春日部タケル作品の書評/レビュー

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (9)

逆転の文化祭
評価:☆☆☆★★
 天上空の呪縛から解き放たれた甘草奏は、ショコラだけでなく、遊王子謳歌や雪平ふらのの好意を理解できるようになっていた。おかげで二人に対する態度がぎこちなくなってしまう。
 そんな中やってきた文化祭。出し物は演劇に決まったのだが、その脚本は、彼らの状況を性別逆転させた内容そのものだった。絶対選択肢のために主役にキャスティングされた甘草奏、ショコラ、遊王子謳歌、雪平ふらのの運命は?

 そして失意の爽星素直に近づく四葉紙伊緒乃の正体は?

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (8)

哀れなり、爽星素直
評価:☆☆☆★★
 唯一無二のお断り男として学園中から蔑まれる存在となった甘草奏は、未だ天上空の束縛から解放されず、遊王子謳歌や雪平ふらのからの露骨なアピールにも拘らず、恋心を認識できないでいた。
 脳内選択肢はさらに露骨にゲスいものへと変わり、さらにはショコラの性格がまたしても激変し、日替わりで様々な性格を見せるようになる。

 そして与えられたミッションは、体育祭でヒロインたちの輝く姿を撮影すること。立候補で撮影係になった甘草奏は、ヒロインたちの輝く一瞬を撮影しようとする。
 爽星素直の哀れさよ。

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (7)

ラブコメモード
評価:☆☆☆★★
 天上空と再会した甘草奏の脳内選択肢に変化が訪れた。絶対選択肢がラブコメ選択肢に変化したのだ。おかげでどれを選んでも、女の子たちの好感度は上昇する。
 そんなタイミングで表ランキングの更改タイミングが訪れた。裏工作にやってきた表ランキング2位の爽星素直を見返すために、甘草奏、ショコラ、遊王子謳歌、雪平ふらのはクラスの後押しを受けて表ランキング入りを目指すことになる。その際、遊王子謳歌はお嬢様属性が、雪平ふらのにはおしとやか属性が振り当てられたため、彼女たちの校内人気もうなぎ上りの展開になっていく。

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (6)

三年前の悪夢
評価:☆☆☆★★
 甘草奏のもとにバス旅行のチケットが送られてきた。父親の助言に基づき回避する予定だった甘草奏だが、絶対選択肢のせいで旅行に出かけなければならなくなってしまう。
 一緒にやってきたショコラ、遊王子謳歌、雪平ふらのと共に不安なバス旅行に出かけた甘草奏だったが、その途中、三年前の出来事が頭をよぎり始める。そこで彼は天上空という一つ年上の少女と出会ったのだが、その時の記憶を封印してしまっていた。

 思わせぶりな態度を取るバスガイドと会話するうちに、次第に三年前の出来事を思い出し始める甘草奏。一方、バスガイドは遊王子謳歌や雪平ふらのをそそのかし、甘草奏に積極的なアプローチをとらせようとするのだった。

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (5)

下半身は動くけど心は動かない
評価:☆☆☆☆★
 遊王子謳歌、雪平ふらの、ショコラが、甘草奏への恋心を自覚した。しかし、甘草奏本人は全く、かけらも気づいていない。一緒に暮らしているショコラからは熱烈な告白を受けるのだが、心がちっとも動かない。
 そんな彼に、脳内選択肢に対する拒否権が10個与えられる。これを一つでも残したまま二週間過ごすことがミッションクリアの条件なのだが、出される脳内選択肢のハードルはいつもより上がっている。このミッションの意味を生徒会長の黒白院清羅に尋ねても、何も答えてはくれない。

 一方、少女三人は、暴走したり紆余曲折を経たりしながら、自分らしいアプローチで甘草奏へ迫ろうと決意しつつあった。しかし、頭をぶつけて一時的に本来の機能が表出したショコラは、そんな二人を罵倒し、夏祭りでの直接対決を申し渡す。その結末やいかに?

