柏葉空十郎作品の書評/レビュー

妹(マイ)ホーム (2)

金持ちの気まぐれ?
評価:☆☆☆☆★
 私立雲雀之丘学園に給付奨学生として入学した相葉佑と相葉真伊は、住んでいる場所を追い出されたものの、幼なじみの志井舞衣がオーナーとなったぼろアパートで、学園女王の姉川美唯に修理費用を出資してもらい、何とか二人で暮らし続ける環境は整った。
 しかし、幼なじみだと思っていた志井舞衣はもしかすると実妹かも知れないという疑惑が発生。必然的に、相葉真伊が義妹かも知れないという状況になってしまう。

 奨学金でギリギリ生活できるとは言え、これから夏本番を迎え、クーラーが欲しいところ。しかし、そんな余裕は彼らには無い。悩んだ果てに、校則違反だとは知りつつもバイトをしようと考える相葉佑だったが、それを生徒会副会長の妹原愛に見とがめられてしまう。

 実妹義妹騒動には未だ答えは出ず、それに混迷を増す、血縁とは全く関係ない富裕層のヒロインが新たに追加される。非常にローテンポで、志井舞衣の肉食系な行動を除けば、比較的ほんわかなヒロインに彩られている作品ではある。
 主人公の兄妹の不幸っぷりは、彼らに手をさしのべる複数の少女の登場により、かなり薄められた。前巻であまりにひどい対応をした人物もフォローしつつ、色々と気を遣って大変だなあと思った。

妹ホーム

展開に翻弄される
評価:☆☆☆☆★
 私立雲雀之丘学園に給付奨学生として入学した相葉佑と相葉真伊は施設の出身。佑は真伊の一歳年上だけれど、中学卒業から一年間、生活費を稼ぐために働いていたため、今年一緒に入学する。住む場所は、オンボロだけれど家賃五千円の格安物件だ。
 つつましくも幸せをかみしめつつ学校に行ったものの、志井舞衣に対するセクハラ疑惑をかけられ、内部進学生の女王様、姉川美唯には敵視され、幸先は不良。悪いことは重なるもので、大家の死去に伴い遺産を相続した人物は、マンション建て替えのため、彼らを無保証で追い出してしまう。

 しかし禍福はあざなえる縄のごとしとはよく言ったもので、実は舞衣がかつて施設で一緒に暮らした幼なじみであり、更にアパートを遺産相続するという偶然があって、何とか住む場所を手に入れることが出来た。
 ただし今度はなぜか、舞衣や美唯ともひとつ屋根の下で暮らすことになってしまう。そして、彼らの関係に関わる秘密が暴露され、またしても変なことに…。

 実妹・義妹・幼なじみがクルクルと入れ替わる奇妙な構成となっていて、しかも名前が似通っているので頭は大混乱。主人公も大混乱の展開となる。さすがにこんなことは現実にはありえんだろう。
 それにしても相変わらず妙に毒のある設定が盛り込まれていて、登場する大人は子供を騙したり、捨てたりする悪い奴ばかり。無責任なのにも程がある。

 まあそれはともかく、年下の女の子に翻弄されたい願望がある人向け。あと、広島弁が妙に可愛く見える不思議さがある。

ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様 (2)

もう一人の女子選手
評価:☆☆☆☆★
 前巻は、本田綾音が真っ向勝負で挑むというところにゲームの真骨頂があった。しかし今回は、名門校・一流選手に対して、公立校・普通の選手がどの様に対抗するかというところに焦点が当てられている。だから、チームとしては県大会でベスト4となって春の甲子園の21世紀枠を目指し、個人としては、石橋蘭が、川崎巧也が、他の選手たちが、いかに相手に全力を出させず、自分の力を出し切るかに挑む。
 綾音が代表試合に遠征中の間の野球部のバイト風景から始まり、兄との対決や横恋慕に悩む蘭の心理描写、微妙にすれ違いを生む綾音と巧也などの姿が描かれる。そして後半は、その微妙な関係を引きずったままで秋の大会に入ることになる。果たして彼らは甲子園への切符を手にすることができるのか。

 前巻と違って監督兼部長のうざい様があまりないのは正直言って助かる。また、21世紀枠を目指すという、スポーツものの常道から少し外れた部分にスポットを当てたところも面白いと思う。ただ、厚さから見ても分かるかも知れないが、解説が細かすぎる気がした。
 もちろん、野球のプレーについての解説が詳細であることは必要だ。そうしなければ、野球に詳しくないものは状況を理解できない。しかし、キャラクターたちの心理まで必要以上に書く必要はないと思う。あまり詳しく解説されると、読む側の解釈の余地が減るし、想定する以上の深みがなくなってしまう気がする。まるで、詳細な演技指示がされた台本のように。

 ストーリーは人間関係的に良いところで終わりになってしまったので、今後の展開が楽しみだ。

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ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様

経験者には都合が良すぎると言われるかも知れないけれど、そこは物語なので
評価:☆☆☆☆★
 高校野球に女子選手が参加できるようになった世界のお話。
 小学生の本田綾音は、川崎巧也と約束をする。高校生になったら同じ学校に行き、甲子園を目指すこと。そして綾音はイギリスへと旅立っていった。
 三年後、日本に帰国した綾音は、巧也との再会を楽しみにしていた。綾音がイギリスにいる間に巧也は、世界野球選手権16歳以下部門の優勝投手に成長していた。イギリスからこっそり進学先を調べ、同じ学校に入学した綾音だが、その学校の野球部は廃部寸前。そして、再会した巧也は野球をやめ、医学部を目指して勉強に没頭していた。
 かつての約束を果たすため、そして自分の三年間の努力を無にしないため、綾音は巧也をなんとか野球に戻そうとアタックを開始する。そして…。

 ページ数を見れば分かると思うが分厚いので、上巻と下巻が一冊にまとまっていると考えるのが適切かもしれない。なぜなら、前半と後半で大きく物語が転換するから。野球の試合の話が出てくるのは、後半になってからである。
 後半は普通にスポーツものなのだけれど、前半はそこに至るまでの青春ものという感じ。個人的な感想で言うと、前半は少しつらかったけれど、後半は純粋に楽しめた。

 また、作者自身の経験に基づくのかは知らないが、分かりやすくいやらしい性格のキャラクターが登場する。これを許容して読めるかどうかが、前半でひかないためのポイントになる気がする。
 その他には、才能と努力に関する言及が、ストーリー展開上の必然性はさほどないように思えるにも拘らず、各所にあらわれる。何かこだわりがあるのだろうか?

MIB (2)

人は信じたいものを信じる
評価:☆☆☆★★
 前巻で人類を滅亡させる性病に感染した高校生天川星人と、それを監視するために地球に残った宇宙人アリアやそのサポートをするグレイにしてメイドさんのミムラを中心として、地球を救うためにその性病を蔓延させようとする組織から派遣された少女とのやりとりや学校生活などを描いた作品。本筋だけでなく、二次元と三次元がごっちゃになった言動をする竹林や、一年生にして風紀委員長である立花理香の壊れっぷりなど、脇を彩るクラスメートの言動に注目しても良い。
 たまに真剣になる時もあるけれど、基本的にはアリアが無茶苦茶な行動をとるので、コメディっぽくなることが多い。あとは、ミムラと星人の会話は和み系で、住んでいる場所が山の中であることもあってキャンプ的なイベントが発生することもある。

 しかし、考えてみるとかなりすごい設定だな…

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