川原礫作品の書評/レビュー

アクセル・ワールド (23)

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン プログレッシブ (6)

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン プログレッシブ (5)

評価:☆☆☆☆☆


アクセル・ワールド (22) 絶焔の太陽神

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン (20) ムーン・クレイドル

評価:☆☆☆☆☆


絶対ナル孤独者 (4) ―刺撃者 The Stinger―

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン (19) ムーン・クレイドル

評価:☆☆☆☆☆


アクセル・ワールド (21) -雪の妖精-

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン (18) アリシゼーション・ラスティング

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン (17) アリシゼーション・アウェイクニング

評価:☆☆☆☆☆


アクセル・ワールド (20) ―白と黒の相剋―

評価:☆☆☆☆☆


絶対ナル孤独者 (3) ―凝結者 The Trancer―

評価:☆☆☆☆☆


ソードアート・オンライン プログレッシブ (4)

アインクラッド第五層
評価:☆☆☆☆☆
 アインクラッド第五層へ到達したキリトとアスナは、眺めの良いレストランで食事をしたり、遺跡エリアで遺物拾いをしたりして、楽しい時間を過ごす。しかし、遺跡と言えば、当然、出現するモンスターはレイス系であり、それに遭遇したアスナの反応は?
 一方で、まだラフィン・コフィンという名前は明らかにならないながら、攻略組二大ギルドに潜入して暗躍するPKerの存在に、キリトは神経を尖らせ、彼らの企みの妨害のために身を危険にさらすことになる。

アクセル・ワールド (19) 暗黒星雲の引力

赤の決断
評価:☆☆☆☆★
 スカイ・レイカーと共に再び帝城へと潜入したハルユキは、そこでトリリード・テトラオキサイドとその師匠であるグラファイト・エッジと再会する。そしてそこで、最後の神器「揺光(ザ・フラクチュエーティング・ライト)」の存在を目撃するのだった。
 一方、二代目赤の王は、その幹部を招集し、驚愕の宣言をするのだった。

ソードアート・オンライン (16) アリシゼーション・エクスプローディング

野戦
評価:☆☆☆☆★
 暗黒神ベクタことガブリエル・ミラー率いる侵略軍50,000を食い止めるため、整合騎士ベルクーリは整合騎士および人界守備軍5,000を率いていた。整合騎士の無双により数的劣勢は補われたかに思えたが、暗黒術師ギルド総長ディー・アイ・エルは、味方すらもいけにえにして、大規模術式による整合騎士殲滅を量る。互いの策が飽和状態に達し、ついに均衡が崩れようとした時、彼らの前に現れたのはアスナだった。
 一方、抵抗する整合騎士らを殲滅するため、ガブリエル・ミラーらは現実世界を巻き込んだ策を実行する。それを察したユイは、ある対策を講じるのだった。

アクセル・ワールド (18) ―黒の双剣士―

怪しい黒鉛
評価:☆☆☆☆★
 加速研究会の本拠地である白のレギオンに領土戦を挑むためには、黒のレギオンは緑のレギオンの協力を得なければならない。その会談のため、渋谷第二エリアに赴くハルユキたちの前に、元四元素であるグラファイト・エッジが、緑のレギオンの幹部シックス・アーマー第一席として現れる。
 また、赤のレギオン幹部のパドさんの親のエピソードが語られる短編を収録。

絶対ナル孤独者 (2) ―発火者 The Igniter―

酸素愛
評価:☆☆☆☆☆
 状況終結後に全ての人から自分に関する記憶を消去してもらうことを条件に、ルビーアイの能力者と戦う組織に身を投じた、孤独というジェットアイの能力を持った空木ミノルは、安須ユミコに連れられ、その本部を訪れる。
 そこで伊佐理々という、小学生ながら全ての問題を解く能力を授かった少女から、彼の能力の秘密が未だ全く明らかになっていないことを知らされる。そんな時、かつてユミコの相棒を脳死状態に追い込んだ発火者が再び東京に現れたとの情報がもたらされるのだった。

ソードアート・オンライン プログレッシブ (3)

スニーキングミッション
評価:☆☆☆☆☆
 第四階層に到達したキリトとアスナを迎えたのは、移動経路が水路のフィールドだった。ぷかぷか水に浮かんで最寄りの街にたどり着いた二人は、ベータ―テスト時代との差分から、専用ゴンドラ製作クエストの存在に気付く。そのゴンドラを用いて開始されたのは、スニーキングミッションだった。
 そしてダークエルフ騎士キズメルに関わるキャンペーンクエストも新たな展開を迎える。カーディナルシステムの規格外さが徐々にあらわになり始めた。

アクセル・ワールド (17) 星の揺りかご

交渉の場に訪れる黒い影
評価:☆☆☆☆★
 加速研究会会長がオシラトリ・ユニヴァースの王ホワイト・コスモスであることが明らかになったものの客観的な証拠は何もなく、ISSキット本体を破壊したもののウルフラム・サーベラスのボディーと能美征二の残留思念、スカーレット・レイン/上月由仁子から奪った強化外装で構成された災禍の鎧マークIIは敵の手に落ちた。
 客観的な証拠を確保するためには、オシラトリ・ユニヴァースに領土戦で勝つしかなく、領土戦を挑むためにはネガ・ネヴュラスの領土と彼らの領土が接していなければならない。そのためには、彼らの間に領土を持つグレート・ウォールの王グリーン・グランデと共闘する必要がある。シルバー・クロウ/有田春雪は、ライム・ベル/倉嶋千百合、シアン・パイル/黛拓武、ブラック・ロータス/黒雪姫、スカイ・レイカー/倉崎楓子、アーダー・メイデン/四埜宮謡、アクア・カレント/氷見あきら、大天使メタトロンは交渉に臨むのだが…。

ソードアート・オンライン (15) アリシゼーション・インベーディング

アリス争奪戦
評価:☆☆☆☆☆
 ラースの海上研究施設にいる菊岡誠二郎を訪ねた結城明日奈は、アーティフィシャル・レイビル・インテリジェント・サイバネーテッド・イグジスタンス(高適応性知的自立存在)アリスを強奪しようとする米国の意志を受けたPMCの襲撃に巻き込まれてしまう。メインコントロールルームを奪われたものの、アクセス権をほぼロックした比嘉タケルは、桐ケ谷和人の覚醒に、システム内からの接触が有効だとの可能性を示唆する。
 自発的行動が取れなくなったキリトを引き取り、生まれ故郷の村に戻った公理教会整合騎士アリス・シンセシス・サーティは、村長である父に受け入れてもらえず、手間仕事を請け負って生活の糧を得つつ、穏やかに暮らしていた。しかし、間もなく人類の敵が攻めてくることを知らされるのだった。

絶対ナル孤独者 (1) ―咀嚼者 The Biter―

宇宙からの来襲者
評価:☆☆☆☆★
 2019年8月に地表に落下したサードアイという異星由来の生命体は、人類の一部に寄生した。ルビーアイと呼ばれることになるサードアイが寄生した人物は欲望のタガを外されて人外の力で人々を傷つけ、ジェットアイと呼ばれることになるそれが寄生した人物は、人外の力を理性によってコントロールし、ルビーアイを捕まえるための組織、厚労省安全衛生部特別課が設立された。

