玩具堂作品の書評/レビュー

好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる

評価:☆☆☆★★


漂流王国 (2) 国民的アイドルVS.勇者アイドル

評価:☆☆☆★★
月白素晴子シュテーム・ハーツの月野優姫

漂流王国 難民勇者と目指すトップアイドル

勇者からアイドルへ
評価:☆☆☆★★
 日本の十六門市に突如転移してきた異世界の住人達は、日本と融和政策を取り、漂流王国メヘンと十六門市の二重行政が誕生した。それから九年が過ぎ、母親の鵐目夜明市長に呼ばれ十六門市へとやってきた鵐目翌と鵐目朝霞は、勇者候補リーン・キンバリン、エルフのレレレリカ・パラ、ドワーフの潜楽ノエルと知り合う。そして、シータ・ティレッシアス七世の要請を受け、なかよくなる課のメンバーと共に、リーンを勇者へと押し上げる活動に従事することになるのだった。

CtG ─ゼロから育てる電脳少女─ (3)

スワンプマン
評価:☆☆☆☆★
 ハルハの母親を名乗る少女、日下秋理は、遊と美遥にハルハの引き渡しを求めてくる。それをすぐさま断った遊と美遥だったが、なんとしてもハルハを必要としている日下秋理は、アリシアというアバターでソラリというハダリーズを連れて現れる。
 シリーズ最終巻。

CtG ─ゼロから育てる電脳少女─ (2)

リアルの重さ
評価:☆☆☆☆★
 春日井遊のクラスに釘宮美遥が転入してきた。小槌冬風はまるで後妻打ち(うわなりうち)の雰囲気を醸し出し、それを受けた釘宮美遥は恋愛師匠として女子たちから人気を集める。一方、両親が学校に出かけている間、ゲームセンターに初めて入ったハルハは、神奈桜という中学生と友達になる。
 そんな時、再びハダリーズが関係していると思われる事件が発生し、クランプとミーファは、ハルハやパヤキノさんと共に調査をすることになってしまう。その事件とは、イクという存在によってユーザーの人格が変化し、それと同時に元人格を持ったプレイヤーが発生するというものだった。

 今回は現実世界の比重がはるかに重い感じだ。

CtG ─ゼロから育てる電脳少女─

ゲームが生んだ人間
評価:☆☆☆☆★
 母親の遺したVRMMO「クレイドル・トゥ・ザ・グレイヴ(CtG)」に入り浸り、友人と没交渉になり気味だったスカラベのクランプこと春日井遊は、とある攻略でミーファという少女と出会う。偶然発生する結婚イベントを彼女と発生させたクランプは、軽い気持ちで結婚してしまう。ところが、突然のミーファからの連絡で駆け付けたクランプが見たのは、彼女が抱く赤ん坊だった。
 乳母NPCのパヤキノさんの説明で、その赤ん坊が結婚で生まれる二人の子供だと分かり、二人は彼女をハルハと名付けて育てることにする。順調に成長していくハルハだったが、ある日、CtGの運営だという新納蔓世と甚目左が春日井遊にやってきて、一人の幼女と一人の少女を紹介する。それはゲーム内で結婚したはずの妻と娘だった。

 混乱しながらも、ゲームからリアルにやってきたハルハこと春羽と、なぜか自宅に帰らないミーファこと釘宮美遥と暮らすことになった遊だったが、その様を幼馴染の小槌冬風に目撃されてしまう。

子ひつじは迷わない 贈るひつじが6ぴき

届かないクリスマスプレゼント
評価:☆☆☆★★
 文芸部元部長の東原史絵の依頼で、彼女の親戚が経営する冬山のロッジに出かけることになった成田真一郎、佐々原三月、仙波明希、竹原岬は、そのお嬢様である葉村千代監修の下、クリスマスにある劇を演じることになった。
 配役は、祖父江静一、葉村倉子、葉村千代、祖父江織乃の4人。このうちの祖父江静一が死んだ事故が実は他殺であり、それを証明するために劇を演じて欲しいというのが彼女の依頼だった。

