唐辺葉介作品の書評/レビュー

つめたいオゾン

重たい終局
評価:☆☆☆★★
 本来は別人格である二人が、夢で互いの人生の共有をはじめ、いずれは精神が融合し、二つの身体で一つの精神を持つようになってしまう奇病アンナ・メアリー症候群。そんな病理に蝕まれた男女がまた一組。
 公務員夫婦の待望の息子として育てられ、やがて新進棋士奨励会三段となる俣野脩一。両親を火事で失い、親戚に引き取られるものの、アルビノで、強姦されたり監禁されたりする悲惨な人生を歩む中村花絵。彼らの人生と、融合していく過程で抱く思いとは。

ドッペルゲンガーの恋人

アイデンティティのありどころ
評価:☆☆☆☆☆
 テロ目あの修復技術が確立され、クローンは一般的な技術になった。しかし、人間のクローンは犯罪だ。倫理的にも問題があり、世界では禁止されている。だがそれも、倫理を上回る何かが存在する状況が生まれれば覆る程度のものでしかない。そして戦争は、その状況としてこの上ないもののひとつだろう。戦争によって技術が進歩するのは、一面の真理ではある。
 要人のバックアップを作る目的で開始された、人間のクローンと記憶の移植技術の研究は、大詰めを迎えていた。戦争の終わりによって再び倫理が取り戻される前に、ギリギリ滑り込みで作られたクローン人間の名前は木原慧。研究者の土師悠司が、余命わずかの自分の恋人を、クローン人間として、かつての記憶を持ったまま、蘇らせたのである。

 かつての記憶を全て持ったまま作り出されたクローン人間は、果たしてもとの人間と同じなのか、それとも違うのか?生と死の最前線で繰り広げられる、人間とは何かの恋物語です。

ホーム
inserted by FC2 system inserted by FC2 system