 運動も勉強もパッとしない地味な生徒である空木ミノルは、あるとき、奇妙な石が身体について離れないことに気付いた。体力も以前より飛躍的に向上している。しかし、保護者である由水典江との平和な生活には何の悪影響ももたらさないため、特に気にせず過ごしていた。
 ところが、同じ中学で陸上部の箕輪朋美に、朝のランニング中に声をかけられた頃から物語が動き始める。ある条件で、自身の周囲に見えない殻のような何かが発生するようになったのだ。それは衝撃だけでなく、音も通さない。

 それでも日常を送る空木ミノルだったが、偶然、箕輪朋美を襲ったバイターと呼ばれる連続噛殺殺人犯に遭遇したことで、特別課課長の氷見や、アクセラレータというコードネームで呼ばれる安須ユミコと知り合うことになる。

ソードアート・オンライン (14) アリシゼーション・ユナイティング

立ちふさがる盟友
評価:☆☆☆☆★
 最高司祭アドミニストレータを倒すため最上階へ向かう公理教会整合騎士アリス・シンセシス・サーティとキリトの前に現れたのは、公理教会整合騎士となったユージオだった。
 《青薔薇の剣》を盟友たるキリトに向けてくるユージオに対し、キリトは必死の説得を試みる。

 果たして彼らは元老長チュデルキンと共に最高司祭アドミニストレータを下し、最高司祭カーディナルの悲願を達することができるのか?

ソードアート・オンライン プログレッシブ (2)

3人パーティー
評価:☆☆☆☆☆
 第3層に進んだキリトとアスナは、キャンペーン・クエストに挑むことにする。このクエストは、対立する黒エルフと森エルフのいずれかに加勢し、連続するクエストをクリアしていくというものだ。
 キリトのベータテスト時の知識によれば、クエスト発生イベントである黒エルフと森エルフの戦士の一騎打ちのいずれに味方しても、双方の戦士は死んでしまい、死に際に秘鍵を託されるはずだった。しかし、アスナが死力を尽くして戦闘に挑んだ結果、助力した黒エルフの騎士キズメルが生き残るという、キリトにも知識のない展開になってしまう。

 一方、ギルド結成クエストにより、旧ディアベル派のリンド率いるドラゴンナイツ・ブリゲードと、キバオウ率いるアインクラッド解放隊が結成され、現時点で突出した実力を持つキリトとアスナは、その対立に望まずと巻き込まれてしまうのだった。
 そして、二つのギルドの間で暗躍を始めるモルテというプレイヤーの目的とは?

アクセル・ワールド (16) ―白雪姫の微睡―

大ボス登場
評価:☆☆☆☆☆
 ウルフラム・サーベラスのボディーと能美征二の残留思念、スカーレット・レイン/上月由仁子から奪った強化外装を束ね、災禍の鎧マークIIは誕生した。シルバー・クロウ/有田春雪は、ライム・ベル/倉嶋千百合、シアン・パイル/黛拓武、ブラッド・レパード/掛居美早らと共に、大天使メタトロンの協力を得て、新たに生まれた災禍の鎧を破壊し、スカーレット・レインの強化外装を取り戻そうとする。
 ISSキット本体を破壊したブラック・ロータス/黒雪姫、スカイ・レイカー/倉崎楓子、アーダー・メイデン/四埜宮謡、アクア・カレント/氷見あきらは、本体から飛び出した禍々しい光が向かった先を目指す。そこに現れたのは、加速研究会会長のホワイト・コスモスだった。

 大天使メタトロンに導かれたシルバー・クロウは、ブレインバースト世界の本質に触れる。

アクセル・ワールド (15) ―終わりと始まり―

追跡の果てに
評価:☆☆☆☆☆
 大天使メタトロンの意思を封じる銀冠から解放したシルバー・クロウ/有田春雪だったが、ブラック・バイスとアルゴン・アレイが乱入し、ブラック・バイスがスカーレット・レイン/上月由仁子を拉致してしまう。大天使メタトロンの翼をもって追跡するシルバー・クロウが辿り着いたのは、研究会の本拠地だった。
 一方、アルゴン・アレイ追跡を引き受けたブラッド・レパード/掛居美早は、それまで封印していた必殺技を用い、アルゴン・アレイの奥の手を引きずり出す。ブラック・ロータス/黒雪姫、スカイ・レイカー/倉崎楓子、アーダー・メイデン/四埜宮謡、アクア・カレント/氷見あきらはニコのケーブルを引き抜くため離脱を目指し、ライム・ベル/倉嶋千百合、シアン・パイル/黛拓武はブラッド・レパード援護に向かうのだった。

 敵中枢に辿り着いた彼らは、ブレイン・バーストの深淵を見ることになる。

ソードアート・オンライン (13) アリシゼーション・ディバイディング

揺らぐ心
評価:☆☆☆☆☆
 セントラル・カセドラル80階《空中庭園》で、公理教会整合騎士アリス・シンセシス・サーティとなったアリス・ツーベルクの《金木犀の剣》と対決したキリトは、互いの武装完全支配術が融合した結果、《悠久の壁》を破壊し、外へと投げ出されてしまった。
 一方、90階《大浴場》へと至ったユージオは、整合騎士長ベルクーリ・シンセシス・ワンと会敵する。彼の操る《時穿剣》の能力に苦戦するユージオだったが、《青薔薇の剣》の能力を最大限に発揮し、互角の対決へと持ち込むことに成功する。だがそこに、戦いの舞台を汚す元老長チュデルキンが現れた。

 最高司祭アドミニストレータが登場し、ユージオを誘惑する。一方、壁外でアリスとコントを繰り広げるキリトは、ついに最強の敵とまみえることになってしまうのだった。

 どうやら外側の世界も、何やらきな臭くなってきたみたい。

アクセル・ワールド (14) ―激光の大天使―

果たされる約束
評価:☆☆☆☆★
 《理論鏡面》に代わる《光学誘導》シルバー・クロウ/有田春雪は、帝城を守る超級エネミーであるセイリュウに封印されているアクア・カレント/氷見あきらを救いだし、かつ、大天使メタトロンに護られているISSサーバーを破壊してアッシュ・ローラーの妹の日下部綸を救い出すというミッションに挑むことになった。
 まずは、アクア・カレントを救うため、無制限中立フィールドへ降り立ったシルバー・クロウは、黒の王ブラック・ロータス/黒雪姫、スカイ・レイカー/倉崎楓子、アーダー・メイデン/四埜宮謡、ライム・ベル/倉嶋千百合、シアン・パイル/黛拓武と共に、作戦開始までの時間調整をすべく、赤の王スカーレット・レイン/上月由仁子の強化外装で旧東京タワーへと向かう。

 そしていよいよ大天使メタトロンとの対決に望もうとするシルバー・クロウらの前には…。勝負がついたように見せかけて、やはり次巻に続きます。

 今巻の内容は強敵とのバトル二連戦なわけだが、どちらかというとレギオンを越えた友情みたいな部分が描かれた日常要素が強いように感じた。だが、現実世界ではなく、ブレインバーストの世界でしか活動していないという不思議。