 いつもとは違う場所で、いつもとは違うシチュエーションにドキドキしたり警戒したりする少女たちと、またもや何も考えずに行動するなるたまの、近づくんだか離れるんだかの物語が繰り広げられる。あんまりミステリミステリした感じではない。
 今巻でシリーズはいったん終了となるらしい。

子ひつじは迷わない 騒ぐひつじが5ひき

お祭りにひそむ衝動
評価:☆☆☆☆☆
 文化祭が間近に迫り、「迷わない子ひつじの会」の生徒会メンバーも準備に奔走していた。会長の竹原岬の発案で「子しつじ喫茶 らみーず」を開くことになった生徒会。岬はあふれる胸をタキシードに押し込め、成田真一郎はメイド服を着せられる。しかし、先月の仙波明希の和装メイドに続いて佐々原三月の正統メイドを見ることが出来るのは眼福だろう。
 そんな風に忙しくしているときにも相談はやってくる。演劇部の綿貫司が鹿野千佳子に出された課題は、演目「古十郎刀暦」の阿波古十郎が「首狩り」藤波朝衛の秘剣「負の太刀」を破った際の工夫を自分で見つけ出すこと。古十郎が碁敵「千里眼の巫女」の示唆を受けたひそみに倣い、彼も子ひつじの会に相談にやって来たのだ。

 そして文化祭当日には、何故か巫女服を着たサトウ(仮)が寄絃芳花を連れてやってくる。彼女は演劇を楽しみにしているらしい。一方、鹿野桃子もメイド服を着せられ、彼女にちょっかいを出した成田真一郎は、岬や三月から冷たい目で見られてしまうのだった。
 体育教師の梁井湧子にまでメイド服を着せてご満悦の子ひつじのもとに、宍倉徹と付き合っている中瀬華が相談にやってくる。彼に趣味のBL作品を見られてしまったという。バカバカしく見える相談の影には、彼女の悲しい人間観が隠されていた。

 文化祭でもいつもの様に飛び回るなるたまに放っておかれた明希がデレ始めるところ、なるたまに逆襲されて自棄になる桃子、なるたま貸借対照表をつけ出す三月の妙な自己解決がポイント。

子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき

見えなくなる自分の心
評価:☆☆☆☆★
 特にまとまった予定のない夏休みをゴロゴロと過ごしていた成田真一郎のもとを、幼なじみにして生徒会長の竹原岬が訪ねてきて、強引に予定を入れていく。向かった先は、山奥にあるモノクロの洋館。同行するのは夏休みでずっと会っていなかった佐々原三月だ。そしてたどり着いた先には、サトウ(仮)のいつもの中学生と、和装メイドの格好をする仙波明希がいた!
 その洋館、万鏡館の当主である寄絃芳花は、サトウ(仮)の友人らしく、そのツテで明希が、そして岬が声をかけられたらしい。そんな友人の暮らす洋館なのだが、そこは名前に反して、ひとつも鏡が据え置かれていなかった。

 鏡の持ち込みも禁止され、書庫の整理のお手伝いをすることになるなるたまたち。やがて芳花から、ちょっとしたクイズが出されることになる。それは、寄絃家に隠された秘密にまつわる物語だった。

 ミステリーといえば閉鎖系の洋館というわけでかどうかは知らないが、迷わない子ひつじの会のメンバーは、生徒会室から郊外へと出張する。当然、安楽椅子探偵役の仙波明希も、ちょっとだけ行動派の探偵にクラスチェンジして活躍することになる。
 今回は、他人の主観から見た自分がテーマ。鏡のない生活で、自らの主観による自分が失われた時に、確かに残る自分は何なのか、というようなお話だ。そんなちょっとした特殊な環境に放り込まれて、いつもの自分とは少し違ってしまう女性陣の戸惑いが肝となる。

