海冬レイジ作品の書評/レビュー

も女会の不適切な日常 (3)

解きほぐされる始まり
評価:☆☆☆☆★
 エスニカ学園「もっと学園生活を豊かにする善男善女の会(=も女会)」部は、花輪廻のハーレムと化した。十和田愛とつき合っているだけでは飽き足らず、千種エスニカや大洞繭、丸瀬市雛子からも熱烈な告白を受ける有様だ。泣く泣く諦めた須唐座有理が浮かばれない。
 さらにも女会に、源ひかるというロリ少女がいつのまにやら加入していた。彼女はも女会の女子たちを引っかき回し、十和田愛の嫉妬心を駆り立てる。

 も女会がハーレムと化したのは、十和田愛をアッパーグラスに連れ戻そうという空絽の介入だ。そんなオルガノン・ダイバーの暗躍を好まないオルガノン・リバース・コンパイラは、も女会を通じて事態に介入しようとする。

 シリーズ最終巻。ヒロインたちが入り乱れてもはや何が何だか分からない状態に。主人公はたった一人にだけ愛をささやくけれど、そんなものはお構いなしに事態は進行していく。
 そもそも、始まりはどこにあったのか。その疑問にリンネが思い至ったとき、事態を解決する糸口が見えてくる。今回はちだね先輩があまりにもかわいそうだよ。

も女会の不適切な日常 (2)

幻想の中にある日常
評価:☆☆☆☆★
 エスニカ学園「もっと学園生活を豊かにする善男善女の会(=も女会)」部は、理事長の孫である千種エスニカが部長を務める、青春を謳歌するための部活だ。しかし部員たちは、青春を謳歌できるほど友達がいない。実験厨の大洞繭、引きこもりストーカーの丸瀬市雛子、金的女王の須唐座有理、見た目が女子の花輪廻、そして口の悪い美人の十和田愛、いずれをとっても一筋縄ではいかない人々であり、その迷惑ぶりに、生徒たちはも女会を敬遠している。
 今回、ちだね先輩がぶちあげるのは卒業イベント。とはいえ、卒業する三年生に協力してくれる知り合いはいないので、ちだねを仮想卒業生として、他のメンバーが送りだすという趣向だ。

 そのイベントはそれなりに楽しく幕が下りることになるのだが、夕方から荒れ狂う吹雪が学校を孤立させ、何故か人生の幕が下りる恐怖イベントが発生することになる。

 アッパーグラスの存在により引き起こされる、またしても不適切な日常。なぜ死んだはずの愛が部員として存在しているのか、誰が過去を改変し様としているのか、その謎は女子部員たちを恐怖のどん底に落とし込んでいき、リンネに選択と贖罪を迫ることになる。

 思ったよりもラブコメよりファンタジーの割合が多めで構成されて来た。しかしそのファンタジーの根底にあるのは、妄執とも呼ぶべき人の想念であり、そこまで含めれば、ラブサイコとも言うべきジャンルなのかもしれない。
 相手がルールを抑えているという意味で、圧倒的に不利な状況で勝負に勝ち目を見出さなければならないリンネの、弱さを知る者の特権を利用した最後の反撃に期待しつつ、素直に生きられない不器用さ示す少女の姿を愛でてほしい。

も女会の不適切な日常 (1)

予想を裏切る展開
評価:☆☆☆☆★
 エスニカ学園には生徒から敬遠される部活がある。それは「もっと学園生活を豊かにする善男善女の会(=も女会)」部だ。理事長の孫であり、青春☆ヴァカの異名を持つ千種エスニカが部長を務めるこの部は、青春を謳歌することが目的だ。実験厨の大洞繭、シスターの卵にして引きこもりストーカーの丸瀬市雛子、金的女王と呼ばれる須唐座有理と、彼女を従姉にして義妹とする唯一の男子である花輪廻がそのメンバーだ。

 このように書くと、またもや日常ハーレム系学園ラブコメという、今や定番で大外れしない、ありふれた展開の作品だと思うことだろうが、この作品は第三話からいきなり趣を変えてくる。アイ・ド・ラ、あるいは十和田愛という少女が登場することで、SF風味のファンタジー要素を全面に押し出して来るのだ。
 物語のスタート地点が、実はバッドエンドに近い部分に設定されていたということが明らかになるこの物語は、現在のハッピーを維持しつつ、本来あるべきよりハッピーな世界を取り戻すために、真のハーレム展開、あるいは真実の愛を求めて、少年が奮闘する物語でもあるのだ。

 次巻以降、そのあたりのバランスをどう定めて攻めてくるのか気になるところではある。

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