ソードアート・オンライン (12) アリシゼーション・ライジング

塔を駆け登る異端者たち
評価:☆☆☆☆☆
 最大の禁忌である殺人を犯したユージオとキリトは、アリス・ツーベルクの面影を持つ公理教会整合騎士アリス・シンセシス・サーティにより、最高司祭アドミニストレータの待つセントラル・カセドラルへと連行された。そこで整合騎士に改造される間際、もう一人の最高司祭カーディナルにより、二人は助け出される。
 カーディナルからアドミニストレータの辿った歴史を教えられたキリトは、彼女からある選択を迫られる。その選択に対し答えを保留したまま、アリスの解放とアドミニストレータの打倒を目指し、100階あるというセントラル・カセドラルの攻略に取りかかるのだった。

 整合騎士との戦闘が本格化するのだが、逆にいえばそれだけで、あまりストーリー的に進んでいるとは言えない。もっとも、「シンイ」なんていう単語は登場したけれどね。

アクセル・ワールド (13) ―水際の号火―

文化祭イベント
評価:☆☆☆☆☆
 ウルフラム・サーベラスとの戦いを勝ち抜いたところに乱入してきたアルゴン・アレイに封殺されそうになったシルバー・クロウ/有田春雪だったが、アクア・カレント/氷見あきらの加勢により、何とか切り抜けることが出来た。《理論鏡面》に代わる《光学誘導》も身につけ、加速研究会がISSサーバーを守るために設置した大天使メタトロンとの戦いの準備も整いつつあるところ、黒の王ブラック・ロータス/黒雪姫、ライム・ベル/倉嶋千百合、シアン・パイル/黛拓武の通う学校の文化祭が始まる。
 文化祭の準備に明け暮れる中の領土戦、赤のレギオン《プロミネンス》のブレイズ・ハートらバーストリンカーが、休戦協定を結んでいるはずの杉並を攻めて来る。彼女たちは、スカーレット・レイン/上月由仁子を黒の王が襲撃したと誤解しているのだ。ハルユキは、アーダー・メイデン/四埜宮謡、アクア・カレントと共に、その後界を解くために戦うことになる。

 そしてやってくる文化祭、スカイ・レイカー/倉崎楓子の子であるアッシュ・ローラーの妹の日下部綸も訪れるのだが、アッシュは既にマゼンダ・シザーの攻撃を受けていた。
 というわけで、次巻に続きます。

ソードアート・オンライン (11) アリシゼーション・ターニング

封印の外側
評価:☆☆☆☆☆
 死銃事件の逃亡犯ジョニー・ブラックこと金本敦に襲撃され昏睡状態に陥った桐ヶ谷和人が運び込まれたのは、菊岡誠二郎や比嘉タケルが生み出したラースの拠点だった。茅場晶彦の恋人だった神代凛子の導きで辿り着いた結城明日奈は、ようやく桐ヶ谷和人に再会する。
 そのキリトの魂は、アンダーワールドという、人工フラクトライト、つまり人間の魂の原型たちが暮す仮想世界で、整合騎士を目指し、ノーランガルス帝立修剣学院の上級修剣士となっていた。

 ユージオはティーゼ・シュトリーネンを、キリトはロイエ・アラベルを傍付き錬士とし修練に励むのだが、主席上級修剣士であるライオス・アンティノスと次席上級修剣士であるウンベール・ジーゼックは、庶民であるユージオやキリトを敵視し、姦計を巡らしてくる。
 そしてそれが頂点に達したとき、ユージオの前に、アリス・ツーベルクの面影を持つ公理教会整合騎士アリス・シンセシス・サーティが現れる。

 またもや思いっきり次巻へ続くとなっていますが、舞台は学園生活からアンダーワルドの中心であるセントラル・カセドラルへと移っていく。そこには菊岡たちも知らないかも知れない、アンダーワールド側から見た創世記が隠されていた。
 外の世界であるアスナ側でもきな臭い感じがしてきているし、もうひともめふたもめありそうだ。

ソードアート・オンライン プログレッシブ (1)

順番に積み上げていく戦いの歴史
評価:☆☆☆☆☆
 ソードアート・オンラインの攻略を第一層から順番に描いていこうという企画らしい。でも、年一回しか刊行できないとのこと。ほぼ最初からキリトはアスナと出会っていたことになり、なんだかとっても楽しそうに戦っています。…この調子だと、第十層くらいでデキちゃうんじゃないの?

「星なき夜のアリア」
 第一層フロアボス攻略会議の直前、ソロプレイヤーとして生きることを決めたキリトは、迷宮区で流星のごとき細剣の冴えを見せるプレイヤーと出会う。その人物は、持てる限りの換えの剣とPOTを持ち込み、昼夜ぶっ続けで攻略に挑んでいた。
 安全を度外視した戦い方をするその人物に対し、キリトは声をかけてアドバイスをする。その人物の名はアスナと言った。

 初のフロアボス攻略隊を率いるディアベルや、のちにアインクラッド解放軍を立ち上げるキバオウ、おなじみエギルなどとの出会いが描かれる。殺伐とした開始直後の雰囲気が出ている中で、相変わらずマイペースを貫いているキリトの異質さが浮き立っている…のだけれど、やっぱりこの頃はキリトでも結構神経過敏になっているな。
 キリトのトレードマークである《コート・オブ・ミッドナイト》の由来も語られる。

「ヒゲの理由」
 情報屋《鼠のアルゴ》のトレードマークであるおヒゲの理由を教えてもらえることになったキリトだったが、ヘタレて別の情報を貰うことになってしまう。その結果、彼は悲惨な三日間を過ごすことになるのだった。
 キリトが使う隠しスキル《体術》の由来が語られる。

「儚き剣のロンド」
 中編というか長編と言っても良いくらいの分量。腕の良いプレイヤー鍛冶屋ネズハのうわさを聞いたキリトは、第二層の街で彼を訪ね、再びアスナと遭遇する。アスナと楽しくコンビを組みながら、アスナの剣の強化もしてもらおうとするのだが、そこで二人はある事件に関わることになるのだった。
 「圏内事件」に近いような、ちょっとだけミステリータッチの雰囲気を醸し出しつつ、第二層攻略の様子が描かれる。

アクセル・ワールド (12) ―赤の紋章―

揺らぐ親子の絆
評価:☆☆☆☆☆
 加速研究会がテイムした神獣級エネミーである大天使メタトロンを攻略するため、シルバー・クロウこと有田春雪は、アーダー・メイデンこと四埜宮謡の兄である四埜宮竟也のアバター「ミラー・マスカー」のアビリティ《理論鏡面》の会得を命じられた。
 ところが、彼の前に現れたニュービー「ウルフラム・サーベラス」、最硬金属のタングステンと、三頭の獣ケルベロスの名を持つアバターと戦うことになり、そのアビリティである《物理無効》を破ることには成功したものの、ケルベロスを思わせる特性をそれが発揮し、戦いは水入りとなった。

 特訓の途中である《理論鏡面》獲得のため、ライム・ベルこと倉嶋千百合が見つけてきたレーザーを放つ小獣級エネミーを利用することにしたのだが、そこでショコラ・パペッターという小レギオンのマスターと知り合うことになり、彼女を手伝って、再びISSキット、そしてシアン・パイルこと黛拓武にそれを渡したマゼンダ・シザーと戦うことになる。

 今巻も次巻に続く終わり方となっている。ようやく、四元素の残る二人の内の一人であるアクア・カレントにも再登場の機会が与えられ、さらには白の王ホワイト・コスモスと黒の王ブラック・ロータスの関係が明らかにされる。また、今回は久しぶりにハルユキより年下の女の子が登場し、ハルユキはペロペロしちゃう。
 短編「空色の翼」を収録。ハルユキの家に黒雪姫が泊まったことを知った倉崎楓子が自分も泊まりたいと脅迫し、ハルユキをその美しい足で誘惑するお話?かも知れない。

