聴猫芝居作品の書評/レビュー

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.5

ハウジングシステム
評価:☆☆☆★★
 ゲーム内にギルドハウスが新実装されることになった。しかしそのためにはゲーム内マネーがいる。速攻で逃げ出した秋山奈々子/セッテは放っておいて、リアルの昼食まで削り、深夜から早朝までお金稼ぎに精を出す部員たちだったが、ギルドハウスにかける表札の名前で意見対立が起こり、一番稼いだ人が命名権を得るということで決着する。
 御聖院杏/アプリコットは相場操作をし、瀬川茜/シュヴァインはボス狩りに精を出し、玉置亜子/アコと西村英騎/ルシアンはコツコツ敵を倒すのだが、各所で問題が発生。さらには瀬川のPCがお釈迦になり、ゲームにログインできなくなってしまう。果たして彼らは自分たちの家を持てるのか。

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.4

対人攻城戦
評価:☆☆☆★★
 夏休みが終わり二学期の初日。なかなか登校しない玉置亜子/アコを心配した西村英騎/ルシアンが電話をかけると、彼女はゲームにログインしてみんなを待っていた。瀬川茜/シュヴァインもクラスメイトとの会話をスキップしたいとか言い出すし、生徒会長の御聖院杏/アプリコットもあいさつに戸惑うし、未だリアルに戻ってこれていない。
 そんな時、顧問の猫姫から文化祭に出し物を出すように指示が下る。検討の末、ゲーム内で新実装の対人攻城戦で砦を落とし、そこに校章を掲げようということになるのだが、対人戦未経験のメンバーはその困難さに呆然とする。果たして彼らは無事に文化祭を過ごせるのか。

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.3

悪意の混入
評価:☆☆☆☆★
 現代通信電子遊戯部は、ネットに繋いではいけない合宿と称し、リゾートホテルに宿泊することになった。このホテルはネットゲームとのコラボレーションを売りにしており、24時間が過ぎた後は、ゲーム漬けになる予定だ。
 いやいやながら始めたサマースポーツに意外にのめりこみ、楽しいリアル合宿を過ごした後は、ゲーム三昧だ。しかし、巷を騒がせるアカウント乗っ取り犯がホテルに現れたことで、またも信頼関係に亀裂が入りそうになる。

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.2

仲間に紛れ込む異分子
評価:☆☆☆☆★
 引きこもり気味の同級生の玉置亜子/アコを現実に復帰させるという名目で生徒会長の御聖院杏/アプリコットが立ち上げた現代通信電子遊戯部だったが、西村英騎/ルシアンやオタク嫌いのクラスメイト瀬川茜/シュヴァインも含めて、ゲーム脳は順調に進行していた。
 そんな時、瀬川茜の友人でリア充の秋山奈々子が彼らにちょっかいをかけてくる。一方、ゲーム内でもセッテというキャラがルシアンの前に現れ、親しくなっていく。それを見たアコは絶望し、転生すると言い出すのだった。

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?

ネトゲで惚れられリアル嫁
評価:☆☆☆☆★
 前ヶ崎高校に通う西村英騎は、周囲からオタクキャラとして認知されている。そんなカヴァーが高校生活を送る上で便利だからだ。MMORPG「レジェンダリー・エイジ」ではルシアンとしてプレイしているが、一年前に猫姫というプレイヤーに告白し、それがネカマだったことで、リアルとネットを切り離して考えるようになった。
 そんなルシアンに、同じギルドのアコというプレイヤーが告白してくる。ネットだけの事だと思い結婚したものの、マスターのアプリコットの発案でオフ会をしたところ、課金中毒のアプリコットは生徒会長の御聖院杏、オレ様のシュヴァインはオタク嫌いのクラスメイト瀬川茜、そしてアコは引きこもり気味の同級生の玉置亜子だと言うことが発覚する。

 特にアコは、ゲームと現実の区別をつけず西村英騎の嫁として現実でも慕ってきて、学校ではオタクキャラを隠したい瀬川茜のこともシュヴァインと呼び出す始末。そんな彼女に現実とゲームの区別をつけさせるため、御聖院杏は無理を通して現代通信電子遊戯部を立ち上げた。その結末は?