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (4)

恋に落ちる瞬間
評価:☆☆☆☆★
 脳内選択肢に悩まされて恋愛ができないと主張する甘草奏の前に、生徒会長の黒白院清羅から依頼を受けた、お色気たっぷりの恋愛マスター女子高生の密秘が現れる。彼女は甘草奏を誘惑してくるのだが、途中からなぜか、遊王子謳歌や雪平ふらのを焚きつけるようになり、それに乗せられて、彼女たちと連続デートをすることになってしまう。
 今回、神から送られてきた呪い解除のための指令は、誰かが恋に落ちる瞬間を目撃することと、へっぽこ神の僕のショコラに嫌われるということだ。そのために、密秘のつてを利用して、街コン会場に繰り出したりもすることになる。

 ありえた可能性の掌編は、今回はショコラがぶっ壊れていなかった場合に統一され、時系列を持って進行する。その結果、本当の意味での呪い解除の方法が明らかにされるのだ。

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (3)

恋に目覚める少女たち
評価:☆☆☆☆☆
 脳内選択肢の原因からも知れない生徒会長の黒白院清羅が仕掛けた対決を乗り切り、お断り5にはご褒美としてプールのチケットが与えられた。甘草奏は、お断り5みんなそろって遊びに行こうと思うのだが、どうも様子がおかしい。
 遊王子謳歌は無邪気さを羞恥に塗り替えているし、雪平ふらのは変わらず毒舌を放つものの詰めが甘い。そしてへっぽこ神の僕のショコラは、大食いをやめ、普通の有能な神の僕になってしまった。

 と驚いたのも束の間、表面上、全ては元通りになり、道楽宴の出す車に乗って、プールへと遊びに行くことになる。だが甘草奏は、遊王子謳歌の泣き顔を写真に撮るというミッションと、思ったことがランダムで声に出てしまうという脳内選択肢の副作用つきだ。
 行った先にはシリコン爆乳の麗華堂絢女や柔風小凪も遊びに来ており、何より彼女たちを誘った黒白院清羅がいた。そして、ミッションの達成を微妙に妨害してくる。

 ふらのとの夫婦漫才や、普通になったショコラとのラブコメ、遊王子謳歌の幼児プレイなど、いつもとは違うキャラ性の発露が描かれる。脳内選択肢の解決はほとんど進まないが、なぜかヒロインキャラとの関係性は順調に深まっている。

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している (2)

労せず暴かれていく秘密
評価:☆☆☆☆★
 見目は良いけれど行動が残念な生徒たちで構成されるお断り5の一員であることは、天草奏の本意ではない。彼がそうなってしまったのは、脳内にひらめく絶対選択肢の呪いのせいだ。その呪いを解くべく神から遣わされた少女ショコラは記憶喪失のために役に立たず、かつて同じ呪いに悩まされたロリ担任の道楽宴は、サポートはしてくれるものの助けてはくれない。
 新任の神によりはじめられた呪い解除のミッションで、お断り5のクラスメイトの雪平ふらのや遊王子謳歌、表のもてるランキングに入る柔風小凪との関係が掻き回され気が気ではない学園生活を送る天草奏には、またしても困難がふりかかる。

 ひとつは、海外に引っ越したはずの幼なじみにして全人類の妹を標榜する箱庭ゆらぎが入学して来てまとわりついてくること。もうひとつは、新入生歓迎イベントで行われる表のランキングとお断り5の対決に参加しなければならなくなったことだ。
 それに合わせて二度目の呪い解除ミッションが発動。それはイベントに参加する女子たちから「好き」と言われること。謳歌や小凪はともかく、ほとんど話したこともない生徒会長の黒白院清羅や、巨乳ツンキャラの麗華堂絢女からその言葉をもらうことのハードルは高すぎる。

 そして天草奏の周りには、ヤンキー副会長の獅子守想牙や、ハーレム男の吉原桃夜などが加わり、事態はさらなる混迷のラブコメに突入していくことになる。

 おそらくは作者が書きたいであろうファンタジー要素や中二要素は徹底的に排除して、会話文主体のラブコメとして仕上げている。売れなければ書きたいものも書けないのだから、商業としてはこれも仕方ないのか。

俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している

ライトな理不尽さ
評価:☆☆☆★★
 ある日、天草奏の脳内には、絶対選択肢が降りてくるようになった。脳内にひらめく二択のどちらかを選ばない限り、強烈な頭痛がどんどん強まっていく。しかしその選択肢は、どちらも周囲を引かせる最低なもの。そうして選び続けた結果、奏はお断り5という、見た目は良いが中身は最低な証である学内ランキングに名前が載ることになってしまった。それでも退学になったりしないのは、絶対選択肢のことを知るロリ担任の道楽宴がサポートしてくれているからだろう。
 そんな耐えがたい生活も日常になった頃、彼の前に、美少女が降ってくる。彼女の名はショコラ。絶対選択肢の呪いを解くために神さまが遣わした僕だという。しかしショコラは記憶喪失らしく、全く役に立たない。それなのに、奏の携帯には、失敗すれば一生呪いが解けないという神さまからのミッションが送られてくる。それは、同じくお断り5である雪平ふらのや遊王子謳歌、そして逆にもてるランキングに載る柔風小凪を巻き込まざるを得ないミッションだった。