ソードアート・オンライン (10) アリシゼーション・ランニング

知性の根源に迫る
評価:☆☆☆☆☆
 死銃事件の逃亡犯ジョニー・ブラックこと金本敦に襲撃され、昏睡状態に陥った桐ヶ谷和人の身柄が病院から消えた。データ上は防衛医大病院に入院していることになっているが、結城明日奈がユイにハッキングしてもらったところ、実際にはいないことが判明する。桐ヶ谷直葉と朝田詩乃を含め、拉致される前の桐ヶ谷和人が残した言葉を分析した結果、彼女たちが導き出した答えは、茅場晶彦の恋人だった神代凛子に連絡を取るということだった。
 その結果、結城明日奈は総務省への出向者の菊岡誠二郎が自衛官であることを知り、ラースの所在地を突き止めることに成功した。そこでは、茅場晶彦、須郷伸之と並ぶ最後の一人、比嘉タケルもソウル・トランスレーター開発にかかわっていた。

 一方、公理教会に拉致されたアリスを取り戻すため、アンダーワールドで整合騎士を目指すことになったキリトとユージオは、ザッカリアの衛兵から始まり、ノーランガルス帝立修剣学院への入学を目指す。そしてそこで、キリトはソルティリーナ・セルルトという女剣士と知り合うのだった。

 現実世界での解説が長めなのだけれど、個人的には好きだからOK。結局この物語は、もうひとつの作品との橋渡しをすることを裏目的にしているのかな?かなり技術が接近してきている気はする。
 現実世界での説明が長い分、アンダーワールドでの展開はあまり激しいものがないと感じられるかもしれない。しかし、貴族という概念が紹介され、彼らが禁忌目録を頂点とする規則を迂回するという特性を備えていることが示される。これは、アンダーワールドの人工フラクトライトという存在を理解する上で、重要なポイントの気がする。

 まあでも、キリトにはもう少し浮気をさせても良かったかも。

アクセル・ワールド (11) 超硬の狼

絡み合う課題、解け始める謎
評価:☆☆☆☆☆
 有田春雪のアバターであるシルバー・クロウに寄生していた災禍の鎧を、帝城の封印から解放した四埜宮謡のアバターであるアーダー・メイデンの力で解除したことで、ようやくハルユキの嫌疑は晴れた。そして手のひらを返したように、シルバー・クロウを大天使メタトロン排除の先鋒とするため、彼に《理論鏡面》アビリティを獲得するように依頼される。
 黒雪姫や倉崎楓子のお手製のカレーを食べさせることで上月由仁子に協力を依頼し、ハルユキの特訓が始められたのだが、その進捗ははかばかしくない。何十回もスカーレット・レインのレーザー攻撃を受けて蒸発し、徹底的に打ちのめされたハルユキに、かつて《理論鏡面》を会得していたのは四埜宮謡の“親”であるとニコは告げる。

 翌日、謡にその話をぶつけたハルユキは、彼女の兄である竟也にまつわる事故と、謡が声を失った理由を知ることになる。そしてその帰り道、ウルフラム・サーベラスというニュービーとデュエルすることになったハルユキは、またもや挫折を味わうことになるのだった。

 大概予想通りかも知れないが、再びつづくで締められる。一個のことに相対しているうちに次のイベントが発生し、それぞれが絡み合いながら、結局どちらも解決は持ち越しになるという構成だ。まあはじめから、複数巻のエピソードだと思っていれば良いのだろう。
 それはそれとして、竟也はバーストリンカーだったのだから、その瞬間にバースト・リンクすれば良かったのではないかと疑問に思ったり思わなかったり。

ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング

未来への歩みを横から取り込む仮想世界
評価:☆☆☆☆☆
 ノーランガルス北帝国、ダークテリトリーとの境界である果ての山脈の麓にあるルーリッド村は、開拓以来三百年の歴史を誇る貧しい村だ。三方を果ての山脈に囲まれ、唯一、開墾可能な方角には《悪魔の樹》ギガスシダーが深く根を下ろしていて、農地にすることができない。その樹を切り倒すのは村の悲願ではあるが容易ではなく、《竜骨の斧》を以って三百年挑み続けて来た天職が《刻み手》だ。当代のそれは、ユージオとキリト、二人の少年が担っている。そんな二人の幼なじみが、村長の娘であるアリスだ。
 だがそのアリスは、ちょっとした思いつきから踏み込んでしまった果ての山脈の洞窟で、ダークテリトリーの土地に触れてしまったことがきっかけで、公理協会の整合騎士により、央都セントリアへ連行されてしまった。それから六年、その後のアリスがどうなったのかをユージオは知らない。ただ彼の許には、洞窟から持ち帰った、白竜の死骸の下にあった《青薔薇の剣》が残されている。

 最近の桐ヶ谷和人はまたもややつれ気味だ。菊岡誠二郎からの紹介で、ラース社開発の新たなフルダイブ・マシンであるソウル・トランスレーターのβテスターをしているからだ。脳細胞の構造体であるマイクロチューブルに充填されているエバネッセント・フォトンが生み出すと考えられる魂の座、フラクトライトに直接アクセスし、記憶の中の物体をデータオブジェクトとして呼び出し仮想世界を構築する、現実の記憶と識別不可能な夢の世界。それがラースの目指す場所だという。
 ガンゲイル・オンラインに現れた、理解不能な強敵に対抗してもらうため、桐ヶ谷和人と結城明日奈をエギルの店に呼び出した朝田詩乃は、キリトからそんな話を聞かされ、不安を感じてしまう。そしてその予感は、予想外のところから的中してしまうのだった。

 仮想世界で様々な経験を積みながら、現実世界で未来へ向けて第一歩を踏み出した少年少女に襲い掛かる事件と、より現実との違いがなくなっていく仮想世界を構築しようとする試み。それらが接点を持つことで、キリトはよく分からないまま、まっさらな状態で新たなゲーム世界で戦いに飛び込むことになる。
 プロローグが約半分!という驚愕の構成となっている第一巻だが、それはやはり必要だからそうなっている。ただのテストだと思っていたことが、キリトのリアルな経験として蓄積される伏線となっているのだ。ただし、その転換はあまりにも唐突で呆気ないものだが…。そして読者も顛末に見えない部分を残されつつ、新たな世界での物語に取り込まれていくことになる。

アクセル・ワールド (10) Elements

本編の補完的な短編集
評価:☆☆☆☆☆
 他シリーズとのコラボ短編も含んだ、本編の補完的な短編集だ。ハルユキ視点で描かれる本編ではみられようもない、中学生らしい黒雪姫の姿や、過去の意外なエピソードを知ることができる。

「遠い日の水音」
 有田春雪が黛拓武の協力を得てようやくレベル2に到達するポイントを獲得した頃。ハルユキのポカミスでレベルアップギリギリのポイントでそれを使ってしまい、レベル2になった代わりに全損の危機が訪れてしまった。
 タクムは自分のポイントを半分分けるというのだが、それを断ったハルユキは、低レベル者の全損危機を、ある代償を捧げることで守る用心棒を雇うことにする。アクア・カレントというそのバーストリンカーは、自身はレベル1でありながら、これまで護衛対象を全損させたことが一度もないという、伝説の存在だった。