あなたの街の都市伝鬼! (3)

伝鬼たちと一緒の旅行
評価:☆☆☆☆★
 民俗学研究者志望の高校生である八坂出雲は、都市伝説の伝鬼ムラサキカガミのサキと出会い、大学教授で狼神の犬飼教授の勧めで編纂者となった。編纂者とは、伝鬼や妖怪の姿を記録に残し、伝承することで彼らの力を維持する役割を果たす者のことだ。
 今回は、研究室の資金集めの一環で、赤城山に徳川埋蔵金を探しに出かけることになった。教授の娘で雪女の犬飼美雪や、サキ、ジェット婆と人間のハーフである飛田舞佳も一緒だ。都市伝鬼たちに脅かされる道中を経てようやくたどり着いたのは高級旅館。そんな彼らを迎えてくれたのは、幼女な女将の清水聡璃だった。

 一緒に温泉に入ったり、枕投げをしたり、修学旅行みたいに楽しみつつ、一応はフィールドワークということで山に入り、地場の妖怪たちに脅かされる出雲だったが、彼に求められている役割は別にあったのだ。
 もしかしたらそうなるかもしれないという、出雲の未来像のひとつの結末がここに示される。

あなたの街の都市伝鬼! (2)

ヒロインがデレなくて困る
評価:☆☆☆☆★
 民俗学研究者志望の高校生である八坂出雲は、都市伝説の伝鬼ムラサキカガミのサキと出会ったことで、出入りする研究室の犬飼教授に、研究室入りするまでの四年をかけて伝鬼の編纂をすることを薦められる。
 教授の娘にして委員長の犬飼美雪からは妖怪の編纂をするように勧められるのだが、コトリバコのコトリやベッドの下の斧女のベド子、そしてジェット婆と人間のハーフであるバイト仲間の飛田舞佳と出会い、伝鬼の追い詰められた状況を知り、編纂者として頑張ろうと決意した。しかし、実は雪女だった犬飼美雪からは、妖怪に乗り換えた方が良いと今も薦められている。

 とにかく、サキやコトリ、ベド子らと夕食をともにする日々を送ることになった八坂出雲だったが、急な食費の増加は家計を圧迫し、かと言ってバイトも増やせない現状が続いていた。その窮状を見かねた飛田舞佳は、お昼にお弁当を作っていくことを提案する。
 一方、編纂者としての調査も怠りない。プールに階段を調査に行って先輩のマリーネ・フロスラインと知り合ったり、学校でも容赦なく登場するようになった伝鬼の怪人赤マントのマコに脅かされたり、猫又のココに道端でアイスをおごったり、少しずつ、伝鬼と妖怪の距離を縮めているように思っていた。

 だがそれは、八坂出雲の希望的観測でしか無かったことを、様々な面から実感させられることになる。

 伝鬼や妖怪を中心に据えているようで、それと関わる人間が物語を動かしているということが、人間の認識なくして生きられない両者の性質を表現しているともいえる。まあまあ、子どもを作れるうちは、伝鬼も妖怪も人間と同種ですよ。

あなたの街の都市伝鬼!

可愛く怖い都市伝説
評価:☆☆☆☆★
 第18回電撃小説大賞金賞受賞作、聴猫芝居「あなたの街の都市伝鬼!」。

 民俗学の研究者志望の高校生・八坂出雲は、16歳の誕生日の夜にムラサキカガミのサキと出会った。本来は20歳の誕生日に登場する都市伝説の伝鬼なのだが、勘違いしてしまったサキは、現代風の衣装をまとい古風な語り口の、可愛い少女だった。
 出雲が出入りしている犬飼教授から、伝鬼の編纂者になることを薦められた出雲は、大学の研究室に所属するまでの四年間をかけて、都市伝鬼の伝説を編纂することになるのだが、そのことを聞きつけた都市伝説たちが出雲の許にやって来て、より怖く、可愛らしく描いてもらおうと、脅かしながら注文を出しに来る。都市伝説たちはみんな女の子だったのだ。

 犬飼教授の娘である犬飼美雪からは、都市伝説ではなく妖怪の編纂をする様に薦められるのだが、マイナーな領域でこそ第一人者を目指せると思う出雲は、あえて都市伝説を選択する。それに、サキはもちろん、コトリバコのコトリ、ベッドの下の斧女のベド子、メリーさんの電話のメリーさん、死ねばよかったのにのヨカちゃんらと出会い、彼女たちが人間に忘れられれば消えてしまう儚い存在だと知り、彼女たちを世間に知らしめる手伝いが出来ればと思ったのだ。
 しかし、ひとたび気を許したら大変。彼女たちは自分の怖さを正しく伝えて欲しくて、いつでもどこでも彼を脅かそうとする。コンビニで飛田舞佳と共にバイトをしているときにも、学校に行っているときにも気を抜けない。それでも、彼女たちとの生活は、どこか楽しかったのだ。

 丸山英人「隙間女<幅広>」と同様に、オカルトでありながらコメディ、しかもちょいラブコメの物語になっている。本来なら人間に恐怖を与える存在である都市伝説が、自分たちを格好良く描いて欲しくて、それを成しえる人材である出雲に媚を売るのだ。しかもその媚の売り方が、怖がりの出雲には辛いのだが、でも見た目が可愛い女の子なのでちょっと嬉しいという…。でもやっぱり怖い存在なので、呪いで立たなくさせられたりもするから要注意!
 今後も色んな都市伝説や妖怪に振り回されるのでしょう。

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