子ひつじは迷わない 泳ぐひつじが3びき

気の多いなるたま
評価:☆☆☆☆★
 生徒会長の竹田岬の思いつきで始まった、学内万揉め事相談「迷わない子ひつじの会」。書記である成田真一郎と佐々原三月は、会が開かれる教室の隣部屋に生息する生徒、仙波明希から大層消極的な協力を強制的に受けつつ、生徒たちの幸福な学園生活に一役買っている。
 今回、会に寄せられたお悩み相談は、水泳部で発生した謎の大量校章盗難事件、彼氏と彼女のすれ違い事件、友だちから急に冷たくされてしまった事件を取り扱いつつ、その過程で明らかになる過去のなるたまの失敗談や、三月や明希の感情の変化について描いていく。

 1巻では独善的善意の暴走機関車と、他人の感情には無頓着な人形という性質を背負わされた生徒会書記たちであったが、その後に起きた様々な事件を解決していく過程でそれらは和らぎ、新たに生まれた人間関係に起因する感情の揺らぎを見せるようになってきた。
 それは、毒舌少女の明希にしても同じこと。これまではコントロールされた範囲で、無表情に、冷徹に罵倒するだけだった彼女が、極めて感情的、情緒的な反応を見せるようになって来たのだ。

 そんな訳の分からない分析はさておいて、のんびりとした学園にあって、妙にピリピリした雰囲気を醸し出しながら、やっぱり平和な事件をゆったりと解決していくミステリータッチの学園もの。次巻はミステリーの王道らしく、クローズドサークルっぽい展開になるようです。
 しかし、なるたま、人畜無害そうな顔をして、そういう展開に行くかあ。

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子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき

キャラの人格形成過程に興味がわく
評価:☆☆☆☆☆
 生徒会長の竹田岬が思いつきで作った悩み事相談所、迷わない子ひつじの会で相談事に対応することになった成田真一郎と佐々原三月は、その会議室の隣部屋に巣食う文芸部の少女、仙波明希に相談を持ちかける。そして彼女は、めんどくさそうに、そして成田真一郎のやり方に嫌悪を示しながらも、結局は彼らを助けてくれるのだった。
 今回、迷わない子ひつじの会に持ちかけられる相談は3つ。告白した女の子から出された文章問題の解答に苦労する少年、喫茶店のオムライスが引き起こす事件の怪、そしてまじめな生徒と教師のまじめすぎる悩みだ。これらの悩みに正攻法で解答を得ながら、しかしそれをあえて外して解決に導いて行く。

 仙波明希の成田真一郎に対する嫌いっぷりと、成田真一郎の色んなものを巻き込んだ解決方法、そして佐々原三月の危なっかしさと、三拍子そろったキャラクターが織り成すミステリー風の学園ものになっている。
 それはそれとして楽しむとして、個人的には一話目の三国志を底本とした様なテストの問題文も面白かった。

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子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき

嫌われる善人
評価:☆☆☆☆★
 生徒会長の竹田岬が提唱した迷わない仔ひつじの会は、生徒の悩みを生徒会メンバーが解決するのが目的だ。会長の知り合いという理由で生徒会書記となった成田真一郎(なるたまいちろう)は、最初の悩み相談の解決策を悩んでいるときに、クラスメイトの仙波明希と会う。
 何故か真一郎を蛇蝎のごとく嫌う明希だが、彼女のアドバイスを参考にして解決策を提案した真一郎は、それからも難問へのアドバイスを求めて彼女の下へ通うことになる。もっとも、同じ生徒会書記の佐々原三月と同行したりしても、彼女から嫌われていることは変わらないのだが。

 面倒事を避けるために他人を避ける明希と、誰かのためならば一心不乱に邁進する真一郎、そして他人と違う感覚を隠すためにあまり他人に関わろうとしない三月。そんな3人が、続々と寄せられる相談に悩んだり、落ち込んだり、奔走したりします。
 短編ミステリー風味の学園青春物語です。

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