壁井ユカコ作品の書評/レビュー

クロノ×セクス×コンプレックス (3)

小町の真実
評価:☆☆☆☆☆
 自分の故郷の街にもどった三村朔太郎inミムラ・S・オールドマンは、半年ほど成長したミムラ・S・オールドマンin三村朔太郎に会い、自分の周囲の環境が記憶と全く違っていること、そして何より幼なじみの小町梅の存在が消えてしまっていることを知る。
 失意の中でクロックバード魔法学校に戻った朔太郎inミムラは自分に何もできないことで落ち込んでしまうのだが、いつの間にかそのことも忘れ、オリンピア・スノ・メッシニとの関係修復に没頭してしまう。
 しかし、エマ先輩の実験を見学させてもらった際に、白亜紀の地球で県立北原高校のブレザーを発見することで、再び小町の問題を思い出す。そんなミムラを見たオリンピアは、自分を認めさせるため、またまた暴走してしまうのだが…。

 ついに永久時間剥奪者の正体が明らかになる。一気にマイナス方向への道を突っ走り始める朔太郎に対し、果たしてオリンピアはそれを引き戻すことが出来るのか?新しい流れへと進めるかの転換点が訪れそうです。
 今回も、攻められる朔太郎inミムラとオリンピアは異常に可愛らしいです。

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クロノ×セクス×コンプレックス (2)

中身が男の女子を男子が見たら
評価:☆☆☆☆☆
 ホーライ会のメンバーとなり元の時間へ帰る権利を得たミムラだが、オリンピアやニコなど、魔法学校に心残りが出来てしまい、なかなか戻る決心が出来ない。そうこうしているうちに、オリンピアを中傷するメモが回されたり、盗難事件が起きたりして、ミムラとオリンピアの仲がおかしくなり始める。
 そんなミムラの前に現れるのが、男子寮の住人でニコの従妹でもあるバーニー。朝には、訳知り顔で接してきたかと思えば、昼には初めて会ったような顔をする。バーニーは、不思議なウサギの影響で、一日の時間軸をバラバラに過ごしていた。

 前巻は女子寮の中のお話だったけれど、今回は男子寮の生活と学校の中がメインになっている。
 中身は三村朔太郎であるところのミムラ・S・オールドマンが、男子から見るとどう見えるかという視点を含めて、ストーリーは進行していく。そして、女子として男子と接するミムラの思考が、女の子っぽさにおかされていく部分が見もの。

 ラストは泣きはらしたミムラのシーンで次巻へと続くけれど、いったいミムラの身に何が起こったのかは次のお楽しみです。

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カスタム・チャイルド 罪と罰

遺伝子の枷、言葉の枷
評価:☆☆☆☆☆
 「もしも親が子供の遺伝子を自由に加工できたら」というもしもがあった場合の、現代のお話であり、軸になるのは三人の少年少女とその親たちだ。
 春野倫太郎は、親が望んだ才能を発現しなかったために、遺伝子操作をした会社に"返品"された過去を持つ。それを引き受けたのが、カスタマーサポート担当だった春野知佳だ。そんな倫太郎が予備校で出会った清田寿人は、親の宗教上の理由で全く遺伝子操作をされなかった子供。そして、アニメのキャラクターに似せて作られた冬上レイ。

 親は自分の子供に期待をする存在だが、その期待には根拠が無いのが普通だ。しかしこの世界では、自分が子供に最上の遺伝子を与えた(あるいは与えなかった)という根拠じみたものがある。だからその期待は明らかな形を持っていて、無慈悲に子供をゆがめる。わずかのズレも排除しようとする。作品中で無条件に許してくれるのは、遺伝子的に何のつながりも無い親だけというのは皮肉なことだ。

 一度課せられた枷は簡単には外れない。その中で三人は色々と足掻く。枷をはずすことに幸せを感じるのか、あるいは枷がかけられた(求められた)状態にあることに幸せを感じるのか、どちらがより幸せなのかがはっきりとは言えない世界なのだ。

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クロノ×セクス×コンプレックス (1)

少年がのぞく少女の世界
評価:☆☆☆☆☆
 三村朔太郎は中学校卒業式の日、教室で幼なじみの小町梅に心無い言葉をぶつけてしまう。後悔冷めやらぬ高校入学式の朝、奇妙な路地で少女とぶつかった三村は、体が入れ替わっていて、その少女ミムラ・S・オールドマンとして、時間を操る魔法を学ぶ学校に入学することになる。状況の認識も追いつかぬまま、ミムラと同率首席のお嬢様オリンピアと、監督生の座を争うことになり…というお話。
 男子学生もいる学校なんだけれど、登場するのは女子学生ばかりで、まるで女子高に迷い込んだような雰囲気。(迷い込んだことはないけれど)未知の世界で冒険に挑む少女(少年?)を描いたジュブナイル小説という感じで、暗い雰囲気はほとんどない。
 普通の世界と魔法の世界、それぞれがどのように関わってくるのか、本物のミムラはどうなっているのかなど、純粋にワクワクしながら楽しめる作品だと思う。

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鳥籠荘の今日も眠たい住人たち (6) Blood Party !

世界は変わらず続いていく
評価:☆☆☆☆★
 2部構成になっていて、前半では鳥籠荘を去って行った住人のその後の生活と、新オーナーとして帰国したキズナを描いており、後半ではもしも浅井有生が美術教師でキズナが吸血鬼だったら、というアナザー・ワールドが展開されています。メインのストーリは前巻までで終了しており、この巻では後味良く仕上げたという感じでしょうか。
 華乃子と同居することになった加地くんのあたふたぶりと、段々と成長していく華乃子がその中でも変わらないものを見つけて微笑む姿を見れただけでも、購入した価値はあったように思う。

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