 ある意味で今巻のサブタイトルともっともリンクした短編だ。つまりアクア・カレントは…。そしてハルユキがこのことを覚えていないことにも、きちんと理由がつけられる。

「最果ての潮騒」
 ハルユキが能美征二の策略で追い詰められていた頃(夕闇の略奪者参照)。黒雪姫は修学旅行先の沖縄で、生粋の沖縄生まれのバーストリンカー、安里琉花と糸洲真魚に出会う。東京23区以外で生まれたバーストリンカーという存在自体に驚愕した黒雪姫だったが、彼女たちの相談事の原因は、加速研究会が関わっている実験だった。
 黒雪姫の視点で、ハルユキや生徒会の友人である若宮恵、そして自分自身の彼らとの関わりを問い直しつつ、本編の裏側で繰り広げられていた事件を語る中編だ。

「バーサス」
 アラレちゃんと孫悟空はどっちが強い?という問いに作者自らが答えを出したみたいな短編だ。量子コンピューターの生み出したパラレルワールドとのリンクで、キリトはハルユキのシルバー・クロウと対戦することになる。果たしてその結末は…?
 「ソードアート・オンライン」「アクセル・ワールド」は共にバーチャル世界でのバトルを描いている訳だが、そのコントロールシステムの相違を、空を飛ぶ、という行為で説明している、とも見ることが出来る。

アクセル・ワールド (9) 七千年の祈り

絶望の中での確かな支え
評価:☆☆☆☆☆
 災禍の鎧<クロム・ディザスター>の完結編。一度はとり付かれた災禍の鎧を倉嶋千百合に種まで戻してもらい、心意技欲しさにISSキットに囚われかけた黛拓武を救い、帝城から脱出できなくなっていた四埜宮謡と脱出し、ようやく災禍の鎧を浄化する準備が整ったのも束の間、アッシュ・ローラーたちを助けるために、有田春雪は災禍の鎧をもう一度召喚し、完全に同化してしまった。
 このままでは、純色の六王会議でネガ・ネビュラス自体が攻撃対象となってしまう。そのことを何より怖れたハルユキは、ひとり、無制限中立フィールドで果てようと家を飛び出すのだが、倉崎楓子の命を受けた日下部綸に捕まり、黒雪姫からは水臭いとお叱りを受けてしまう。

 ハルユキがブレイン・バーストを喪失することは、彼とブレイン・バーストの世界で深い絆を結んできた人たちの心にポッカリと大穴を開ける行為である。そのことを改めて心に刻み付けたハルユキは、災禍の鎧の憎しみを解き放つ方法を必死に考えるのだった。そしてその鍵は、災禍の鎧の始まりであるクロム・ファルコンとサフラン・ブロッサムが、未だに出会えない理由にあった。

 災禍の鎧を狙う加速研究会副会長のブラック・バイスが再びハルユキの前に現れる。彼らの本拠地の場所は既に突き止めたが、その拠点は大天使メタトロンが守っているため、手出しができない。一方、ハルユキのタイムリミットは迫っている。
 そんな極限状態の中で、ハルユキがネガ・ネビュラスのためを思った間違った決断をしようとし、彼を深く思う仲間たちが身体を張ってそれを止める姿が描かれる。

 絶対に不可能と思われる状況。しかし彼らに心意システムがある限り、乗り越えられない障害はないはず。だが実際は、常識や現実などという固定観念が邪魔をして、その超越を想像する心理を妨げてくる。
 それでも、自分ひとりでは乗り越えられない障害だとしても、自分を信じてくれる、大切に思ってくれる、そのために全てを投げ出してくれる仲間がいるならば、その心に応えるために自分も自分を信じないわけにはいかない。後ろ向きなハルユキが、頑張って頑張って、前向きに道を見つけ出そうとするのだ。

ソードアート・オンライン (8) アーリー・アンド・レイト

様々な変化の瞬間を切り取って
評価:☆☆☆☆☆
 SAOの旧アインクラッド時代のアスナとキリトのミステリー風味中編「圏内事件」、地下世界ヨツンヘイムにあるエクスキャリバーを手に入れるエピソード短編「キャリバー」、ソードアート・オンラインでレベル1だった頃の霧との姿を描く掌編「はじまりの日」を収録した短編集だ。

「圏内事件」
 まだ前線が57階にあった頃。お昼寝をしているキリトのところに、血盟騎士団・副団長アスナがやってくる。気まぐれでお昼寝に誘ってみたところ、隣で熟睡しだし…結果、ご飯をおごってもらうことになった。
 そして向かった街で、キリトとアスナは、原則として安全な街の中・圏内で、連続貫通攻撃で男が死んでしまう瞬間を目撃する。新たな圏内攻撃の手段を見過ごすことができず捜査をすることになる二人だが、それは半年前の事件を暴く結果になるのだった。

 アスナがキリトに好意を持った瞬間の物語であり、SAO世界が明らかにした人間の本質が見せる醜さを教えてくれる、好意とは対極的なエピソードになっている。


「キャリバー」
 ついにヨツンヘイムのエクスキャリバーを獲得するクエストが発見された。一年前に既にそれを発見していたキリトたちは、他のゲーマーに獲得される前に、もう一度チャレンジしてみることにする。パーティはキリト、アスナ、リーファ、リズベット、シリカ、シノン、クライン、そしてユイだ。
 ところが地下世界に下りた彼らは、ニブルヘイムの王スリュムが、プレイヤーたちを巻き込んだ壮大なクエストを起こしていることを知る。全ては本来のカーディナル・システムが開放されたせいだ。

 GMも知らないSAO世界のピンチを知ってしまったキリトたちは、否応なくクエストに関わっていくことになる。コンバートしてアーチャーとなったシノンと、女好きクラインがさりげなく大活躍するエピソードだ。
 そしてこのことからも分かるように、本質的にソロプレイヤー気質のキリトが、仲間の大切さを実感した瞬間の物語でもある。


「はじまりの日」
 茅場晶彦の本来の計画であるデスゲームが始まった瞬間、クラインを置いてキリトは駆け出した。全ては自分が生き残るために。βテスターであることを利用してとある村に向かったキリトは、初めての愛剣を手に入れるため、コペルというβテスターと協力することになる。
 キリトがSAOの本質を体感し、その剣技の鋭さと、それを裏付ける生き残るために努力するという覚悟を決めた瞬間の物語となっている。

アクセル・ワールド (8) 運命の連星

現実と仮想、相互作用のスパイラル
評価:☆☆☆☆☆
 ISSキットを装着し負の心意に囚われてしまった黛拓武は、ネガ・ネビュラスの全てを有田春雪に任せ、全損覚悟でISSキットの中心へ挑もうとする。そんなタクムに対しハルユキは、自分の気持ちをぶつけ、彼の心を肯定する。
 タクムをISSキットから開放するため、倉嶋千百合にも事情を説明し、ISSキットが侵食してくるという就寝中の出来事に対応出来るよう、直結をしたまま眠ることにする。そして彼らが心意システムを通じて導かれた先にあったのは、ブレイン・バースト中央サーバーと、そこに巣食うISSキット本体の姿だった。

