葛西メイダイ作品の書評/レビュー

今どき、女中で奉公って!?

現代っ娘が女中さんに!
評価:☆☆☆☆☆
 父親が手を出した先物取引で生じた借金のカタに、名門木津家の屋敷で女中奉公をさせられることになった津山早苗、15歳。再び両親と暮らす日を夢見て、着物を着て掃き掃除などという、とても現代日本とは思えない日常を、元気いっぱいに過ごしている。
 そんな早苗が担当するのは、木津家の跡取り三兄弟の部屋掃除。当主に代わって屋敷を取り仕切る長男の総一郎、部屋に引きこもりピアノを弾く次男の亮二、高校受験を控える三男の芳三。他の女中たちは災難を嫌って彼らに関わるのを避けるのだが、早苗は使用人であることも忘れてしまうのか、かなり大胆に、彼らに喜怒哀楽を表現するのだ。

 そして徐々に明らかになって来る、三兄弟の確執。総一郎はなぜあれほど冷徹に人に接するのか、亮二はなぜ引きこもるようになったのか、芳三は隠れてコソコソするのか、早苗の行動が木津家の人々の記憶の蓋をこじ開ける。
 茶葉をまいて畳の掃き掃除、電話は黒電話で、洗濯をするには洗濯板を使う。部屋にはハエ取り紙がぶら下がり、文字が読めない女中までいる。そんな時代に取り残されたような環境の中で繰り広げられる家族の物語は、バラバラだった人の心を結び付けていく。

 別に普通の環境でこういう物語を繰り広げてもよいとは思うのだが、もしかすると現代日本は、この様な人情話にリアリティが持てない社会になっているのかもしれない。だから時代劇がいつまでも廃れない様に、そういった感情にリアリティがあった時代が、舞台として選ばれたのだろうか?

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