介入するクウェンサーに勝算はあるのか?
 今回はオブジェクトのハードウェア面の凄さよりも、操縦者やソフトウェア、運用面などの視点で戦場が描かれます。フローレイティアは前巻で出ずっぱりだったせいか控えめ。代わりに新たな女性士官や女性兵士が登場します。最強兵器が闊歩する戦場でも、人間の活躍の場はいっぱいあります。

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (22)

大戦の終結、そして
評価:☆☆☆☆☆
 第三次世界大戦は終結へと向かうわけだが、主人公3人+1は、その間に目的を果たすために足掻き続ける。本来なら科学サイドのトップに君臨するアクセラレータはラストオーダーを助けるために魔術サイドに近づき、滝壺理后を助けることに成功した浜面仕上はレベル0にも拘らず、科学サイドの深奥に近づく結果となってしまう。
 一方、フィアンマとの対決が続く上条当麻は、世界の救い方についての考え方をぶつけ合う。彼らがそれぞれの強大な敵と戦う間に、戦争をする兵士たちはどう動くのか。そして、全ての決着がついたように思えたとき、最悪の災厄が再臨する。

 アクセラレータや浜面はそれぞれ、これまでとは違う自分を支える柱を自覚し、御坂美琴はようやく望んだ位置まで到達した。そして、上条は…。今回で神の右席を中心としたストーリーはエピローグを迎え、また新たな展開へのプロローグが始まる。
 それにしても浜面くんはやたらと格好良くなった。上条さんを食ってしまいそうな位に。そしてアクセラレータは自身を覆っていた仮面がきれいに取れました。

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (21)

揃いつつある対抗手段
評価:☆☆☆☆★
 フィアンマを中心とする争いはまだ解決しないので、お話としては次巻に続いています。

 上条当麻はもちろんのこと、アクセラレータや浜面仕上、アックアやステイル・マグヌス、御坂美琴たちがバラバラに動きながらも、結果としては同じ方向に向かうという構成になっている感じ。フィアンマの力は強大で一人では対抗できないけれど、各所でそれぞれがそれぞれのなすことを成し遂げることで、何とか乗り越えることが出来るかもと思わせてくれます。

 表紙にあるような状況が訪れるのはかなり最後の方なので、実際に描かれるのは次巻になると思われます。

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ヘヴィーオブジェクト (2) 採用戦争

南半球を転戦
評価:☆☆☆☆★
 軌道エレベーターかマスドライバーかという宇宙開発技術の争いが、超巨大兵器オブジェクト同士の対決に発展する。前回もオブジェクトに対して生身で挑んだヘイヴィアとクウェンサーは、南極大陸から南米大陸へ渡り北上し、またしてもオブジェクトと対峙する。
 彼らの上官フローレイティアが貴族でありながら軍隊にいる事情などもからめつつ、巨大兵器に吹っ飛ばされながら奮闘する二人の姿が見られるだろう。

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (20)

傷つきながらも前に進む理由
評価:☆☆☆☆★
 科学パート、魔術パートみたいに分かれて進行していたストーリーも、ついに合流の局面を迎えたらしい。右方のフィアンマの政治的暗躍により、ロシアが学園都市に宣戦を布告、交戦状態に突入するという情勢の下で、上条当麻、一方通行、浜面仕上という、学園都市の異なる面を体現する三名の軌跡が、極寒のロシアの地で交錯を始める。

 学園都市最強のレベル5という力を持ちながらも、結局暴力による流血しかもたらすことが出来ずに、ラストオーダーという一人の少女すら満足に助けることが出来ない現実に、アクセラレータ強い憤りを感じる。なぜレベル0の少年にすら出来ることが、自分の力では出来ないのか。
 その弱さを見透かしたように仕掛けられる、学園都市の戦術は卑劣だ。突きつけられる現実の前に、いったんは全てを手放してしまおうと思うのも無理はない。なぜなら、彼の前には、レベル0ながらレベル5の自分を戦慄させ、かつ、全てを救ってしまうヒーローがいるのだから。
 しかし、そんなヒーローだと思われている上条当麻も単純にはいられない。インデックスを救うためにフィアンマの前に立ちはだかるものの、手段を選ばないフィアンマに抗する術はほとんどない。そして、フィアンマの告げる言葉は上条当麻の罪悪感を刺激する。自分は本当に正しいことをしているのか。そんな迷いに捕われてしまうのだ。

 今回は第三次世界大戦と銘打っているだけあり、日本政府も名前だけ登場する。学園都市はやはり日本国内にあったのだなと再認識した。ただ、本当に名目だけで、学園都市の圧倒的科学力による抑止力(今回は実際の防衛力だが)の前に、ほとんど傀儡状態みたいなものの様ですね。
 だからロシアは学園都市に宣戦布告したのでしょうけれど、主権国家の一地方都市に交戦権というものは国際法上存在するのかな?専門家ではないから分からないけれど。ハーグ陸戦条約やジュネーブ条約も適用対象外になるのかな?