 そして運命の帝城脱出作戦が開始される。ブレイン・バーストの世界で経験したことがハルユキに新たな視点を獲得させ、それが現実世界の生き方にも良い影響をもたらす様になって来たいま、どんなピンチでも、仲間の協力があれば切り抜けられるはずだ。
 だがそれで万事めでたしになるほど、現実は甘くはなかった。ISSキット関連で共に無制限中立フィールドに降り立ったはずのアッシュ・ローラーに関係して、それまでの努力を無にするような事態が起きてしまう。

 また最後は続くになりました。色々分かってきたような、まだ分からないような、そんな感覚になる展開です。

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ソードアート・オンライン (7) マザーズ・ロザリオ

その想い永久に
評価:☆☆☆☆☆
 アルヴヘイム・オンライン内の浮遊城アインクラッド第22層に昔と同じログハウスを購入し、再び安らげる場所を手に入れたアスナは、あのキリトすらも打ち破ったソードスキルの持ち主・絶剣が、デュエル相手を求めていることをリーファたちから教えられる。
 イベントに参加するくらいの軽い気持ちで出かけたアスナの前に現れた絶剣は、ユウキという名前のかわいい女の子。さてはかわいい子だからキリトは手加減したんだな!と怒りに燃えたのも一瞬、その絶技の前に、アスナも敗れ去ってしまう。しかし、それだけでは終わらなかった。

 ユウキの仲間の元に連れて来られたアスナは、彼女たちからボス攻略のパートナーになって欲しいと頼まれる。ギルド解散前の最後の思い出作りがしたいというのだ。何となく彼女たちとは仲良くなれそうな気がしたアスナは、その願いを聞き入れることにする。

 一方、リアルワールドでの結城明日奈にも一つの問題が立ち上がる。母親の京子が、彼女を転校させようと言うのだ。そして、不穏分子たちから引き離し、彼女にエリート街道を歩ませたいという。  SAOで様々な経験をつんだ彼女は、その考え方に納得できないものを感じるものの、それまで母の意見には黙して従ってきたため、その思いを上手く言葉にすることができない。そして、嫌われることを怖れて、桐ヶ谷和人にも弱音は吐けない。
 そんな追い詰められていくアスナの心を、ユウキたちが晴れやかにしていく。しかし、その結末はあまりにも悲しいものだった。

 キリトは今回はサポート役で、主役はアスナ。VRMMO内の出来事が現実世界と結びつき、そこで出会った人々が彼女の将来について、ひとつの展望を見せてくれる。
 1巻を例外とすれば、いちばん好みの話かもしれない。

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アクセル・ワールド (7) 災禍の鎧

ずっと潜んでいた破局の種
評価:☆☆☆☆★
 帝城の四神の一柱、スザクに囚われたアーダー・メイデンを救出し、シルバー・クロウに寄生した災禍の鎧を浄化する作戦は半ば失敗し、アーダー・メイデンとシルバー・クロウは帝城の中に閉じ込められてしまう。
 そこでシルバー・クロウは、災禍の鎧の来歴に込められた悲しい物語と、そして、誰も入ったことがないはずの帝城に隠されている秘密を知る。

 ひとまずバースト・リンクを切断して、戻ってきた現実世界では、ISSキットの蔓延が引き金となり、レギオンの一部で、シルバー・クロウに対するPKが計画されていた。しかし、その情報をハルユキがタクムに打ち明けたことにより、新たな事件の幕が開けることになる。

 6巻もこれからということで引きがはいったが、今回もバトルシーンの最中で8巻に続く展開となってしまった。
 一見平穏に見えた日常に、3年前からずっと潜んでいた破局の種。それが、負の心意というきっかけによって、一気に芽吹いてしまう。ハルユキは決定的な破局を食い止めることができるのか、あるいは…。

 黒雪姫のイラストの視点が何かエロい。

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ソードアート・オンライン (6) ファントム・バレット

呪縛を解き放つ言葉の銃弾
評価:☆☆☆☆☆
 桐ケ谷和人は、ゲーム内での銃撃で実際に人を殺す死銃の存在を調査するという依頼を総務省総合通信基盤局VRワールド管轄部門の菊岡誠二郎から受け、ガンゲイル・オンラインへとアクセスした。銃による対人戦闘を基本とする世界においてあえて光剣を使い、対物狙撃銃使いの少女・シノンの助けを得て、目的の人物が参加するトーナメントの決勝バトルロイヤルへと進出することに成功した。
 ソード・アート・オンラインの亡霊、ラフィン・コフィンの生き残りと対峙することでキリトによみがえる、自身のPKの記憶。ゲームでの死が現実の死を意味したあの世界では、それは殺人を意味しており、その記憶は彼を苛み始める。そしてそれは、かつて銀行強盗に巻き込まれ人を撃ってしまった朝田詩乃の悩みと似たものがあった。

 そして決勝バトルロイヤルが始まる。かつて自らが放った銃弾、そして剣閃は、幻の銃弾となって彼らを竦ませる。その幻を振り払い、いま目の前にある現実に立ち向かうことができるのか?恐怖を振り払う一撃が放たれる。

 茅場明彦の起こした事件が未だに犠牲者の心を捉えて離さない。投じられた一石が起こした波紋は新たな波紋を呼び起こして干渉し、大きなうねりが目に見え始めている。この事件はその序章と言うべきなのかもしれない。
 今回も仮想世界で結城明日奈の活躍のチャンスはなかったけれど、現実世界ではキリトをサポート出来たと言えるのかな?次は活躍のチャンスが与えられれば良いけれど。

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アクセル・ワールド (6) 浄火の神子

ネガ・ネビュラス解散の謎が明かされる
評価:☆☆☆☆☆
 ハルユキは、ヘルメス・コード縦走レースの最中に起こった戦いの中で、赤の王スカーレット・レインの手により消滅させられたはずの災禍の鎧を呼び戻してしまった。この状況を打破するため開かれた純色の七王による会議の結論は、7日以内に災禍の鎧を浄化することが出来なければシルバー・クロウの首に懸賞金をかけるという、事実上の追放処分だった。
 その処分を回避するために、黒雪姫は災禍の鎧を浄化するための秘策を用意する。それには、初代ネガ・ネビュラスの四元素の一人、アーダー・メイデンを呼び戻す必要があった。

 今回のバトルの舞台は千代田区一丁目にある広大な敷地、皇居。通常対戦フィールドでは障壁があり侵入できない皇居だが、無制限中立フィールドでは四つの門を四神が守護していて、それらを倒さなければ中には入れない。しかし、歴史上、彼らに挑んで勝つどころか、無事に帰ったものすら少ない。
 そんな、純色の七王をも遥かに凌ぐ力を持つ彼らの縄張りに踏む込まなければ、ハルユキのバースト・リンカーとしての命運は尽きるという、二律背反的な状況に陥ってしまう。だが、陰湿な策謀に対してゴチャゴチャやるよりも、強大な敵に挑むという構図の方が、本来の設定から言うと遥かにふさわしく、面白い。
 また、これまであまり深く触れられてこなかった、初代ネガ・ネビュラス解散の謎についても、今回の展開と自然に絡む感じで語られている。

 ストーリーとしては次回に続く形になってしまっているし、加速研究会や心意の力に関する話題は棚上げされた感じになっているが、一冊の構成としてはそれなりに収まる形になっていると思う。