 見た目は美少女だけれど中身はいろんな意味で残念な少女に対し、ラブコメなミッションをクリアしなければ呪いが解けないという状況に陥ってしまった少年の、ばかばかしい奮闘を描く。その課程で、残念じゃない美少女も巻き込みつつ、モブキャラの少年少女からは蛇蝎のごとく嫌われる存在になっていくわけだが…。
 短い文章の連続による掛け合いや、怒濤のぼけ倒しに対するツッコミなど、ライトさを至上とするならば、かなり良い評価を受ける作品かもしれない。しかし一方で、ストーリー性を重視するならば、物足りなくも感じるかもしれない。そういう意味で「生徒会の一存」のような日常系のライトさと、「ココロコネクト」のような超越者に翻弄される少年少女を描いた作品とも言える。

ヒマツリ (2) アイスドール・ウォーズ

評価:☆☆☆☆★
 この世界には、人間世界のほかに、魔遊庭とマキナガーデンという世界があり、それぞれに枷人とマキナリアという強力な力を持つ生命体がいて、生存のための対立を続けている。枷人の中でも五忌獣という特に強力な個体のひとりである火猿は、死にかけて猿のぬいぐるみの中に封じられ、花村祭という女子高生と10年近く暮らしてきた。その平穏が破られ、戦いの結果、火猿はぬいぐるみから消えて去ってしまい、花村祭はひとり残された。
 それから1ヶ月、突然、火猿が戻ってきた。ただし、ぬいぐるみではなく、元の身体になって。五忌獣のひとり、渦鴉が遺灰から火猿を呼び起こしたのだ。ただしその火猿には、祭と暮らした10年近くの記憶がすっぽりと抜け落ちていた。

 時を同じくして、花村祭のもとに、彼女の娘を名乗る少女、花村さとりが現れる。彼女は自分が未来から来たといい、未来で祭は火猿に殺されるという。そして、彼女たちに関わってくる新たなマキナリア、ミソラ・ベリーウォーカーと、渦鴉は、どんな役割を果たすのか?
 今回は、大鳥大吾と本城悠季はちょっとしか出番がない。

 個人的には物語の展開スピードが相当にゆっくり目かなあ、と思う。今回のエピソードも、ちょっと引き延ばし過ぎだったかも。伏線を引っ張るだけじゃなく、もう少しこの巻で情報が開示されても良かったような気はした。
 …これ、ちゃんと続くのかな?

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ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿

ベタさが面白要素の物語
評価:☆☆☆☆★
 女子高校生・花村祭が7年前から持つ赤い猿のぬいぐるみサンジュは、自分で動いて話す。当時は色々あって不思議に思いながらも受け入れてしまったので、もういまは違和感がなく一緒に暮らしている。
 そんな変わった部分と、異常なまでにドジで運動音痴だということを除いては、ふつうの少女だったはずなのに、夜の公園で人を襲う少年に出会い、その少年をサンジュが祭に乗り移って撃退したことで、平穏な日常は様相をがらりと変えてしまう。

 サンジュが実は火猿という名前であり、魔遊庭という異世界に住んでいた枷人という種族であり、同じ様な異世界・マキナガーデンに住むマキナリアという種族と仲が悪いという。その原因には、マキナリアに寄生する粘性機群という存在を抑制する効果が、枷人の死んだあとに残る灰にあるとか何とか。
 よく分からないながらも、とにかくすごい力を持った奴らに狙われることになり、ふつうならば逃げ出したくなっちゃいそうなものだけれど、祭は少しふつうと違っていて、結局は自分から渦中に飛び込んで行ってしまうことになるのだ。

 熱血バカの火猿と、ドジだけどある意味ですごく強い祭が遭遇するバトルアクションあり、学校での友情物語あり、そして影の黒幕や謎の美人お姉さんがいたりするベタさが面白要素の物語。今回は、ヒーロー登場、そして月日は流れ…という感じで2巻に続きそうです。

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