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (19)

行動原理はただひとつ
評価:☆☆☆★★
 偽悪的なことを叫びながら、アフターケアまでバッチリの人助けを行うアクセラレータと、イマジンブレーカーもないのに体を張る浜面仕上が活躍する裏面。冒頭扉に、13、15巻、SS1、2巻を手元に置いて読むよう注記がある様に、ポツポツバラバラに登場していた話題がつながる。でも、アクセラレータの理解力はすごい。たったあれだけの情報から理解してしまうとは…。
 今回の物語を一言で表現するならば、能力の限界を弁えて対策しているヤツが強い、ということかな?後で、なるほど!と思えるように、もう少し分かりやすい伏線の張り方にした方が良いとも思うけど…もろもろ。

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (18)

それぞれに活躍のチャンスは与えられる
評価:☆☆☆☆★
 作中の英国は核兵器を保有していないなど、現実とかなり違います。これを取り上げることによって、英国が弱いという構図を作れた以上、強力な魔術と比べても、核兵器が遜色ない効果を生むということなのでしょう。また、この世界の中では国際的な調停機関も登場しないし、日本政府や日本企業の存在感は皆無に等しいですよね。この辺にもこだわりがあるのでしょうか。
 今回は、前巻で扱いがぞんざいだった英国女王が格好良く描かれています。あと、アックアもオイシイところを持っていく。英国から遠く離れた学園都市にいる御坂美琴にも、ピンポイントで活躍のチャンスが与えられる。その分、上条当麻の活躍の幅は小さい気もするが…しかし、あれだけ攻撃をくらってよく死なないな、彼は。
 そして最後には、新たな敵の登場と、新たな危機の発覚。次巻は海外転戦?

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (17)

英国女王の扱いがかなりスゴイ
評価:☆☆☆☆★
 出頭要請という名の拉致をされた上条当麻とインデックスは英国の地を踏む、と思いきや、乗り合わせた飛行機がハイジャックされるというトラブルに巻き込まれる。何とかトラブルを乗り越えて到着した地で英国女王に謁見したものの、その後に待っていたのは更なるトラブルだった。
 機内で当麻が機長にいったん拘束されるシーンがあるのは良い描写の気がする。あと、最後のシーンは英雄譚ぽくて格好良いと思う。

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とある魔術の禁書目録(インデックス) SS (2)

数珠つなぎの短編集
評価:☆☆☆☆★
 平均すると1話10ページ程度の短編集。この分量から見て分かるように、1話1話それ自体に盛り上がりがあるわけではない。上条当麻の知らないところで起きていた、エピソードをいくつかの軸で連ねたものといった感じらしい。
 この軸のうち、明示されているのは「原石」というもの。学園都市で育成されている、人為的に作られた能力者ではなく、自然発生した能力者が原石と呼ばれるらしい。学園都市に対抗すべく繰り広げられる大国の策動と、それに対するカウンター、という感じでまとまっている。
 あと特徴的なのは、御坂パパママとか上条パパママとかが出てくるところ。子供たちが何かやっているだけでなく、親たちも何か関わりがありそうですね〜。

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ヘヴィーオブジェクト

現実に起こせないことは物語で起こせばよい
評価:☆☆☆★★
 巨大移動要塞オブジェクトによるガチンコ決戦以外の何も戦場に影響を与えなくなってしまった世界で、味方のオブジェクトが負けて殲滅戦が繰り広げられることになった戦場にたまたまオブジェクトの勉強に来ていた学生が、捕虜になりかけていた少女パイロットを救出し、敵のオブジェクトを生身でぶっ壊す、というところから立ち上がり、次々と別の戦場に送られて、蟻が象を倒す戦いに投入されていくお話。
 こんなこと簡単にやられちゃったら、真面目に兵士を育成したり軍事予算を投入する気力もなくなっちゃうよ、という様な指摘はあるが、ともかく、無敵の存在に対して勇気と知恵と工夫で挑むという構図は、オトコノコのあこがれでありワクワクする。
 無力な存在が微力を尽くして強力な力に挑むという、この構図は、作者の別シリーズである「とある魔術の禁書目録」にも通じるものがあるだろう。どうやらこの作品もシリーズ化されるらしいが、前述の作品と同様の展開になるのか、それとも違う方向に進むのか、いまの所はよく分からない。

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とある魔術の禁書目録(インデックス) (10)

都会の夜空は暗い
評価:☆☆☆★★
 世の中を悪くしようと思っている人なんてきっといない。誰だって、よりよい世界をつくろうと思っているはずなんだ。それが人のためであれ、自分のためであれ…
 学園都市に潜入したローマ正教の運び屋と上条、それぞれの正義の衝突。決着はいかに…。前巻からの続編です。
 正義と正義の衝突というテーマから見ると、互いの正義が何によって立つのか、という内面の描写がちょっと弱かったかなぁ、という気も。特に、オリアナについては。最後の決着のつけ方も、悪対悪のような雰囲気になってしまって、一貫性を欠いてしまったようにも感じます。
 しかし、まさにオリアナのように一度使ったアイデアは2度使わないように見える創作姿勢は素晴らしいと思います。

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