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ソードアート・オンライン (5) ファントム・バレット

切り伏せるだけでは済まない問題
評価:☆☆☆☆★
 体力も完全に回復し、桐ケ谷和人や結城明日奈には平穏な生活が訪れていた。そんなある日、キリトは、アスナ捜索に協力してくれた、総務省の菊岡に呼び出される。仮想世界から現実世界への影響を調べている菊岡は、ゲーム内での銃撃が現実の死を引き起こすという事件の真偽を確認するため、そのゲーム、ガンゲイル・オンラインへの潜入をキリトに依頼する。
 依頼を受けてログインしたキリトは、スナイパーの少女シノンと出会う。朝田詩乃としての彼女は、幼少期の事件による、あるトラウマを抱えていた。
 そして、ゲーム内で名を売るために参加した大会で、キリトに近づいてくる怪しいマントのプレイヤー。その口調とある特徴は、彼に闇に追いやった過去の記憶を浮かび上がらせるのだった。

 アスナを現実世界におき、単身でゲームに挑むキリト。今回は、モンスターを倒したり宝探しをしたりという面よりも、プレイヤー同士の対決と、それがもたらす結果に焦点を置いている。だから、ファンタジーというよりも、イメージはゲリラ戦や荒野の決闘という感じに近い。
 そんな世界でも、相変わらずキリトは、いきなり女の子と仲良くなったり、無理やり剣を振り回しているわけだが。

 ソードアート・オンラインの事件から1年が過ぎ、平穏な生活に戻ったはずなのに、この事件をきっかけにしてじわじわと浮かび上がってくるような闇色の記憶。そして似たような記憶は、シノンをも苛んでいる。
 倒すべき敵や取り返すべき人といった明確なターゲットがない場合、どうやって折り合いをつけて決着するのか。キリトの判断が次以降で問われそうな展開だ。

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アクセル・ワールド (5) 星影の浮き橋

伏線を張り回収をする
評価:☆☆☆☆★
 ネガ・ネビュラスに復帰したものの、自らに課した心の束縛のため強化外装を使えないスカイ・レイカー。彼女に何とか翼を取り戻してもらいたいと考えるヒロユキは、ブレイン・バーストのミッション・イベントを利用することを思いつく。それは、軌道エレベータで繰り広げられるレースだった。
 街に出たり家に居たりするだけで引き起こされる各種イベントの中で、ヒロユキは心理カウンセラーのごとき活躍で、出会う人の心の欠落を埋めるための行動を起こす。しかし、そんなヒロユキの中にも、彼女達に劣らない大きな負の感情が潜んでいる。
 安定のため王たちが隠していた秘密が暴かれる時、ブレイン・バーストの世界はまた違った側面を見せるのだろう。

 1冊の中で伏線を張り回収をするのは、きっちり完結している感じがして好印象。でも、世界に大きな影響を与えている六王たちが登場しないと、役者が足りなくて大きな変革は起きない気がしてしまう。

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ソードアート・オンライン (4) フェアリィ・ダンス

リアルあってこそのバーチャルという印象
評価:☆☆☆☆★
 アインクラッドの緊迫感が凄まじかったので、アルヴヘイムは何か達成感が足りない気がしてしまう。短期決戦の性格上、裏技的にショートカットする展開は仕方ないとして、最終決着がああいう感じでついてしまうのはいかがなものかと思わなくもない。期待していた分、少し残念な気持ちがする。しかし、これは少し狭隘な見方かも知れず、その後のストーリー展開を考えると、バーチャルの側面よりもリアルの側面に軸足を置き直したと捉えるべきなのかもしれない。

 あとがきで作者は、ゲームの面白さを伝えるということに注力したと述べている。作者の意図としては、VRMMOの世界を描くことで、そこにログインするバーチャルな意識が感じる面白さを表現しようということなのだろう。この考え方は、バーチャルとリアルを同等に扱う、アインクラッドの頃から一貫したものだ。
 だがボクは、自分の狭い経験に基づいて考えるので、ゲームの面白さというテーマを提示されると、キーボードやコントローラーを操作するリアル存在を強く意識してしまう。VRMMOという世界観が自分のものになりきっていないから、面白さを感じるのはリアルの存在だと認識してしまうのだろう。
 この経験則に基づく認識を覆していたのが、アインクラッドのデスゲーム設定だったので、その縛りが取れた結果、没入の度合いが浅くなってしまうのは仕方ない気がする。そういった背景もあり、今回はバーチャルよりもリアル重視という印象を受けてしまったのだろう。この点は、作者の意図と少しずれてしまったかもしれない。

 次巻以降も続くようなので、そちらはどんな感じになるのだろう?

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アクセル・ワールド (4) 蒼空への飛翔

見えてくる次のステージ
評価:☆☆☆☆★
 前巻のラストまでに盛り上げるだけ盛り上げたエピソードを、きっちり仕上げるのが今回のストーリーと言えるだろう。あとがきにもあるように、読者にエピソードの終わりを悟らせないという意味では、前巻の仕掛けは成功したのかもしれないが、おかげで本巻は、さらに盛り上げようがない状態になってしまっていた気がしないでもない。
 ただし、これまで登場したことのないバーストリンカーや、レギオンとは異なる組織のメンバーも少しだけ登場するので、今後の展開に期待を持たせる役割は果たしている。次に大きく飛ぶために、少しだけかがんだような印象の巻だった。

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ソードアート・オンライン (3) フェアリィ・ダンス

現実のお姫さまを取り戻しに、ゲームの世界へふたたび
評価:☆☆☆☆☆
 現実世界に戻ってきたキリトが直面したのは、アスナを含む約300名のプレイヤーが、ソードアート・オンラインの世界から帰還していないという事実だった。
 眠り続ける結城明日奈に対して、何も出来ない無力感にさいなまれる桐ヶ谷和人だが、1枚の写真が彼にすべきことを示してくれた。それは、ソードアート・オンラインの技術を流用して開発された、アルヴヘイム・オンラインの世界で撮られた、捕われのお姫さまの肖像。彼女を解放し、再び傍らに立つために、和人はVRMMOの世界に向かう。

 ソードアート・オンラインは、ゲームという仮想世界の中に、死というリアルの概念を取り込んだ世界だった。一方でアルヴヘイム・オンラインの世界は、リアルでは不可能な、身一つで空を飛ぶ、というスキルを付加した世界になっている。
 前者の世界と違い、後者の世界では、アカウントという仮面を通し、現実では出来ないことを後腐れなく思い切ってやれる世界。だが一方で、ゲーム内の行動は現実の自分の精神にフィードバックされるし、ゲーム内の人格は現実世界の人格から無縁ではいられない。これを敷衍すると、上記二つの世界の違いは、設計者の思想の違いであるといえるかもしれない。

 アスナが思い切って活躍できない代わりに、キリトの妹である桐ヶ谷直葉がヒロインの座に躍り出たり、ソードアート・オンラインで登場したキリトとアスナの子供のユイが再登場したりしている。
 前巻の構成から考えて1巻で完結するのかなと思っていたのに、肝心のところはこれからというところでつづくになってしまったので、早い続巻の刊行が待たれるところです。

 現実世界で王子さまがお姫さまを助けるみたいな状況は作りようがないのかな?キリトもアスナを助けるためには仮想世界に行かざるを得ないわけだし。現実世界で力づくでことを進めたら、出てくるのが弁護士、では笑い話にもならない。

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アクセル・ワールド (3) 夕闇の略奪者

王さまがいない間に
評価:☆☆☆☆★
 進級して3年生となった黒雪姫が修学旅行で不在の間に、新1年生バーストリンカーの罠にはまり現実世界での弱みを握られてしまい、バーストポイントを献上する犬となることを強要されるハルユキ。新たにバーストリンカーとなったチユリも、ハルユキを守るために彼の言うことを聞かざるを得なくなる。
 二人の変化に感づいたタクムは、彼らを助けようと敵の情報を集め、闘いに挑むのだが…。ハルユキは状況をひっくり返すチャンスを手繰り寄せることが出来るか。ハルユキとタクムの驚愕するシーンで次巻に続きます。

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ソードアート・オンライン(2) アインクラッド

生き残るためにそれぞれが選ぶ生き方
評価:☆☆☆☆☆
 物事を始める時は大概、着地点に目処をつけてから挑む様にしています。これは何度も痛い目に会いながら身につけた、後天的な性格。本を読むときだって、心が落ち込んでいる時に、さらに辛くなる様な本を選択したりはしないですよね?誰だって、心が浮き立つような、楽しくなる様な本を選ぶはず。だから、自分の許容範囲を超えるような内容を提供されるのは困る場合もある。何が言いたいかというと、すでにラストが分かっている物語のサイドストーリーなら安心だよね、という弁護もどきです。
 そんなわけで、ゲームがクリアされる前、キリトがアインクラッドで出会った四人の少女の物語が繰り広げられています。基本的には下層に降りて来た気まぐれ最強剣士の人助け、といったところですが、関わった時期によって、過程も結末も変わってきます。ヒロインたちも、最前線に身を置いていたアスナとは少し違う生き方を選択しているので、物理的な側面よりも、精神的な側面が主に描かれている感じです。前作よりも、アインクラッドの生活が垣間見える作品と言えるでしょう。

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アクセル・ワールド (2) 紅の暴風姫

ハルユキに妹ができた
評価:☆☆☆☆★
 前巻で舞台設定の説明も大体終わったので、本巻からはいよいよ純色の六王たちが順次登場し、加速世界での戦いが激化する様相を呈している。過去に七王たちを苦しめた亡霊が登場し、その亡霊退治にハルユキが駆り出されることになった結果、黒雪姫も過去の記憶と対峙することを強いられることになる。
 加速世界での価値観を何より重視するバースト・リンカーにあって、ブレイン・バーストのコピー元である親は、リアルでも係わりのあるほとんど唯一の存在。その親子が相争うことになった場合、バーチャルとリアルの世界では何が起こるのか。

 前巻の、強烈に自分の世界に引き込む印象は少し薄れ、普通にゲームの世界で遊んでいるようにも見えてきた気がする。なんでだろう?

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ソードアート・オンライン (1) アインクラッド

恋をするのは心か、身体か
評価:☆☆☆☆☆
 脳からの信号をインターセプトして肉体との接続を切り、仮想空間での五感の再現を行う技術。そしてそれを背景とした多人数参加型のネットワーク・ロールプレイング・ゲーム、「ソードアート・オンライン」。1万人限定で運用が開始された仮想世界は、同時に管理者によって現実世界から切り離された。一度ログインしてしまえば、ログアウトするにはゲームをクリアするしかない。現実世界でゲームのインターフェースを物理的に外そうとすれば、神経信号を送受信している装置が発生する強力な電磁波により脳を破壊されてしまう。いわば自分の体を人質に取られた状態で、ゲームの進行を強制されるプレイヤーたち。
 ある者は絶望して死を選び、ある者は何もせず呆然とし、ある者は徒党を組み、そしてある者は一人ゲームのクリアを目指す。現実の体は病院に繋がれたまま2年が過ぎた頃、世界は唐突に動き出す。ある少年と少女の出会いによって。

 自分の意思で抜けられない(仮想)世界で生き抜くことを強制された人たちの物語、と要約できるだろう。この仮想世界では完全に五感が再現されているため、主観的な認識の範囲では、それを現実と呼んでもかまわないと思う。
 もちろん、一般に言う現実世界とはルールが違うし、現実の体が生命活動を停止すれば仮想世界でも消滅してしまうという制約がある。しかし、ここで考えてみたい。
 現実の世界のルールは誰が作ったのか?物理法則は自然、もしくは神という存在が決めたのだろう。国家や法、経済というルールは人間自身が決めた。そしてこの構造は、仮想世界でも同じではないのか。物理法則や世界を支配するルールはゲームの設計者が決めるのだろうし、ゲームの参加者が社会のルールを決める。
 死だってそうだ。現実の世界では病気や老衰、つまり生物の細胞に異常が生じる事で死に至るが、昔の人が考えたように、寿命を決めるのがどこかに存在するろうそくの長さではないと誰もいいきれまい。現実世界での死は、その原因まで理解しているようで、実は理解していないのかも知れない。そうだとすると、仮想世界での絶対寿命が現実世界の寿命に制限されるのと構造的には同じではないか。自らの経験に基づいて世界を判断する限りにおいて、その経験が自分にとって完全なものでありさえすれば、そこがリアルであろうとバーチャルであろうと本質的には関係がないと言える。

 この世界の主人公であるキリトやアスナは、リアルよりバーチャルの方が良いと賛美しているのではない。またその逆に、バーチャルを卑下しているのでもない。2年間過ごした"現実"を現実として認識しているだけだ。だから、バーチャルでの経験は、リアルに戻っても続いていく。失われた2年間にするのではなく、別の世界で経験を積んだ2年間と捉えているのだ。
 第1巻と銘打たれていますが、この巻でバーチャル世界からの脱出は完了します。この後はどういう方向に進むのか、楽しみです。

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アクセル・ワールド 01

練り込まれた世界観、バーチャルでの生々しい人間関係
評価:☆☆☆☆☆
 15年前に登場した、ニューロリンカーと呼ばれる脳と量子無線接続する携帯端末により、リアル世界での生活をバーチャル・ネットワークでサポートできるようになった。学校という空間はあり、そこに中学生が集まることも変わりないのだけれど、授業内容は目や耳を介すのではなく直接脳内で映像化され、理科の実験も家庭科の実習もバーチャルで行われる。
 そんな世界で生きる中学生の一人である有田春雪は、太ったいじめられっ子。昼休みも一人トイレの個室で学内LANに接続し、生徒の誰も興味を持たないゲームで時間を潰していた。そんなある日、誰も抜かせるはずがないと思っていた自分のハイスコアを、軽く抜かしてしまった生徒がいることに気づく。それは副生徒会長であり、黒雪姫と称される校内一の美少女だった。
 彼女は、ハルユキにブレイン・バーストというアプリケーションを送信してくる。そのアプリは現実を壊してくれる、という黒雪姫の誘惑に乗った彼は、これまで知らなかった世界を知る。加速世界と呼ばれるそれは、一定時間だけ思考速度が千倍になる世界だった。そして、ハルユキと黒雪姫の戦いが始まった。

 読み始めてすぐ、紹介される世界観がとても作り込まれていることに気づいた。ニューロリンカーの使用上で問題となる様なポイントにもちゃんと対策が取られている。個人的に気に入っているのは、この加速世界が人為によるものだということ。人為により作られたものは人の手で変えられるはずなので、知恵と勇気で必ずどうにかできるはず、という希望がある。
 まだまだ物語の先は長そうなので、今後の展開が非常に楽しみです。

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